INTERVIEW:

YUKSTA-ILL

「自分自身、『DEFY』ってタイトルに背中を押してもらって『言いたいことを言おう』って気持ちになりました。自分の中で勝手に規制のラインを引いちゃって限界点を決めた上で言うことを探るのではなく、自分が言いたいことを自由に表現しよう、って」

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 キャリアとしては10年超のヴェテランであり、東海地方を代表するソロMCとしてキャリアを積み重ねてきたYUKSTA-ILL。
 
 前作「NEO TOKAI ON THE LINE」(2017年)では、彼が長年の活動で積み上げてきた全国のコネクションが反映されたトラック・メイカーたちによるトラックに乗せ、地元:三重県鈴鹿市で熟成させてきた様々な視点/トピックを吐き出した一枚で、話題を呼んだのも記憶に新しい。そして、新作「DEFY」は、確かな成果を収めた「NEO TOKAI ON THE LINE」から更に視野を拡大させつつ、持ち前のスキル巧者振りを感じさせるラップ・テクニックをより整理させたリリックが印象的だ。
 
 キャリアを重ねてもなお、貪欲且つ冷静に自分のスキルを磨き続ける彼に、その背景を訊いた。
 
 
■前作「NEO TOKAI ON THE LINE」から2年振りとなる新作のリリースですね。この2年間のYUK君の活動は、1st~2ndアルバムまでの6年間とはまた意味合いが違う期間だったんじゃないかな?と思ったのですが、如何ですか?
「『NEO TOKAI ON THE LINE』の段階で、ラップのスタイル的にはやりたいことが明確に見えてたんです。1st(『QUESTIONABLE THOUGHT』)と2ndの間は、期間が空いたというのもあって、その中でいろいろ模索して2ndに行き着いたというのもあって。2ndから今作までの2年間は、アルバムを出してから(リリース・ツアーで)いろいろな場所を周ったりして。そうですね、このアルバムはそこ(2ndアルバム)からの2年間が入ってる、って感じですかね」
 
■自分のスタンス/ヴィジョンが見えた上で動いていた2年間だった?
「やりたいことが明確だった上で、どういうことを作品で表現しようか?というのがあって。今作『DEFY』を制作していて思ったのは『昔じゃ出来なかったかな』ってことで」
 
■それは、内容面において?
「内容的にも、表現力的にも、って感じですかね。それは作り上げてから思ったことなんですけど。大体、いつでもそうなんですけど、アルバム・タイトルを決めて、ある程度のフワッとしたコンセプトぐらいを考えた上で作るんですけど、そのやり方に自分的にも慣れてきたというか、3枚目ともなると、その辺りの作業はスムーズでしたね」
 
■そうすると、「産みの苦しみ」みたいな感じでもなかった?
「いや、『産みの苦しみ』はメチャクチャあったっすね(笑)。『また前と同じ感じか』とか思われるのがイヤで。もちろん、様変わりしすぎてブレブレにするつもりもまったくないから、軸はブレさせずに表現の幅や角度を作品毎に変えていきたいと思っていて。一曲一曲を作る上でのプロセスに関しては変わってないですね。だから、『産みの苦しみ』もある。自分は、曲制作のペースは遅い方だと思いますよ。いろんなタイプのアーティストさんがいて、制作におけるバイオリズムも様々で、ガッと作ったと思ったらもぬけの殻、みたいな人もいると思うし。だけど、自分は日をまたいででも断続的に作り続ける、みたいな。すぐには作れないけど、積み重ねで作っていく。だから、行く先々でセッション的に作る曲はともかく、自分の作品となると、一日一曲みたいなことは俺には出来ないし、時間がかかる方だと思います」
 
