INTERVIEW:

MEGA-G

■なるほどー……ここから先のラップ・キャリアについても訊いてたら、それだけでインタビューが終わってしまいそうなのでこれぐらいにしときますが(笑)。こうして振り返ると、ラッパー歴としては20年はとっくに超えてるわけですね。
 
「超えてますねー、22年目とか?……どうしたらいいんでしょう(笑)」
 
 
■MEGA-G君が患った“先天性ライミング症候群”は不治の病だったようで(笑)。
 
「多分、96年の日比谷野音で感染したんでしょうね(笑)。ちなみに『さんピンCamp』は、チケットがソールド・アウトになっちゃったから買えなくて、野音の外で聴いてました。でも、雨が酷すぎたから帰っちゃって、『“人間発電所”聴きたかったー!』ってなりましたね(笑)」
 
 
■「Re:BOOT」は、MEGA-G君のB・ボーイ人生の“年輪”みたいなモノが滲み出てるアルバムですよね。いくら韻が堅かろうがHIP HOPに詳しかろうが、“経験”がないとこういうアルバムは出来ないと思うんですよ。日本のHIP HOPの歴史に詳しくない人が聴いたらギミックに感じるかもしれない部分も、実際はノー・ギミックなわけで、その説得力とコクは相当なモノです(笑)。
 
「あとやっぱ、“年齢”っていうのもあるでしょうね。家族が出来たり、誰かが死んじゃったとか、そういう経験を経て書けるようになる曲もあると思うんで。例えば“Rap is outta control”とかはそうですね。自分がずっと(シーンを)見てきた上で思ってたことを歌にしたし」
 
 
■こういった内容のアルバムが、このタイミングで出たというのには何か理由があるんですか?どういった動機や経緯のもと、「Re:BOOT」は産まれたんでしょう?
 
「STONEDZのアルバムを2016年に出した後、次の動きを考えたとき、漠然と『次はソロで何か出したいな』と思ったんですよね。DJ 49が昔、DA BEATMINERZのトラックを作ってEP(『UNDER THRONE JOINT DA BEATMINERZ』。DOWN NORTH CAMP勢やT.O.P、Fla$hBackSらが参加したコンピレーション)を出したことがあったから、彼に『俺もEVIL DEE(DA BEATMINERZ)と一緒にやりたいんだよね』って相談したら、『ラッキーでたまたまビートもらっちゃって』って話だったから、『いやいやそれじゃダメだ。どうしたらいいんだー!』ってなって(笑)。そしたらたまたま、日本にワークショップやりに来るっていうから会いに行ったんですよ。自分のCDを渡した上で情熱を伝えて(笑)。そしたらやってくれることになって、そこから『ブーム・バップ全開な感じがいいかな?』と考え始めて。あと、こういうHIP HOPが最近、まったくチャートに上がらなさすぎて、自分が好きなHIP HOPがチャートにないのがストレスすぎたから『聴きたい……自分で作ろう』って(笑)。そこの椅子が空いてるんなら、俺が獲ろう、と」
 
 
■STONEDZはDOGMAとのユニットだったし、グループ名通り、コンセプトが明確だったので、そのコンセプトに沿った曲を作るというプロセスだったと思いますけど。
 
「STONEDZとは真逆のアルバムを作りたかったんですよ。STONEDZではTRAPを取り入れたりしたし、DOGMAから教えてもらった最新のHIP HOPから良い影響を受けて、自分の中で消化してやったんです。で、消化した後に『自分の中での王道なHIP HOPをやりたいな』ってなんとなく思ったんですよね。DOGMAのソロ曲はやっぱり最先端を走ってる感じだから、俺は逆を行った方が面白いんじゃないかな?って。同じことをソロでやっちゃうと、『それならSTONEDZやればいいじゃん』ってなっちゃうんで」
 
 
■これは褒め言葉なんですけど、「Re:BOOT」はだいぶ「うるさい」アルバムじゃないですか(笑)。“塩梅”とかじゃなく、「全出し」な内容なわけで、「これこそが俺のHIP HOPだ!」みたいな強い主張が全編に出てると思うんです。こういった内容になったのは、単純に自分の欲求がそうさせたのか、それともこういったアルバムが最近ないから、義務感のようなモノがあった?
 
「義務感はだいぶ、感じてやりましたねー。今回、各曲のタイトルは全部、過去のHIP HOPの名曲から取ってるんですよ。それは、『自分の作品を通してUSのHIP HOPをもっと知ってほしい』と思ったからだし、リリックにもそういう内容をいっぱい入れました。変な話、『リスナーを置いていく』ぐらいの気持ちだったし、『(ラップしてる内容を)知らねぇヤツがダセェ』ぐらいの気持ちで作ったんですよ。今までは結構遠慮してたんですよね。『これだとリスナーは分からないよな』って思って書かなかったことがいっぱいある。まあ、メッチャ遠慮しといてああいうラップだったんですけど(笑)。でも、今回はブレーキを踏まないで突っ走ろう、と。あと、もうひとつの理由は、実は平成の内にラップを辞めようと思ってたんですよ、俺」
 
 
■引退する、ってことですか!?
 
「『このアルバムを出して、平成と共に俺のキャリアも終えよう』って、制作途中からそういう気持ちになっちゃって。だから、JAY-Zで言うと『BLACK ALBUM』のつもりで作ってたんですよ」
 
 
■まあ、JAY-Zは引退撤回しましたけどね(笑)。
 
「ダースレイダーにも同じツッコミを受けたんですけど(笑)。でも、あのアルバムってハンパない集中力で作ったと思うんですよ。自分も、もし引退するんだとしたら、“置き土産”じゃないですけど、『コレが俺の最後のトドメなんだよ』みたいな感じで全部出してやろう、と」
 
 
■今も引退する、っていう気持ちなんですか?
 
「平成の内にリリースしようと思ってて、4月にはMVを撮る打ち合わせをしてたんですけど、打ち合わせの3日後に足を骨折し、2ヶ月半の入院が決まって、令和の始まりを病院のベッドで涙と共に迎えて(笑)。『どうしよう……でも、せっかくここまで作ったアルバムだから、出したい』という想いはあって、お見舞いに来てくれた人たちといろいろ話してる内に、『このアルバムを出して、(今後のことは)改めて考えようかな』という考えになりました」
 
 
■何故、ラップを辞めようと思ったんですか?
 
「単純に、もうラップ一筋だと食えないじゃないですか。『コレをずっと続けてしまったら、金銭面で損してるかもしれない』って」
 
 
■最近になってそれを気付いたんだ(笑)。
 
「そうです(笑)。20年やってて『あ、お金貯まってないわ、俺』って思って(笑)。あと、曲にもしましたけど、5年前に子供が出来たときに今後について考えたし。そのときはまだ、気持ち的にはラップにしがみついてて『まだイケる』って思ってたんですけど、子供が大きくなるにつれてかかるお金も増えてくるし、仕事とラップを両立したところで、どっちも中途半端になって生活がガタガタになっちゃうんじゃないか?って。そう思ったら『子供を優先したいな』と思って『ラップを辞めよう』って思っちゃったんですよね。制作中は誰にもそのことは言えなかったんですけど。心の中でフィーチャリングに誘ったヤツらに『ごめんな、俺、辞めるんだよね……』って思いながら(笑)」
 

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