INTERVIEW:

THA BLUE HERB

「20代や30代の作品だけが常にリリースされて、自分らの世代のラッパーの作品があまりリリースされないっていうのは、ちょっとバランスが良くないと思うんだ。やっぱりいろんな世代で見える景色って違うし、俺ら世代の人間でも、それぞれの生き様を作品で発表しないと面白くないよ。いろんな世代の視点があればあるほど、世代間の違いも露わになるし、変わらない部分も発見できるだろうし、そうやってどんどん相乗効果で上がっていくべきモノだと思う。ヴェテランの役割って、そういうところにもあるよね」 -- ILL-BOSSTINO

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 1999年リリースの「STILLING, STILL DREAMING」から20年を経た今年、5枚目のアルバムをリリースしたTHA BLUE HERB(以下TBH)。前作となる「TOTAL」(12年)から7年の間には、トラック・メイカーのO.N.Oは「Ougenblick」を2014年に、MCのILL-BOSSTINOもtha BOSS名義で「IN THE NAME OF HIPHOP」を2015年にリリースし、それぞれがソロとしての提示を行なった。
 
 そういった動きと連動するように、2017年には『THA BLUE HERB 結成20周年ライブ』を土砂降りの日比谷野音で行ない、今年に入っては過去作のサブスクリプション配信を解禁するなど、TBHとしてのこれまでの歩みを総括するような動きも見られた。
 
 その意味でも、セルフ・タイトルとなる「THA BLUE HERB」と名付けられた本作は、そういった流れを総括し、収斂させ、「TBHとは何者か」を作品として提示している。
 
 そして、そのアルバムで提示されたものは、ラッパーとしての矜持、リリシストとしての存在感とオリジナリティ、ポリティカルな視点、シーンや流行への認識、地元、TBHの楽曲の特異性と構築度、TBHの足跡とその未来……そういった「普遍のTBH」とも感じられるような内容であり、2枚組30曲という大ヴォリュームで収録された。
 
 しかし、その内容は決して“再生産”ではなく、改めて「TBHとは何者か」を提示することで、シーンへTBHの新たな足場と礎を築くような、強烈な意思を感じさせられる、非常に強い言葉と音、ラップとビートである。この貪欲な欲望とタフネス、そして希望こそ、やはりTBHなのだ。
 
 
■今回のアルバムは2枚組、全30曲、総再生時間は2時間半と、かなりのヴォリュームで構成されています(初回限定盤はインスト盤を封入した4枚組)。制作初期段階からそのイメージがあったのか、結果的に2枚組になったのか、どちらの方向性が強いですか?
 
ILL-BOSSTINO「アルバムを作ろうという最初のミーティングって言うか、2017年の忘年会のときに、みんなで飲みながら『次回作は2枚組で』っていう話にはなってたね」
 
 
■ブログの中でも「90年代は2枚組も多く、そこへの憧れもあった」というニュアンスのお話を書かれていましたね。
 
ILL-BOSSTINO「そうだね。やっぱりWU-TANG CLANの2nd(『WU-TANG FOREVER』/97年)やTHE NOTORIOUS B.I.G.の2nd(『LIFE AFTER DEATH』/97年)みたいな作品への憧れを、ずっと持っていたし、あの時代の幻影をいまだに追い続けてたらこの歳になってた、くらいのモンだからさ。だからこそ、そのレヴェルに挑戦したいっていう気持ちもあったよね。やっぱり、越えられるかどうか分からないぐらいのモノに挑戦しないと、燃えないよね。もう『有名になりたい』みたいなことがモチヴェーションではないから。それよりも、『自分たちはどこまで出来るのか?』っていう、チャレンジする精神のほうが大きいね」
 
 
■自分たちを駆り立てるために、2枚組というハードルが必要だった。
 
ILL-BOSSTINO「まさにそうだね」
 
O.N.O「2枚組っていうのは相当大変だろうなとは思ったけど、同時に『いけるな』とも思った。だから、作るモチヴェーションとして、2枚組って仕様は気合いを入れてくれた。制作中も20曲くらい揃ったあたりから、更にスピードが上がっていったし、作り終わっても『全然まだまだいけたよ』って感じでもあって」
 
ILL-BOSSTINO「実際、3枚目に足突っ込んでたからね。『これ以上作るとCDの規格的に入らない』って(笑)」
 
 
■それほどにモチヴェーションは高まってた、と。
 
ILL-BOSSTINO「そこにいけて良かったよ。『いいじゃん!まだ書けるじゃん!まだ作れるじゃん!』って知れたことは自信になったよ」
 
O.N.O「モチヴェーションはこのアルバムの制作が終わっても、まだ上がり続けてるしね」
 
ILL-BOSSTINO「やっぱり『カッコ良い曲を作りたい』っていうのが、単純だけど変わらないモチヴェーションだよね。それから、朝起きてYouTubeでいろんなラッパーのMVを観て、『カッコ良いな』って思うこともモチヴェーションになる。今は良いラッパーも沢山いるしね」
 
 
■そこに負けたくない、という気持ちですか?
 
ILL-BOSSTINO「『負けたくない』って気持ちもあるけど、それよりも『俺らが認めたアーティストには、俺らのことも認めてもらいたい』って感じかな。例えば、俺はR-指定のことめっちゃ認めてるから、彼には(自分たちのことを)認めてほしい(笑)。でも、それは作品を通して、なんだよね。だからこそ、作品を作ることが最低限のエントリー」
 
 
■TBHの初期はそうではなかったですね。
 
ILL-BOSSTINO「そうだね。当時の最前線にいたアーティストを『俺らは認めない』っていう立場だった。でも、今は違うよ、当然。R-指定もKOJOEも、韻シストも勝も、Refugeecampも小林勝行も最高だね。CHOUJIは好きすぎて毎日MV観てたもん。もう、ファンだよ。でも、彼らに『認めてほしい』ってわざわざこっちから伝えるのなんてあり得ないでしょ。だから、曲を出すしかないんだ。今までもそうしてやってきた。それから、単純な事実としてカッコ良いラッパーが昔より圧倒的に増えた」
 
 
■丸くなったとかではなく、単純にカッコ良いモノが増えたから、それは純粋に認める、という。
 
ILL-BOSSTINO「HIP HOPのファンである以上、そうとしか言いようがないよね」
 
O.N.O「質がグッと上がったよね。地方にDJで呼ばれても、とにかくラップが上手いヤツがいたりする。HIP HOPマナーをちゃんと踏んで、HIP HOP IQも高くて……っていう人はそんなにいないけど、ラップ自体はみんなスゲェ上手いと思う」
 
ILL-BOSSTINO「もちろん、全員が全員を良いとは思ってないよ。俺だって俺なりの好みもあるし、俺の“良い”のハードルは高いからね。でも、それを超えてくる人たちはたくさんいるからね、もちろん年齢とか関係なしに。そこは認めざるを得ないよ。そして、俺が興味を持つようなアーティストは、アルバム(をリリースしている)アーティストが多い。俺らも2枚組のアルバムを作ったから、そこで競い合いたい」
 
 

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