■「DEFY」に関しては、いつ頃から着手し始めたんですか?
「昨年の初頭くらいですかね。“PIECE OF MIND”を、実は一番始めに作ったんですよ。アルバムを作り出そうと思っていたタイミングで、たまたま長崎のDJ MOTORAさんがトラックを送ってきてくれて、そこで今作の方向性が結構決まりました。本当に、結構凄い量のトラックを送ってきてくれて、曲が出来てそれを送ったら、すぐその曲のリミックスを送り返してきてくれたりして、『ちょっと気が早いな……』って思ったり(笑)。でも、せっかく作ってくれたし、お蔵入りにするのはもったいなかったので、あの曲の後半部分のトラックがリミックス・ヴァージョンなんですよね。結構、バーッとラップしてる曲だから、メリハリ付ける意味でも面白いかな?というやり取りをして」
 
■“PIECE OF MIND”が出発点ということは、リリック面においてもこの曲を出発点として考えていった感じですか?
「リリックもそうだし、ラップのアプローチ面 — 乗せ方とか — はそこを基軸に作ったというのはあります。2ndと今作の間に、OWL BEATSとの物販限定EP『REMIX EP』を出して、そこには一曲だけ新曲(“DRASTIC REMEDY”)を入れてて、それを作ったときに『DEFY』のブルー・プリント(青写真)みたいなモノが見えたんです。1stと2ndを比べると、2ndの方が言葉使いとかも分かりやすかったと思うんですけど、(3rdは)『もうちょっと言葉を詰めてみよう』と思って」
 
■言葉数を?
「そうですね。言葉数(の多さ)っていうのは自分の特性だな、と改めて思って。俺は普通だと思ってたんですけど、周りを見てると意外にコレって自分の特性なのかも、って思ったんです。で、そこから“PIECE OF MIND”を作って『コレでいこう』って。ただ、1stと違うのは、『言葉は詰めるけど言葉はしっかり聴き取れるように作ろう』というのが念頭にありました。1stアルバムの頃は、どっちかというと『フロウに言葉を混ぜた』という感じだったというか。フロウありきだったから、ほとんど日本語のリリックでも一聴したときには何を言ってるか分からなかったと思うんですよ。『言葉を詰めた』って言っても、全曲そうやったわけでもなく、そうじゃない曲もある。ただ、比率として考えたらそういう曲の方が多いかな、って。一字一句、ちゃんと耳に入るように — 『フロウに言葉を混ぜる』というより、『フロウの上に言葉が立ってる』感じで作ってはいましたね」
 
■トリッキーすぎるフロウだと、そっちに耳が引っ張られて、YUK君の別の持ち味であるハード・ライマー的側面やリリシスト的側面が注目されづらくなるかもしれないですが、今作のアプローチの載せ方だと、YUK君のハード・ライマー振りがより伝わりますね。
「そこも意識したっすね。今、“ハード・ライマー”って少ないと思うんですよね。もちろん、いるにはいるんでしょうけど」
 
■YUK君の中では、どれぐらい堅い韻だとハード・ライマーと思うんですか(笑)?
「5文字以上、ですかね(笑)。押韻の話になっちゃいますけど。別に韻をタイトに踏んでないからって理由でそいつの曲が嫌いになるワケではないんですけど、ハード・ライマーはやっぱ、5文字以上を安定して踏んでいる人のことなんじゃないかな?と自分は勝手に思ってます。そういう基準で見渡すと、例えばフリースタイルとかでは世間一般で言われてる“押韻主義”なタイプのラッパーでも、音源を聴くと意外と“踏み”が浅いことが結構多くて、それには結構萎えるんですよ、俺」
 
■普通、逆だろ、と思いますよね(笑)。
「そうなんですよ。呂布カルマとかは逆のパターンなので、ああいうスタンスなら俺は全然いいんですけど。(ハード・ライミングが)フリースタイルにおける飛び道具みたいな感じになってるのが、俺はすげぇイヤなんですよね。そこには異論があるというか、『こういうことだよ』ってことは分からせたいという気持ちはありますね、正直」
 

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