INTERVIEW:

YUKSTA-ILL

 

 
■前作にも“HOOD BOND”という曲がありましたけど、今作も中盤の“ASTHMA 059”“COMPLEX”“IT’S ON ME”で地元を題材にしてます。特に“COMPLEX”では地元への愛憎入り交じった感情が吐露されてますね。
「そうですね。コレは昔から地元の一部の人たちに対して感じ続けていたことではあって、その都度『曲にしちゃおうかな?』って迷いながらも今に至ってて。自分の中での整理が最近やっと付いてきて、『今なら出来る』という確信もあったし、プラス、曲にしようと思った決定的な出来事もあって、『俺はラッパーとして対応させてもらいますね』って感じになりました。でも、この曲は“ディス”じゃないんですよね。どちらかというとクレーム=苦情です。そこは誤解してほしくないところなんですけど」
 
■この曲を聴くと、地元と決別しようとしているわけではないと思いますけど、その寸前の感じというか。地元を見捨てているわけではないけど、結構キツイことをハッキリ言ってますね。
「はい。ちょっと“線”は引かなきゃ、と思って。コレはどの地方シーンでもある話なんじゃないかな?と思うんですけど、『それじゃダメでしょ』ってなる、どうしても埋められない価値観の差みたいなのがあって。でも、悪い人たちじゃないから複雑です。自分なりの“愛”なんですけどね」
 
■でも、YUK君は今も地元:鈴鹿が拠点ですよね?そういったフラストレーションが理由で地元を飛び出そう、とまでは思わないんですよね?
「まったく思わないです。そこはずっと一貫してます。それこそRC SLUMのボス:ATOSONEからは『早く名古屋に引っ越してこいよ』って10年以上言われてきたんですけど、自分的には名古屋、近いんで(笑)。地元:鈴鹿はローカルながら環境的にもいろいろ揃ってるんで、服屋さんだったりクラブだったりスタジオだったり。もちろん、都会と比べたら小さいですけど、そういった場所があるから、っていうのも大きいですね。だから、他の場所に住もうと思ったことはないです。それ故に感じてるコンプレックスではありますけど」
 
■YUK君が抱えてる「地方コンプレックス」って、具体的にはどういうモノなんですか?YUK君は、地方コンプレックスをバネにして「アンチ大都市」みたいなスタンスを押し出してきたタイプじゃないですよね。どちらかというと“外交的”な人だったと思うし。
「うーん、そうだな……東京とかの方が絶対的に露出という面では多いし、東京だけでなく関東圏内ってだけで得してる……得してるって言い方は悪いけど(笑)。自分は三重の鈴鹿や四日市が地元で、近所の名古屋も(都会とは言え)地方都市だし、やっぱりちょっと『遅れる』わけですよ。そういう意味でのコンプレックスはあります。ごく一部の人たちに絞られるとは思うんですけど、こっち(東京)でしっかり名を上げていったら、大バコに定期的なペースで立てたりする。ひとつのライヴだけで巻き込める人数が多いし、それだけでも見栄えが違いますよね。そういう機会が地方に住んでると、どうしても少ない。もちろん、中~小バコでも全然ライヴしたいし、それにはそれの良さがあると思うんですけど、大バコで頻繁にイヴェントが行なわれたりとかは、名古屋でもあまり多くないと思うので、そういうことを考えると(東京は)魅力的に映りますね。だけど、(大小関わらず)その土地々々でカッコ良い人はいるわけだし、それがすべてとは思わないです」
 
■地元 — 東海地方という括りで、ですが — というところで言うと、名古屋を代表するレジェンドのひとりである刃頭が“LONELY CLOWN”でトラックを提供していますね。
「一対一でやらせてもらうのは初めてだったんですけど、SOCKS君の1stアルバムに入っていた“Ownerz of Honor feat. YUKSTA-ILL”って曲で初めて刃頭さんとやらせてもらいました。アレもメチャクチャ光栄だったから『名誉所有者』という意味の曲名だったんです。もちろん、それ以前から付き合いはあって。一度、一緒に鹿児島に営業で行ったこともあって、おこがましくもライヴDJをお願いしたことがあります。あと、自分がまだバトルとかに出ていた頃 — 2008~09年ぐらいにやっていた大きなイヴェント内であったMCバトルの審査員に刃頭さんがいたんですよね。で、そのバトルでは自分が優勝して、刃頭さんに表彰されたんですけど、『最狂音術師:刃頭に表彰された!』って、メチャクチャ嬉しかったですね。その頃から刃頭さんとは、いつか一緒にやりたいとずっと思ってたんですよ。やっぱり東海のMCとしてもそうだし、全国的に考えても刃頭さんと演れるっていうのはデカイことだと思う。でも、自分からはなかなか『やりましょう!』とは言えない人というか」
 
