INTERVIEW:

SKY-HI

 

 
■“New Verse”の重要性については、他の数々のインタビューでも語られているので、ここでは深掘りは割愛しますが、やはりこの曲は大きかった?
「自分の曲に好き嫌いはないし、あってもバイアスがかかるから言わないようにしているけど、それでも自分の中で大切な曲っていうのは節目節目で生まれていて。“New Verse”はそういう曲になってますね」
 
■“New Verse”に顕著だけれども、今回のアルバムは自分自身に、自分の感情に向き合う部分がすごく強いですね。
「今作は、感情というものに焦点を当てようと思ったんですよね」
 
■それ故に、すごく人間くさいSKY-HIが立ち現われていると思うし、それは他のインタビューでも語られていた通り、「教壇から降りる」という作業に通じるのかな?って。「OLIVE」はある種、善導する立場のSKY-HIという部分を感じたけども、今回はその立場から降りた作品だと感じました。
「シングルとしてリリースした“Marble”は、ライヴで披露すると『感動の共有』みたいなモノが強く体感できる曲だったんですよね。でも、家で聴くと何か『届かない』感触があって。それを自己分析すると、ライヴのような観客とフラットな状況だと感動を共有できるんだけど、音源になると、ただキレイなことを教壇の上から言ってるような感じになってしまっているのかな?って。だから、『リスナーにちゃんと言葉を届けるには、その教壇から降りる作業が必要なんだな』って思ったんですよね」
 
■その意味でも今回のアルバムは、先導したり善導するようなSKY-HIの機能を抜いて、よりSKY-HIという実存に向かった作品なのかな?って。
「“Persona”なんかは特にそうですよね」
 
■“仮面”という求められる像であったり、機能性をどう捉えるか?という曲だから、正にそうなんだと思います。
「それを唱えたエピクテトスに対してシェイクスピアなんかはそれを肯定的に捉えて、その人の役割も含めて、『ステージに上がる主役として人生を演じましょう』と言ったわけで。でも一方で、『“仮面”(役割)をいくら磨いてもしょうがない。もっと自分自身を磨いて、あなた自身を立派な人間にしましょう』という考え方もありますよね」
 
■後者がこのアルバムに通底する部分だと思います。ただ一方で、仮面というのは社会性でもあるから、仮面があるからこそ社会が成り立つという部分もある。だから、その仮面を脱いで実存を磨くというのは、非常にアナーキーな考え方なのかな?って。それは肯定的な意味で使ってるんですけど。
「僕も、仮面自体を否定していないんですよ。でも、仮面を人に被らせることがみんな好きじゃないですか」
 
■本人が「こうらしくあらねばならぬ」と自律的に考えるんじゃなくて、周りがそう規定する他律的な、その人を縛るような考え方というか。それはよく言われる「◯◯キャラ」っていう概念にも通じますね。
「それはアイドル文化だったり、芸能が浸透させている部分も大きいと思うんですよね。『こういうキャラだから愛でたい。そういう存在であってほしい』って……それってペットかよ!っていう(笑)」
 
■それはSKY-HI君が言うから説得力がありますね。
「それこそ、対象を人間として見てないってことですよね。それはすごく危ないし、そうやって漠然と感じていたことを、今回は言語化したかったんです。よく美談とされる『実はこんな辛いことがあったのに、ステージでは笑顔で』みたいな話ってあるじゃないですか。アレもメチャクチャ危ないと思っていて。それって嘘と表裏一体だと思うし、嘘を美徳としたりさせたりするよりも、僕は人間であることをもっと大事にしたいな、って。自分が大事にされたいんで(笑)。あと、なにか事が起こったときに、それに反応したり意見したりするっていう、人間として普通の行動をOKにしたいんですよね。確かに、意見を言えば、それに対して賛同はもちろん、非難も起きると思う」
 
