INTERVIEW:

SKY-HI

■楽曲で言えば、シングルとしてリリースされた“Diver’s High (Resound for JAPRISON)”と“Snatchaway”は、ボーナス・トラック的な位置にあります。この2曲は「日本のJ-POPの中でラップがどう求められているか」を非常に示唆する曲だと思うし、その部分に振り切った曲ですね。
「事実、タワー・レコードのラップ部門で、去年一番売れたシングルだったみたいですね。アニメとゲームのタイアップ曲であり、“Diver’s High”には亀田誠治、“Snatchaway”には蔦谷好位置と、日本屈指のプロデューサーを招いて」
 
■その意味では、J-POPの勝利の方程式上にあります。
「でも、逆にこの2曲を作ったおかげで、J-POPのてっぺんがなんとなく見えちゃったんですよね。そして、日本の芸能というシーンが変わらなかった場合、そのてっぺんを目指して登っていくのは自分にとって幸せじゃないのかもしれないし、そのシーンの中でゲームを続けていくことは出来ないかな?って。僕は、自分でポップスを作るようになったのは26歳からなんですよ」
 
■メジャー・デビューした周辺時期ですね。
「それまではただ単に“ラッパー”だったから。だから、ポップスを作るようになって得たポップ・センスだったり音楽理論は財産としてもらっておくけど、いま一度、自分の背骨の位置は見直さないといけないと、あのシングルを作って感じたのかもしれない。その意味でも、シングル制作の脊髄反射的に出来たのが『FREE TOKYO』でもあると思うんですよね。拒否反応ではないんだけど、『このままだと背骨がズレる』っていう危機感を感じたから、ちゃんと現行のビートにアプローチできないとな、って」
 
■一方でロック・フェス、特に邦楽系のフェス・シーンでは、シングルのような曲が求められますよね。僕は最新系だったり海外シーンに評価基準を置くタイプではないけど、それでも、いわゆる現行のダンス・ミュージックではなく、メイン・ステージがバンドだけっていうフェスは、すごく日本的な特殊性の上にあるんだと感じさせられて。
「自分もフェスに出させてもらって感じるのは、そういうシーンやアーティストを否定しないまま、自分はどういう存在で、どういった音楽が作れて、どういう人間なのかってことが正直に表現できれば、10年~20年先も音楽を楽しんで作れるんじゃないかな?ってことですね。確かに、今までは『日本は日本、海外は海外』っていう意識があったんだけど — 最近はすごく単純だけど、すごくカッコ良い作品を作って、それをアジア全域だったり海外に投げれば何か変わるんじゃないかな?って夢を見るようになったんです。それは、さっきも話した『人を人として見る』ってことにも大きく繋がってると思う。マーケットじゃなくて、アメリカでもアジアでも、同じ人間として、その人に刺さる作品を作りたいって」
 
■日本の中でトップを取ることを考えると、例えば“ナナイロホリデー”だったり“Snatchaway”のような、ブラスが響いて、ディスコティックで、クリアなラップで……というのが、マーケティング的な視点では求められると思うんだけど、そういう考え方とは違う方向性に進んでいるというか。
「自分は、『今のSKY-HIのファンに救われた』っていう感覚が強いんですよね。その恩人を裏切れないから、その人の期待からは外れたいと思わない。でも、一方で自分にとってのベストなアンサーも当然考えるし、そこが交差する部分を模索してるんだと思いますね。『ディスコやればいいんでしょ、ラヴ・ソングが聴きたいんでしょ』なんて気持ちはまったくないし、でも、突き放す気もない。その意味では、今回のラップは全部譜面に起こせるんですよ。トラックも音階が見えやすいし、ピッチやタイム感もすごく明快だと思う。必要以上にJ-POPを意識した作品じゃないけど、それでもリスナーが拒否反応を起こしていないのはそういう部分が作用してると思うし、それも手応えのひとつですね」
 
■一方で、観念だったり内省が強い作品の中で、“23:59”と“White Lily”があるのは意外な感じもあって。
「分かる。これはやっぱり僕のサービス精神ですね。一方で“Role Playing Soldier”、“Blue Monday”から“ Marble (Rerec for JAPRISON)”までの流れにあるメッセージを伝えるためには、もっと人間の欲求みたいな部分を書かないと、それこそ嘘くさくなってしまうのかな?って。だから、人間を出すとしたら……セックスだ!って(笑)」
 