■本人は、面白くてノリも良い人ですけどね(笑)。
「むしろ『やろうよ』って快く引き受けてくれそうな人なんですけど(笑)。自分がやり続けてればどこかでそんな機会がやってくると思ってたし、『その前に名を上げよう』とか、そういう気持ちがあったんですよね。さっきの“歳相応”の話じゃないですけど、今の自分だからお願いすることが出来た、というのもあるっすね。だから、このアルバムはいろんな意味で“積年”なんですよね」
 
■刃頭が日本のHIP HOP史にとって重要人物のひとりなのは間違いないですが、やはり90年代後半~00年代前半に大きく名を上げた人なので、今の若いリスナーはその重要性/偉大さをあまり知らないと思うんです。東海視点として見た彼の偉大さを、YUK君から改めて語って頂けますか?
「俺的には、日本のDJ PREMIERだと思ってます。そういう風に呼ばれる人は他にもいるかもしれないですけど、俺にとってのそれは刃頭さんしかいないですね。聴いただけで刃頭さんのトラックだって分かるし。カッコ良い人なんですよね。一度、ブースから下りてきたらすごい面白い人なんですけど、そういう意味でもすごく尊敬できる。『こういうオトナになりたい』と思える人柄。刃頭さんがやっていたカフェ:JIRRI.が閉店して、フード・トラックとして再出発するためのクラウド・ファンディング企画のリターン用でILLMARIACHIのリメイク曲を7インチで作るというのがあって。そこに俺もSOCKS君/TOSHI蝮と一緒に“For Da Bad Boys & Ladies (NGY 2018 Remix)”で参加したんですよ。その話をもらったのも嬉しかったですね」
 
■“DEFY OUTRO”では、「こんなSELFISHでCOMPLEX持ちの別人つれぇ」ってラップしてますよね。ここで言っている“別人”というのは、ラッパーとしての自分、ということですか?
「まあ、そういう捉え方で問題ないんですけど、『他人でそんなヤツがいたら辛いわ、めんどくさいわ』ってことですね(笑)。『こんなヤツだけど、いいのかなぁ……』みたいな。クセのあるヤツはいっぱいいますけど、『自分ってヒネくれてるなぁ……』とか自分で思ったりすることもあるんで」
 
■同じ曲では「歳重ねてキープしていく意地/いつまでもつのかREMAIN TO BE SEEN」ともラップしていますが、今後数年のラッパーとしての自分は、どうありたいと現時点では思っていますか?
「もっと削ぎ落としてというか、磨きをかけたいというか。1stを出した頃と比べたら、なりたい自分に近づいてるけど、まだまだですね。毎回、アルバムが出来る度に『やり切った』と感じるし、『もう歌うこと、ないのかな?』って思うんですけど、いざ(新作を)作り始めると全然あるんですよね。その感覚は尽きない。さっきの東京の話に若干戻っちゃいますけど、東京ってギラついている人の絶対数が多いんですよ」
 
■まあ、ギラついた人がいろんなところから集ってもきますからね(笑)。
「例えば、KOJOE君は話をする度に何か新しいことを考えてるし、ISSUGI君とかWDsoundsのマーシー君もそうだし。そういう人たちがいるから、毎回メチャクチャ刺激をもらうんですよね。ローカル/三重の人だと落ち着いちゃうのも早いし、ギラついた人を見つける方のが難しい。その中で自分をキープして上を見続けるのって大変で。引っ張られるというか。自分の中では絶対にブレたらいけない軸というのがあって、その部分をキープして、アーティストとしての自分と向き合っていきたいです。植物に水をやり続けて、どんな風に育つのかな?って感じですかね」
 
■具体的に次の動きとして考えていることは?
「まあ、みんなの“歩幅”もあるし、みんな忙しいからいつどうなるのかは分からないですけど、1982Sは是非やりたいと思ってますね。その布石としてMASS-HOLE君と自分のアルバム・ツアーを一緒に回ろうと計画してます。それが布石になるのかどうかは分からないですけど(笑)」
 
 
LIVE INFO
4月19日(金)@小岩BUSHBASH
4月20日(土)@豊橋QUARK
4月27日(土)@京都OCTAVE
4月28日(日)@四日市ADVANTAGE-BAR
4月29日(月)@岐阜BLOCK
5月3日(金)@旭川BROOKLYN
5月4日(土)@札幌GHETTO
5月5日(日)@小樽BRIDGE
5月11日(土)@高山NEIRO
5月18日(土)@名古屋MAGO
5月25日(土)@浜松OVERDUB
6月1日(土)@福岡KIETH FLACK
6月15日(土)@静岡EIGHT&TEN

To Page topTo Page top