■それ故に、フェイマスな存在は、特にアーティストやアイドルは「反応が起きるから口をつぐめ」という要求や、事なかれ主義を求められることもあるでしょうね。
「でも、アーティストや俳優が支持政党を明らかにすることはまったく珍しくないし、TAYLOR SWIFTが民主党を支持するって言ったら、有権者登録が一気に増えたっていう事実もある。そういう政治的な発言だけじゃなくても、人間だから当然ある、『眠い』『お腹が空いた』『セックスがしたい』『好き/嫌い』みたいなことを普通に発言できるような状況にしたい。発言しないように、物議を醸さないようにして、『人間じゃなくされる』んじゃなくて、人間だからするような普通の発言が普通に出来るようにするのは、現状でも可能だと思う」
 
■僕自身も「SNSで政治的な発言や意見を言うと仕事なくなりますよ」って、ギョッとするようなありがたいご忠告を仕事上でもらったことがあって。もちろん、そことは即、縁を切りましたが(笑)、でも、そういう「意見を言う=悪」のような空気は確実にありますね。
「日本社会全体にそういう空気があるのかな?って。でも、BTSやピコ太郎が行なった国連でのスピーチを見たりすると、その空気を変えることは可能なんじゃないか?って夢を見てしまうんですよね。それから、アーティストが何かを言うと『宗教っぽい』みたいな揶揄もあるじゃないですか。差別や偏見がひとつもない、戦争どころか争いごとの完全にない社会を作るのは無理だと思うけど、それでもそういう社会を目指すべきだっていう気持ちが僕にはあるし、それは大事にしたいんですよね。何故なら、その方が確実に世の中が幸せになると思うし、みんなで幸せになりたいんですよ。僕も、僕のファンも、スタッフも……って、余計に宗教じみたことを言っちゃったけど(笑)。でも、『宗教っぽい』って揶揄するのって、揶揄する側が単に理解が追いついてないだけだと思うんですよね。だから、そういう思考停止したディスは特に気にする必要はないし、それよりも自分の意見を発信できる状況にしたい」
 
■なるほど。
「ただ一方で、芸能側とファンとの関係性で言えば、芸能側がファンを人間だと感じにくいというか、一個の集合体だと思ってしまっている部分もあると思うんですよね。でも僕の場合は、ライヴ・ハウスやクラブっていう場所で活動したことで、早い段階で『リスナーは“個”なんだ』ってことが認識できたし、『アイドルがラップやってさ』みたいに言われたときに僕を救ってくれたのは、そういう“個”のオーディエンスだった。僕は幸いにそういう認識が出来たけど、それが出来ないと、どんなにお客さんの数が増えたとしてもファンのひとりひとりを同じ人間として認識できずに『自分は誰にも認められてないんじゃないか?』っていう認識に陥りがちになってしまうと思う」
 
■曖昧な対象からの評価は、しっかりとした肯定には繋がらない、と。
「だからこそ、『ちゃんと個と個で向き合いましょう、対話しましょう』っていうことを改めて形にしたかったのかな?って思いますね。そして、そうするためにも、今回は自己肯定がしたかった」
 
■これまでは他者を肯定することがSKY-HI作品のひとつのテーマになっていたから、その変化は大きいですね。
「そう。今までは他者肯定をすることで、リスナーに自己肯定をしてほしかったんだけど」
 
■ある意味では、承認する立場だった。
「でも、今回はよりミクロに自己肯定をすることで、逆にもっとマクロな肯定が出来るんじゃないかな?って思ったんですよね。自分の話を沢山することでそれをマクロに繋げるっていうのはラップから学んだ手法だったし、それをちゃんと形に出来たから、新しく作り直した“Marble (Rerec for JAPRISON)”を、より刺さる曲に出来たと思う」
 
■“New Verse”もその性格が強いですね。
「その中に自虐が入ってきたのには自分でも驚いたんだけど、それによって余計に愛おしい曲になりましたね。傷ついてるとか、悩んでいるっていう自分をちゃんと見てあげる時間を作るのは大事なことなんだな、って。スマホやSNSによって、常に外からの情報に晒されてることが多いと思うけど、本当はもっと内省する時間があった方がいいと思うし、内省できないことで『何が辛いのか』すら分からなくなっていく状況は、精神的な閉塞感に繋がるのかな?って」
 
■モヤモヤとした気持ちがあっても、それを腑分け出来ないと根本的な解決には繋がらないですからね。
 

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