INTERVIEW:

JAZEE MINOR

「今回はキッカケというか、長い目で見て仕掛けていく契機にしたいんですよね。やっぱり、あまり動けなかった4年半の区切りにこのアルバムはしたいし、この先の動きに繋がる作品にしたいと思ってますね」

jazeeminor_main
 “100 feat. AKLO”のフックで連呼される「ワンハネ」がホット・ワードとなり、収録された1stアルバム「Black Cranberry」を含めて、シーンの中心に躍り出たJAZEE MINOR。それ以降もミックスCD「Call log」のリリースや、SIMON“Whisky And Soda feat. JAZEE MINOR”への客演などはあったものの、インタビューでも本人が語るとおり、ここ暫くはシーンから遠ざかっていた印象のある彼が、4年半振りのアルバム「WOKE UP」をリリース。
 
 ラッパーとシンガーというふたつの武器を今回も巧みに使い分け、そしてシームレスに織り交ぜるそのスキルはやはり折り紙付きだが、今回は前作よりもテンションとしてはやや絞った構成によって、前作がアッパーな“動”の印象だったとすれば、今回は“静”の様相が基調になった、息の長い作品になったと感じさせられる(もちろん、それが「踊れない」を意味しないことは付記しておきたい。今作はしっかりとダンス・ミュージックである)。
 
 また、ラップのスタイルをとっても、バイリンガル・スタイルを押し出すよりも、より日本語としてスムーズな聴感でありながら、USからの流れもしっかり感じさせられる方向性に舵を切っており、その印象の違いも興味深い。
 
 JAZEE MINORが新たな目覚めで得た本作から、彼のニュー・チャプターが始まる。
 
 
■前回のアルバムから今作までは4年半と、やや時間がかかったな、という印象がありますが、それは意図的にでしょうか?
「一応、EPを2枚とミックスCDを1枚出してはいるんですが、オリジナル・アルバムを出すには、ちょっとタイミングを掴み損ねていたっていう感じはありますね」
 
■それは個人的な部分なのか、流行の掴み方といった音楽的な部分なのか、どちらの要素が大きいですか?
「メンタル的な部分もあったし、1stの取っ掛かりだった“100”のような曲を作るのがなかなか難しかった、という部分もありますね」
 
■JAZEE君にとって“100”、「ワンハネ」は自分をスターダムに押し上げたと同時に、プレッシャーにもなる存在?
「それはありますね。でも今回、自分の中で覚悟が決まったのも“100”で。だから、“100”にちょっと殺されて、且つ助けられた、みたいな(笑)」
 
■それは、具体的には?
「去年のAKLOとZORNのツーマン(『A to Z TOUR 2018』)のときに“100”をやったんですけど、それがその日、一番の盛り上がりになったんですね。そのときに『やっぱり“100”が求められてるんだな』と思ったし、『コイツを超えなきゃ俺はもう存在出来ないな』って覚悟が決まったんですよね。そして、“100”が自分にとってそうだったように、HIP HOP/ラップ・シーンにもう一回エントリーというか、『これがキッカケでまた動ける』っていう作品をまた新たに作りたいって気持ちでアルバムの制作に入って」
 
■その意味では、「今のシーンに自分はいない」と感じていた?
「それは感じてましたね、正直。それで結構メンタルもヤラれてた時期があったりして。でも、アルバムの制作に入るぐらいで昼間の仕事も辞めて『音楽一本でいこう』って覚悟を決めたんですよね。アルバム・タイトルの『WOKE UP』も含めて、自分の意志というか、この4年半のざっくりとした流れをアルバムで表現したくて」
 
■アルバムの前半と後半、“WOKE UP”を境にしてカラーはガラッと変わりますね。
「前半は歌モノに寄ってるけど、後半の3曲はラップ。歌とラップを織り交ぜるとかじゃなくて、バシッとラップだけっていう風にハッキリ分けようと思って。内容的にも、アルバムの前半は夢見心地というか、夢の中でフワフワしたような感じなんですけど、“WOKE UP”で目覚めて“マジ死にそう feat. AKLO”で覚悟を決めて、この曲で“100”と戦う、みたいな」
 
■だから、前半はドリーミーなんだけど、後半に入ると自分のケツを蹴り上げるようなタフな内容になっていって。且つ、自分に言い聞かせながらも、同時にリスナーに伝えるキャッチ・ボール性であったり、リスナーに言葉を伝えたいという欲望をしっかり感じる内容だと思いました。
「1stは正直言って、『俺はこんなことも出来るよ、器用でしょ?』みたいな感じを詰め込んだ作品だったと思います。それは、自分の未熟さも含めて。でも、今回はこの4年半で感じたシーンとの距離感だったり、自分の在り方みたいな部分をちゃんと形にしたいな、って」
 
