INTERVIEW:

YUKSTA-ILL

 

 
■「DEFY」を聴いてまず思ったのは、それこそ社会情勢に言及していたり、言ったら“地球単位”での視点のリリックも結構あるじゃないですか。だから、視点がスケール・アップしてると思うんです。前作は「NEO TOKAI ON THE LINE」というタイトルだったし、原点回帰の意味合いもあっただろうから、そことの比較として考えても大きな変化だな、と。
「そういうトピックって、言い方はアレですけど、ナイーヴなトピックじゃないですか。日本語ラップでは扱いにくいというか」
 
■賛否を呼ぶ/物議を醸す、という意味で?
「自分の視点でモノを言うわけだし。だけど、今作はタイトルが『DEFY』というのもそうなんですけど、『そういうことは気にせずに書こう』と思いました。向こう(US)って、そういうポリティカル/社会的な内容をエッセンスとして入れてるラップって多いと思うんですけど、日本ってそんなに多くないような気がしていて。まあ、あるにはあると思うんですけど。露骨にそういうことを表現するんじゃなくて、ラップのアートフォームとして、自分の意見をキレイに表現できたらな、という想いがあった。だから、全体的にそういうことを匂わせて、アルバムの世界観のひとつとして入れましたね。『何言っても俺だし』って。そういう部分が表に出たのが今作かな、って」
 
■前作のインタビュー時に「昔から“歳相応”を考えてラップをしていた」みたいなことを語っていて、こういう視点に行き着くというのはそういった部分も影響してるのかな?と思ったんですが。
「それもありますね。さっきも言ったように『昔じゃ出来なかった』という話と繋がるんですけど、昔にそういうこと表現してたらイヤらしく聴こえてただろうな、と思います。それは、自分の考え方だったり、そのときのスキルだったりも踏まえて。昔だったらそうなっていた内容を、今作ではしっかり形にすることが出来たんじゃないかなと。だから、それこそ“歳相応”だと思いますね」
 
■YUK君も30代中盤から後半に入った時期だと思います。良い意味/悪い意味どちらでもいいんですけど、ラッパーとして年齢を重ねて思うことはありますか?20年前には今の自分の姿は想像してなかったと思いますけど。最後の曲“DEFY OUTRO”でもそういうようなことはラップしていますよね。
「10代でラップを始めた頃は、『今はこうなってる』ってことはまったく考えもしなかったですね(笑)。さっき話した“視点”という部分で言うと、昔、作ろうと思っていたけど途中で断念した曲のアイディアって結構あったんですよね。例えば4小節ぐらいまで書いて『いや、違うわコレ』ってなったりしてたんですけど、そういうときは『いずれ作れる時が来る』って思って諦めるんですよ。広い幅で言ったら、この20年間の中で思いついた曲のアイディアが、少しずつですが形になってきているとは思いますね。それは、ラップを続けてきたからこそ出来たことだと思います」
 
■「DEFY」というタイトルについて詳しく教えてもらいたく。曲中では「DEFなY」という風にラップしていて、そういう意味もあるんでしょうけど。
「『DEFY』は、『モノともしない』とか『逆らう』とか、そういう強い意味の言葉なんですけど」
 
■「異を唱える」というような意味もありますね。
「そうですね。なんなら自分自身、『DEFY』ってタイトルに背中を押してもらって『言いたいことを言おう』って気持ちになりました。自分の中で勝手に規制のラインを引いちゃって限界点を決めた上で言うことを探るのではなく、自分が言いたいことを自由に表現しよう、って。あと、前作を出してからいろんなところにライヴしに行ったり生活したりしてると、『俺のラップはまだまだだな』とか『何でだ』とか、そう思うことがいろいろあって、ちょっぴり悩んでいた時期があったんです。そこから『もう(ラップは)ムリです』というところには直結しないとは思っていたんですけど、そういった悩みがあった上で『そんなのモノともしねぇよ』みたいな気持ちで作っていった、というのもあります」
 
■サッカーMCモノはラップ・アルバムにとっては基本的要素ですし、“DEFY INTRO”で言ってる“ニセモンラッパー”のような表現も自然と出てくるとは思いますが — 前作だと“GIFT & CURSE”のようなフリースタイル/バトル・シーンに言及した曲がありましたけど — 前作以降、自分周り以外のラップ・シーンを見ていて何か感じたことは?
「一応、自分なりにチェックはしていて、その中で知ってる人も知らない人もいろいろいますけど、そこ(シーン)において自分はどこにいるんだろう?って。そういったことを考えた上で、今回、自分の信じてるHIP HOPの在り方だったり、表現方法を通そうと思って作った部分もあります。例えばTRAPとかのシーンが結構盛り上がってて、それはそれで凄いな、と思うんですけど、『自分の作品ではそういうタイプのビートでやらないだろうな』とも思います。『やらない』って言い方は違うかな?『選ばない』かな。やってみたら俺っぽく出来る自信もあります。ただ、ステレオタイプ的なイメージ/スタイルのTRAPをやるかと言ったら、しないと思う。でも、そういうシーンが育っていくのはひとつの正義だと思うし、それが悪いとはまったく思わないです。フリースタイル/バトル・シーンに関しては、自分もその場所にいたことがあるから、『なんか、そういうのじゃないんだよな』って思って、“GIFT & CURSE”を問題提起的な感じで作ったんです。USでもあるじゃないですか、世代間 — TRAP世代とブーム・バップ世代の議論って。俺的には、J.COLEとLIL PUMPが対談していたときのようなテンションで見てて。J.COLEのスタンスって、基本的には若い世代のスタイルには寛容じゃないですか」
 
■寛容だけど、ドラッグを乱用したりとかの側面を心配してる感じですよね。
「そうそう。だから、『表現の仕方としては、こういうのもあるんだ』とか、新鮮な感じでは聴いてますね」
 
■YUK君自身がかなりオリジナリティのあるスタイルでラップしてきていたからこそ、オリジナリティという面で疑問に感じることもあったりはしませんか?
「ないと言ったら嘘になりますが、それに関しては『個人の責任です』みたいなところはありますね(笑)」
 
■そもそも、オリジナリティを高めることがプライオリティじゃないアーティストもいるでしょうしね。
「似ているスタイルの中でも、カッコ良いヤツはカッコ良いじゃないですか。例えばTRAPスタイルの中でもオリジナリティを出して他人と違うことをやってる人もいるし。でも、そうじゃないのが大半を占めてるとは思う。そこに気付くも気付かないも、自己責任なんで。どの土地/所属でも、そこで名を上げたラッパーがいたら、その下に付くフォロワーたちは大体似たスタイルなんですよね。で、『それってなんでそうなったの?』って思うし、オリジネイターがオリジナルなスタイルを築いてきたってことに、フォロワーもどこかで気付かないといけないと思うんですよ。最初はマネしてそれっぽくなっちゃうのも分かるんですけど、やっている内に『俺、コピー・キャットだな』ってならないと、アーティストとして次のステップには行けないのでは」
 

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