INTERVIEW:

JAZEE MINOR

■今回のJAZEE君のラップは、よりクリアに日本語を聴かせる方向になっていますね。いわゆる『英語のフロウの延長にある日本語』ではあるけど、あまり言葉自体をぐにゃぐにゃに変化させてはいないし、言葉が非常にシンプルに聴き取りやすくなってる。
「そもそも、リリックを書くのがすごく早くなったんですよね。制作環境の変化も理由ではあるんですけど、本当にスラスラっと出てくる言葉、普段使ってる言葉を意識して、それをリリックに落とし込もうと思って。普段喋ってる分かりやすい言葉に、メロディをつけたリリックの方が、本当に伝わるとも思ったんですよね。それがリスナーにとって、聴きやすい方向に繋がってるんだとしたら嬉しい。自分としても、それによってリリックがテンポ良く書けるようになった部分もあると思う。フックも、例えば子供でも全然歌えるようなフックが最強だと思ったんで、シンプルに分かりやすくっていうのは心がけましたね」
 
■ヴォーカルにかけるオートチューンも、あまり音を拗じらないで調音するぐらいの、かかってるか、かかってないかギリギリぐらいの、シンプルなかけ方になってますね。
「そこも意識しましたね。今はオートチューンをグイグイにかけて歌ってるラッパーがかなり多いですけど、ストリートのシーンの中で、僕はかなり早い段階でそれをやってたラッパーだと思うんですね。だから、オートチューンの使い方に対しても、ちゃんと説得力を持って提示したいと思って。確かに、オートチューンをギュインギュインにかけた方が今っぽい感じになるのかもしれない。だけど今回は、そうじゃない方向性を試したかったんですよね。オートチューンなしでもちゃんとバチバチに音をハメられるから、なくてもちゃんと良く聴こえるけど、一応、今のマナーとしてオートチューンもかけといて、ぐらいな。昔からオートチューンを使ってた人間として、丁寧なオートチューン使いというか、『オートチューン、これかかってんの?』ぐらいのアプローチで聴かせたかった。それに、ヴォーカルの処理自体もすごくシンプルにしてるんですよ。今回はあまりハモリも入れずに、ほとんどヴォーカル一本、みたいな曲が多くて。1stのときは、ある意味では“化粧”をしっかりしたというか、重ねやハモリもいっぱい入れてたんですね。でも、本当に自信があるメロディだったら、それは一本で聴かせた方がやっぱり一番カッコ良いと思って、今回はその方向性でまとめましたね」
 

 
■そういった、ある種のお手本的な意思は、一曲目の“New Basic feat, SALU”からも現われてますね。
「オートチューンを最初から使ってた人間として、俺とSALUが曲を作ったら良い教科書になるんじゃないかな?って。それでタイトルを考えてたら『New Basic』っていう参考書があって、『これじゃん!』って(笑)。だから、これから音楽を始めるヤツに向けて、『俺らのマネをしておけばベーシックなマナーはクリア出来るぞ』みたいな。時代の流れもそうですし、元号が変わるっていうタイミングで、平成を生きてきた人間として(笑)その部分は出しておきたいな、って」
 
■この曲もそうですが、特に“Singing to You”など、同じフロウのモチーフが連続する、ミニマルなフロウ構成が今回は印象的で。
「それもモロ意識しましたね。日本や韓国は、Aメロ/Bメロみたいなノリがまだありますけど、USのR&Bシーンとかだと良いメロディがあったらそれを繰り返す部分が強いですよね。そうやってカッコ良いメロディ一発で引っ張ることが潮流でもあるから、自分もあまり考え込まずにその流れに乗った感じですね。ただ、『ここで盛り上がってほしい』って部分では変化を付けたりメロディを変えたりもしていて。それは、ライヴだともっと顕著に現われると思いますね」
 
■その意味でも、音源と共にライヴも自分の作品が決着する場所だと。
「もちろん。アルバムを聴いてなくて、ライヴで単純に盛り上がってくれて、改めてアルバムを聴いたら『こんなにしっとりしてるんだ!』って驚いてくれても嬉しいし、逆に音源を聴いてライヴに来て『音源よりカッコ良い!』と思ってくれたらそれも最高ですよね。そういう部分は最近、すごく意識してますね」
 