■この4年間半の間では、やはり「ワンハネの人」と思われてしまう部分もあった?
「本当に、良くも悪くも“100”の一点突破だったし、そう思われても仕方なかったのかな?って。それもあって、今回はAKLO君と『“100”を越えなきゃいけない』という話になったんですけど、ツーマンでやっぱり“100”が盛り上がるのを見て、ああいうキャッチーな言葉を鍵にして、一発でサビが覚えられるフロア対応型の曲で“100”を乗り越えようと」
 
■「ワンハネ」の流れの上にありつつ、それを乗り越える楽曲というか。
「そうですね。ある意味では『ワンハネのヴァージョン2』的なモノという意識もありましたね。ビート的には、MCバトルでも“100”のビートがよく使われるっていう話も訊いてたので、それに対応できるビート、ということも考えましたね」
 
■その部分も意識してるんですね。
「『バトルで是非!』っていうことではなくて、いろんなところで曲がひとり歩きするのを後押しする仕組みは作りたいな、と思って。やっぱり“100”をいろんな人がリミックスしてくれたり、『ワンハネ』っていう言葉が一人歩きしたりで、勝手に広がっていった部分があると思うんですよね。だから、この曲も『マジで死にそう』っていうキャッチーなテーマとワードを提示することでひとり歩きしてくれればな、って」
 
■ある意味では大喜利的な広がりも求めているというか。
「ビート選びにしても、ラップの乗せ方にしても、『もしかしたら、俺がやったらもっとカッコ良くなるんじゃないか?』みたいに思わせるような、余白があるようなモノにしたんですよね。そこで聴いてくれた人の欲求を掻き立てられるようなモノに出来たら面白いと思って」
 
■完結しきってるとそこに手を加えづらいけど、敢えて一歩下がって余白を残すことで、みんなが乗れるポイントを作っている、と。「マジ死にそう」という、ネガティヴに見せかけてボースティングという、その着地点とワードはどのように決まったんですか?
「AKLOとふたりでフリースタイルみたいな感じで、言葉とフロウを出し合ってる中で、ポッと出てきたのが『マジ死にそう』っていうワードだったんですよね。それで、その着地点としては『死にそう』っていうネガティヴさをポジティヴに変換したり、『俺ら超楽しくて、本当死にそうなくらい生き生きしてるんだよ』っていうことを落としどころにしよう、と。これなら、例えば『死ぬほどメイクしてるぜ』みたいな感じで、このトピックで書ける人もいっぱいいるだろうし」
 
■一方で、リアルに「マジで死にそう」という内容でも行けそうですよね。
「あんまり暗いのはイヤですけど(笑)」
 
■「サウナ前の水風呂」とか、突如出てくる謎リリックみたいなのも好きでしたね。
「そういうのは意識してますね。やっぱり“芸人気質”みたいなところはあるんで。気取っててもしょうがないし、下町出身だから銭湯も行くし、サウナ前後は水風呂入るし、みたいな(笑)。そういうところもちゃんと出していかないとな、っていうか。やっぱり、面白いことを言いたくなっちゃうんですよ」
 
■“100”の「ワンハネ」も含めて、パンチのあるワードと楽曲の作品を一緒に作るとしたら、やはりAKLOだった?
「“100”のコンビであり、且つ『このメンツでその曲を超えたいんだな』っていうのを分かりやすくしたいな、って。俺が『シーンにちゃんと戻ってきたな』っていうところを見せたいという意味でも、もう一回AKLO君とタッグを組みたかったんですよね。AKLO君的にも『“100”を超える曲を作りたい』って思ってくれてたのもあって」
 
■その意味では、JAZEE君にとってAKLOはどういった存在になりますか?
「ラップや曲を一緒に作ると、ラップのディレクションやトピックスの選定も含めて、すごく『引き出してくれる』存在ですね。『ワンハネ』も、実は3個めに提案したワードだったんですよ。それまでに出したふたつの提案は却下で、『ワンハネ』が出た瞬間に『それ良いじゃん!』みたいな。だから、自分でまずは提案しなきゃいけないんですけど、それを引き出してくれたり、見極めてくれるんですよね。実際に『ワンハネ』はホット・ワードになったし、AKLO君自身の実績も含めて、すごく説得力がある。だからこそ、自分もAKLO君を食らわすぐらいの曲やワード/フロウを出さないといけないと思うし、刺激を与えてくれる存在ですね」
 

To Page topTo Page top