INTERVIEW:

MEGA-G

■HIP HOPは国内外問わず、時代によって変化はあるし更新されていき、世代交代も起きるものですが、2000年代前半あたりの変化のスピードと比べると、ここ数年の変化のスピードが物凄く速くなっているように感じるんです。
 
「ヤバイっすよね(笑)。ホント、速いですよ」
 
 
■例えばFla$hBackSの人たちがもう中堅〜ヴェテランなわけだし。
 
「ホントそうですよね。『Fla$hBackSに憧れてラップ始めました』みたいな人もいますよね」
 
 
■それどころか、「BAD HOP以降」の人もいる筈だし。
 
「そういうことですよねー」
 
 
■そういった、近年の変化の速さについて、MEGA-G君はどう感じていた?「取り残されていく」という焦りや危機感があったのか、「日本のHIP HOPも大きくなったなー」というような感慨があったのか。
 
「全然、後者ですね。単純に、『凄いな〜』っていう。若い人たちはみんな、ラップが上手いと思うし、メロディの付け方やオートチューンの使い方も上手い。自分的にはフレッシュに感じますね。感じるんですけど、『それを自分がやるか?』ってなったらやらないし、わざと若い人たちにすり寄るような音楽をやる必要もないかな?って。そういうことって逆に、若い人がやるから意味があることであって、ヴェテランが同じことをやろうとしたって若い人たちのノリに勝てるワケがない。だったらヴェテランにはヴェテランの良さがあるから、その人にしか出来ないことをやった方がいいと思うんですよ。言ったらTRAPの曲だって全然出来るし、それこそ“808 is coming”って曲は『俺、TRAP出来るけどやらないんだよね』っていうことを一曲で表現したかった」
 
 
■2019年発表のアルバムにD-NICE“TR-808 Is Coming”(91年)のオマージュをやるんかい!って聴きながらツッコんでましたよ、僕(笑)。ドラム・マシーンのTR-808サウンドは今のTRAPサウンドでも生き続けているわけだし、昨今のTRAPに対するアンサーを、原点的なサウンドで表現しようとしたんだと思いますが。
 
「I-DeA君が最初にこのビートを持って来てくれて、D-NICEの話とかをいろいろ聴かせてもらって『うわー、ヤバイっすね』ってなって」
 
 
■I-DeA君もどうかしてるな(笑)。
 
「自分の中で、TRAP的な曲は一曲入れたくて、いろいろビートを作ってもらってたんですけど、どうしてもしっくり来なくて。そのタイミングで“808 is coming”のビートを聴かせてもらって『コレだ!』ってなりました」
 
 
■“808 is coming”の後にD-NICEの兄貴分であるKRS-ONEオマージュのスキット“Outta here”に続くという、BOOGIE DOWN PRODUCTIONSオマージュな流れは、正に先程MEGA-G君が語ってくれた“ティーチャー”的な感じでもあり。
 
「ここはやはり、“完璧ティーチャー”のYOU THE ROCK★さんに登場してもらって」
 
 
■“Outta here”ではYOU THE ROCK★が登場していて、このスキットと何故ここでユウさんが登場するのかは、僕ら世代なら説明しないでも分かる胸アツ展開ですよね(笑)。
 
「ユウさんのアルバム『THE GRAFFITI ROCK ’98』(98年)の中に、ユウさんがKRS-ONE“OUTTA HERE”(の和訳)を読むスキットがあって、アレが日本のHIP HOPの中で一番好きなスキットなんですよ」
 
 
■僕も、日本語ラップ史上最高のスキットだと思います。
 
「『一番好きなスキットを、自分のラスト・アルバムに入れたい!』って思ったんです。最初はダブ・ヴァージョンをもらおうと思ったんですけどね。それでユウさんにコンタクト取って、“Outta here”に続く“Rap is outta control”を聴いてもらった上で『この曲の前に“Outta here”の詩が欲しいんです』って言ったら、『俺、ちょっと書くわ』っていきなりノート広げて書き出して、『今風に変えたから』ってその場で朗読を始めて。エンジニアがいなかったら泣いてましたね(笑)。背筋がビシーッてなりました」
 
 
■“Rap is outta control”では、昨今の日本語ラップの世間での広まり振りに関してラップしていて、警鐘を鳴らしているとは思いますけど、現状を否定的に捉えてるわけではないし、悲観も批判もしてなくて、この塩梅がこのアルバムのトーンを象徴していると思います。
 
「むしろ、1stヴァースに関しては結構ポジティヴな感じですしね。1stヴァースが『こんなにヤバいヤツらがコントロールできないぐらい出て来ちゃったぜ!』って感じだし、2ndヴァースはHIP HOPをディスってるヤツらを『俺が片っ端からディスってやるよ』って気持ちで、3rdヴァースは今の現状について語りたくて、最後の方に『今の現状から“outta here”(いなくなる)させられることを考えたことあるか?キッズ!』って、親父の小言みたいな構成でいきたかったんです。俺は基本、今あるモノを受け入れたいんですよね。抵抗したくなる気持ちも分かるんですけど、抵抗したところでこの波が止まらないというのも分かってるし、だったら乗ろう、みたいな。『一回体験した上で乗ってみて、それで飲まれてもいいや』っていう」
 
 
■MEGA-G君は、90年代から日本のHIP HOPを聴き続けてきてるわけですが、昔と比べて共感できるモノや理解できるモノが少なくなってきてますか?
 
「単純に、今の人って韻をあまり重要視してなかったりとか、フロウも流行りのモノに乗っかりがちだったりとか、“前ならえ”してる人が多いな、とは思いますね。流行ったモノの方向にみんな向いちゃう、という。それは個性がなくなっちゃうかなー、とは思うんですよね。やっぱHIP HOPって個性の固まりだと思うし、90年代〜00年代初頭はそういう人が多かったし、そういうのを見てたし、『自分もそうありたいな』と思ってたんで。多分、失敗するのが怖いんでしょうね。成功例を見て、みんなそこに乗っかるっていうのは、俺はつまらないと思っちゃう」
 
 
■骨折したことにより、はからずもラッパーとしての延命が出来たわけですけど、MEGA-G君はこれからのラッパー/B・ボーイ人生をどう生きたいと思ってますか?
 
「ずっと思ってたのは、早く裏方に回りたい、ってことですね。裏方に回って、自分がカッコ良いと思うラッパー/シンガーを世に出したいです。自分がラップで前線に立つのではなく、自分がディレクションしたりリリック書くのを手伝ってあげるとか、そういう方面に行きたいですね」
 
 
■それは自分のレーベル:BOOTBANG ENTERTAINMENTで?
 
「それで出来たら一番良いですね。今回のアルバムはスタッフを入れないで、全部自分でやったんですけど、それも今後の自分に活かしたかったからなんです。実は来年、BOOTBANGを立ち上げて10周年を迎えるんで、それを記念して自分が気になるビート・メイカーと、組み合わせたら面白そうなラッパーのコラボを自分がプロデュースしたコンピとか作りたいな、と」
 
 
■いちB・ボーイとしてのここからのライフについては?ずっとHIP HOPを好きでい続ける自信はある?
 
「それは間違いないですよねー。だってやっぱり、それしか知らないし、HIP HOPを軸にいろんな音楽も知ったし。自分の周りにもB・ボーイは多いし、そこで繋がったヤツらがメインなんで、そこを断ち切るってことは出来ないですね。HIP HOPってライフだから、プレイヤーとしては一線を退いたとしても、B・ボーイとしては一生、って感じでいけたら最高ですね」
 
 

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