■“Fuck Boy”にはKOWICHIを客演で呼ばれてますね。
「このテーマを思いついたときに、俺はまだ『ファック・ボーイ界』ではまだまだ中堅なんで、やっぱり師匠と言ったらKOWICHI君でしょ、って(笑)」
 
■ファック・ボーイ師匠(笑)。
「他にも、ファック・ボーイ教授とかがいて」
 
■プロフェッサー・ファック・ボーイが(笑)。
「その上がファック・ボーイ・ジェダイとか(笑)」
 
■大変だな、ファック・ボーイ界も(笑)。
「俺はファック・ボーイって言われちゃってちょっと戸惑う感じにしたんですけど、KOWICHI君は『バレないようにするよ』みたいな、ちょっと刺激的というか、毒がある感じにしてくれて。その落とし方も最高ですよね。ライヴでも結構盛り上がる曲になってますね」
 

 
■“Chopper Fire”にはHIYADAMが参加しています。
「普段、一緒に遊んでる仲間じゃなくて、曲をキッカケに若手と近づきたいな、と思ったんですよね。そのときに、俺の曲をInstagramのストーリーで上げたりしてくれてたHIYADAMがパッと浮かんで、それで現場で一緒になったときに声をかけたんですよね。単純にカッコ良いラッパーだし、いつもはモードな感じだったり4つ打ちのイメージがあるけど、今回は敢えてパキパキのTRAPの曲で一緒にやってみたかった。それでスタジオに入って、トラックをその場で選んで、リリックも『よーい、ドン』で書いてみて。そこで先輩のスピード感を後輩に見せつけよう……と思ったらHIYADAMの方が書き上がるのが早くて、『……じゃあ、先に録って下さい』みたいな(笑)。今のスピード感とかテンポ感を見せつけられましたね」
 
■最後は“湾岸キッド”で終わりますが、これは今までJAZEE君が書いてこなかったタイプの内容ですね。
「1stでは自分自身をレペゼンする曲、っていうのが書けなかったんですよね。でも、HIP HOP/ラップ・シーンにカムバックするなら、ちゃんと『自分がどこから来たのか』みたいな、もっとローカルな部分を見せないと、と思ったんですよね。自分は江東区:東京湾沿いの出身なんですけど、そこで湾岸で生まれた人間のサクセス・ストーリーみたいなところを書いてみたくて。あそこら辺って車で走ったりとかすると、いろいろ煽られたりするんですよ」
 
■湾岸道路のトラックとかエグいですよね。殺気立ってる。
「そうそう(笑)。そういう風景も込みで、人生に喩えて歌ってみたんですよね」
 
■サウンド面では、前作の“ゆらゆら”であったようなキャッチーさよりも、全体的にテンション的にはそこまで上げないで、しっかりとヴォーカルやラップを聴かせる内容になってますね。
「今回は、サウンドに統一感を持たせてひとつの世界観を作りたいっていう気持ちでしたね。聴き心地としては普通に聴きやすい、メロディアスでチルな感じになってると思いますね。作品で言うと、“Singing to You”をプロデュースしてもらったSUNNY BOYは、今や億万長者ぐらいの勢いがあるプロデューサーだけど、10年以上前からAudioleafで繋がってるんですよね。そこからの流れがあって、今回は一緒にスタジオに入って作らせてもらって。あとは、USのプロデューサーだったり正体不明のプロデューサーもいたり。そういう全体のサウンド像は、“DANCE FOR ME”とかを手がけてもらってるA-KAYさんに、トラックはもちろん、全体的なサウンド感も自分と一緒にディレクションしてもらって」
 
■これからの動きはどうなりますか?
「とりあえずMVを何本かリリースするのと、その先にはワンマンを考えてて。夏くらいには1stとこのアルバムを織り交ぜて、客演を超呼んだ、お祭りみたいなワンマンを計画してます。それを今回のアルバムのひとつの区切りにして、そこからまた次の動きを見せられたらテンポが良いかな、と。その意味でも、今回はキッカケというか、長い目で見て仕掛けていく契機にしたいんですよね。やっぱり、あまり動けなかった4年半の区切りにこのアルバムはしたいし、この先の動きに繋がる作品にしたいと思ってますね」
 
 

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