■与謝野晶子の「柔肌の熱き血潮に触れもせで寂しからずや道を説く君」じゃないけど、根源的な欲求に向かい合う必要性があった、と。
「それに、若い人間 — 特に10代にとって、性愛が意識の中で占める割合ってすごく大きいじゃないですか」
 
■まあ、それで頭がパンパンでしたよね(笑)。それは性欲っていう部分もあるけど、皮膚感的な承認欲求という部分でも実存が固まりきってない思春期では、究極の他者からの肯定としてのセックスという部分はあると思う。
「だから、性愛は軽視しちゃいけないと思うんですよね。言ったら。『内閣総辞職よりも好きな子がLINEを返信してくれるかどうかの方が重要』みたいな、そういう部分もないがしろにしたくなかったんですよね。サービス精神っていうのは、そういう部分ですね」
 
■三大欲求のいち要素だし、だからこそ「人間のこと」ですよね。
「“Role Playing Soldier”で人間を人間じゃない書き方をしてるから、余計にしっかり人間を書かないといけない、とも思って。もっと言うと、“New Verse”があったから、それを立体化させるためにも、惚れた腫れたで一喜一憂するような部分も必要だったんだと思いますね。SUGAR SOUL“今すぐ欲しい feat. Zeebra”みたいな、具体的すぎる内容も面白いと思ったんですけど、まあ、それはおいおい(笑)」
 

 
■冒頭で話に出たように、今回のアルバムは「JAPanese Rap IS ON」というテーマがありますが、同時に“Name Tag -Remix- feat. Ja Mezz & HUNGER”のJa Mezzや、“Doppelgänger”にはプロデュースにYosi、そして「FREE TOKYO」では“I Think, I Sing, I Say feat. Reddy”のReddy、“Name Tag feat. Salu & Moment Joon”ではMoment Joonと、日本語話者以外のアーティストも参加しているのが非常に興味深くて。
「根本的な理由としては、彼らがミュージシャンとして面白いから。理由はそれだけって言っても過言じゃないんだけど、他の理由を挙げるならば、『JAPanese Rap IS ON』って言葉は、『JAPAN AS NO.1』みたいな『日本は他の国よりも優れています』ってことを言いたいわけじゃないから。それよりも、『日本で生まれたモノは世界のどこに出しても恥ずかしくないです』ってことを言いたいんですよね」
 
■優位性を誇るのではなくて、並列性を提示するというか。
「だからこそ、逆に排他的になりたくなかった。うちの親父は飛行機乗りだったから、海外で生活していた時間も長いんですけど、正月には日本の国旗を家に飾ってたんですよね。それは排他的なナショナリズムじゃなくて、アイデンティティの確認だったと思うし、それは自分にも影響してると思う。サッカーやってたこともあって、三浦知良が『日の丸を背負って』っていう言葉にもシンパシーを覚える部分があるんですよね。そういう意味で自分の中に“愛国心”は確実にあるし、だからこそ、絶対に排他的になってはいけないんだと思う。何故なら、同じような気持ちを持ってる人が他の国にも絶対にいるから」
 
■その気持ちをお互いに尊重すれば、他の国を貶めたり、排他的にはなり得ませんね。
「僕は日本で生まれて日本で育ってるから、どうしても日本が一番好き。でもだからって、他の国を嫌いになる理由はまったくないですよね」
 
■最後に、SKY-HIにとって今後の活動についてどう考えていますか?
「ラップがポップスとして、ポピュラリティを得ることの出来る音楽として浸透してきたことで、以前はよく言われた『ラップなのにあんなエンターテイメントが出来て凄い!』ってことが言われなくなってきてると感じるんですね。10年以上、SKY-HIとしてステージに立って、そういう時代が来たんだと思うし、本当の意味で、ラッパーがそのままの姿でキャッチーな存在になれる時代が近づいてきてるんだと思う。このアルバム自体、『JAPanese Rap IS ON』っていう風に“ラップ”っていう言葉を押し出しているのに、それを冠することにデメリットがないとスタッフや周りの人が思ってくれるようになったのは、大きな変化だと思いますね。そういう動きに乗っかって、更に自分自身大きくなっていきたいと思うし、その流れを更に加速させていけるような存在になりたい。それは国内外問わず、そう出来ればと思いますね。一個でも多くのことをやって、ひとつでも多くの曲を作れるようにしたいですね。それが正解か不正解だったかは死なないと分からないから、生きてる間は三歳児みたいに『あれもこれも!』ってワガママに進む感覚を保っていきたいです」

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