INTERVIEW:

PEAVIS

■そういう経緯があったんですね。そして、前名義でもリリースを重ねながらYelladigosを結成して、PEAVISとして動き始めるわけですが、ソロ計画をスタートさせたキッカケは?
 
「自分は平成の最初らへんに生まれたんですけど、平成から令和になった区切りで、自分ひとりで作品出したいなと思って。なんというか……平成を生きてきた人なら共感できる作品を作りたいなと思って」
 
 
■とはいえ、平成にあった事象を織り込んだといったタイプの、いわゆる「平成あるある」のような作品ではないですね。
 
「だから、『自分の感じる平成』って感じですね。平成の始まりはまだ良かった気がするんですけど、終わりの方から急激に社会が状況もヘルになっていったと思うんですよね。身の回りでもヘイトが増えてたり、時代的にとにかく悪くなっていってる感触がある。Yelladigosを結成した2015年の段階で『絶対に世の中は悪くなる』っていうイメージがあったし、それを見据えて、食い止めるためにもピースな音楽をやろうと思ってたんですけど、予想通り、世の中はどんどん悪くなってるし、未来は完全に暗い。でも『暗いけどそこから光を見出そう』的なことを伝えたいな、って」
 
 
■すごく達観したアルバムだな、って。まだ30歳にはなってないですよね?
 
「28です」
 
 
■28歳のアルバムとは思えないっていうか。ラップ自体も落ち着いてるし、内容としてもずっと平熱を求める感触があって。
 
「そういう感情に、順を追って気付いていく、みたいなアルバムにしたかったんですよね。1曲目の“Ten”で『人生は生きる理由を探す旅』みたいなイメージから始まって、Olive Oilさんと作った最後の“Taiyo”で『天に太陽が昇って終わる』みたいなイメージがあって。12曲っていう曲数も、時計の周期を表わしてたり」
 
 
■12天球というか。そういったスピリチュアルな部分もありつつ、内容は非常に分かりやすいですね。
 
「伝わりやすさとかとか聴きやすさは意識しましたね。昔はスキルを見せるために、ラップ自体も詰め込んで、韻とかも細かく刻んで詰め込んでたんですけど、今は分かりやすく、ちゃんと一単語一単語が聴き取りやすいようにって、自然とそうなっていきましたね。それに、この内容を抽象的に書くと複雑過ぎて伝わらないと思ったんで、難しいテーマを簡単に説明したいな、って」
 
 
■ピースというテーマは一貫していると思いますが、曲によってはハードな部分も垣間見えますね。このアルバムではありませんが、Yelladigosでの“Fuck You!! feat. Jin Dogg”にもそういう感触があって。
 
「でも、ただ無闇にディスるだけじゃなくて、ヘイターにも気付くチャンスを与えるような、建設的な内容にしようと思って。やっぱりMCバトルに興味がなくなったのも、『お前の格好がどうだ』みたいな、揚げ足を取るだけの中身のないディスはもう必要ないなと思ったことも大きくて。それよりも、もっと中身に拘りたい、ちゃんとしたことが言いたいと思ったからなんですよね」
 
 
■今作では“Drop Out”にもハードな部分を感じました。
 
「入れるかは結構悩んだんですよね。ハスリン時代の歌やし、そういうイメージをあんまり今はつけたくないこともあって。だけど、これも自分のリアルだったんで、歌っておこう、と。でも、『ドラッグやってる俺、超ヤベー!』じゃなくて、結局シャブ中になったり、入退院繰り返したり、何度も捕まったり、辛いこともとにかく多いっていうのは書いておきたくて。自分がそこから手を引いたのは、仲間が捕まったのとFEBBの死が同じ日に起きたっていうのが本当に大きかったですね。そこで『もう少しクリーンに生きたい、ハスリンは潮時』と思って。結局、欲深く金や地位を追い求めるのは良くないってことを書きたかった。欲望にはキリがないから、求めれば果てしないと思うし、結局死んじゃうか、捕まっちゃうか、破滅するか。だからそれよりも、自分がやりたいこととか、本当にしたいことをやろうって気付かせたいんですよね」
 
 
■充足は心の平穏にある、というか。
 
「それこそ『女抱いて金儲けして』って曲は多いし、自分もそういうノリでいたことは間違いないけど、結局それはそんな楽しくなくて、虚しかった。もちろんお金は必要だし、やりたいことをするために必要なお金っていうのはあると思うんですけど、『金を儲ける』ってことがメインになってくると、いろいろおかしくなってくる、というか」
 
 
■“Mirai”では世代論の部分をDaichi Yamamoto/田我流と一緒に書かれてますね。その中の「夢を持つのはバカと笑われたり」「生まれた瞬間から不況」みたいなリリックは、リアルな皮膚感覚なんだろうな、って。
 
「親の世代とかはバブルの時代があって、お金で良い夢も見てるから、逆に今でもお金に執着してると思うんですよね。でも、俺らはお金で良い夢も良い目も見たことないし、金で連想するのが『金があれば贅沢できて最高じゃん』っていうよりかは、『バイトだりー』なんですよね」
 
 
■金による成功体験のイメージが付かない、というか。
 
「だから、基本金のことは考えたくないっていうか。『めっちゃ働いて稼ごうぜ!』ってヤツよりかは、『仕事行きたくないよね』ってヤツのほうが圧倒的に多い気がして。周りを見ても、親が金持ち以外で金持ってるヤツとか、まぁ見たことないっすよ。クラブで財布に3万入ってるヤツなんていないんじゃないですかね?」
 
KEN-BEAT「福岡はおらん!(笑)」
 
「だから、みんな貧困っていうか。実際ゲットーだと思うんですよ。インドとかアジアに旅すると、ああいうところのゲットーってもうモロにゲットーじゃないですか、見た目から。でも、日本は見栄えだけは良いゲットーというか。一見綺麗だけど、実際はマジでゲットー。前に『今はスーパーで好きな野菜とかフルーツを買うのに、給料の計算した上で買ってて、貧しくなってる』って記事があったんですけど、それって良くあるよな、って。好きなモノを財布の中身を気にしないで買うなんて、普通に働いてる人でも厳しいっすよね。特に若い子はそんな感じだと思います。みんなオシャレとかどうやってるんだろう?って思うくらい金ないっすね。ハタチになった瞬間に、サラ金で限度額いっぱいまで借りて、飛ばしてる子とかもめっちゃ多いと思うし」
 
 
■実際、そういったことをラップしてるTajyusaim Boyzはコミカルなフリをした社会批評にもなってると思うし、面白いんだけど、「面白がってる」場合ではないんだろうな、と。
 
「ハスリンに手を出すのも、もうアメリカのゲットーのヤツとかと同じ状況だと思うんですよね。動機が『悪ぶりたい』とかよりかは、『それしか手段がない』というか。本当に金ないし、でもバイト行きたくないし、って。でも、ずっとそこにいたらいつか終わりが来るから。『ハスリンやめて更生しろ』とかは俺は言えないんだけど、それがメインになっちゃうのはどうなの?ってことは言いたいな、って」
 
KEN-BEAT「ハッスルがあっても、そこから音楽で成功するのがHIP HOPだし」
 
「ストリートにい続けるのがHIP HOPじゃないと思うし、そこからどう脱出していくか?若い子に希望を与えるか?みたいなことを考えましたね」