INTERVIEW:

サイプレス上野とロベルト吉野

そして、吉野君のスクラッチ曲“新生契り”にはSTUTSを迎えていますね。
「STUTSを俺らの沼に引きずりこもうかな、と(笑)。これから先にもSTUTSとのコラボは計画してるんで、今回はその前哨戦として。……前哨戦が『吉野がスクラッチで喋る』っていう構成もどうかと思うけど(笑)」
 
■昔、「寺内ヘンドリックス」って番組で『ギターで喋る』というコーナーがあったけど、それを思い出しました。
「ライヴでも俺が喋って吉野がスクラッチで返すっていうネタもやってたから、それを音源にしてみよう、と。あと、吉野がちゃんとコスれるヤツっていうのも、今一度形にしたくて」
 
■久しぶりにこれだけスクラッチの入りまくった新譜を聴いた気がしました。そして、mabanuaを客演に迎えた“ムーンライト feat.mabanua”からはセンチメンタルな方向性も感じられて。
「Mabanua君のソロだったりOvallの作品に感じるような寂しげな感触がすごく好きだったし、そのエッセンスが欲しかったんですよね。そして、その感じを自分たちに当てはめると、やっぱり『パーティの寂しさ』ってとこでもあって。一晩中遊んでも、寝て起きると結局寂しかったり」
 
■祭りの後の寂しさというか。
「今年の1月にやった『建設的』も、俺はパーティ中にインフルエンザを発症してて」
 
■寂しさというか、生物テロだな(笑)。
「昼間に『調子悪いな』と思って病院行ったら陰性の結果が出てたんですよ、コレはホントに」
 
■インフル罹りたてだと出ないって言いますよね。
「それで、サ上とロ吉やZZ PRODUCTION、DREAM RAPS(サ上とロ吉以前に上野が所属していたグループ)としてライヴをやって、酒呑んで、YOUR SONG IS GOODの4つ打ちの曲でひたすら踊ってたら完全にトリップしてて。よく考えたら熱出てんのに歌って踊ってたら、そりゃトリップするよな、と」
 
■脳が溶けた、と(笑)。
「インフルエンザによる異常行動ですよ(笑)。『建設的』は故・油井俊二と一緒に始めたパーティだったから『油井も喜んでるぜ!』なんつって踊りながらふっと周りを見たら、DREAM RAPSのワタがチ●コ出したりしてて」
 
■インフルエンザでもない人が勝手に異常行動を。
「それで帰って『なんだったんだあのイヴェントは……』と思いながら寝たんだけど、起きたら疲れとアルコールとインフルエンザで1ミリも体が動かなくなってた(笑)。で、その日を思い出しながら書いた曲です。楽しいけど、寂しいこともあったり誰かがいなくなったり、バカだったり、また出会いがあったり……そういう曲」
 
■無理やり良い話に着地させようとしたな。
「コレ読まれたらMabanua君に怒られそうだけど(笑)」
 
■”RUN AND GUN pt.2 feat. BASI, HUNGER”は、LEON a.k.a. 獅子(現・LeonFanourakis)とDOLLABILLという若手を呼んだパート1から考えると、40歳付近のヴェテラン組を集めた構成になっていて。
「しかも、登場が『シーンの中心』ではなかったり、非・東京のアーティストという繋がりでこの布陣になって」
 
■このメンバーが登場した2000年代初中期のシーンを考えると、このメンバーは完全にアウトサイダーではなかったけど、かと言ってメインストリームど真ん中では決してなかった。それはMC陣3人の少し先輩にあたる、今回のトラックを作ったLIBROもそうだったと思うし、その人たちがオリジナルな立ち位置を築いて、今でもシーンに現在進行系で欠かせない存在になっているのは、すごく興味深いです。
「今でもよく対バンをさせてもらう良き兄貴たちだし、そのメンツで一曲作れたのは経験としてもすごく大きかったな、って」
 
■しかも、このメンツは、この曲に続く“青春の決着”で言う「諦めの悪い」人たちだったと思うし、アルバムのラストを飾る“NO LIMIT”での「諦めるような余裕もなく」音楽を続けて来たっていう、アルバム後半に続く前哨メッセージにもなっていて。しかも、“青春の決着”は決して後ろ向きではないけど、決別を込めた切ない前向きでもありますね。
「このタイトルは、岡宗秀吾さんの『煩悩ウォーク』からのインスパイアで。俺も地元の友達とはいまだに一緒に遊んでるし、一緒に店(WHAT’S GOOD)まで作って地元に住み続けてて。でも、30代後半にもなると、その中でも動いてるヤツと止まってるヤツとの差がどんどん出て来ちゃってるんですよね。昔の話はみんな好きだし、そこでゲラゲラ笑うのも最高だけど、『そこで止まってちゃダメじゃね?』って」
 
■昔話は楽しいし気持ち良いけど、そこに拘泥してしまうのは、非常に怖いことでもあって。
「俺自身もそういうクセはあるし、自分を見るもうひとりの自分スタイルで『それじゃダメだろ』って自問自答してる部分もある」
 
■“WONDER WHEEL”の中で「still キッズ」って言っていた上野君が、ある意味でも“決着”を考えるのは興味深い。
「もちろん、メンタルとしては『stillキッズ』も大事だけど、それだけじゃダメでしょ、って。そういうことは常々考えてきたんだけど、曲にすることでバシッと伝わればいいかな、って。そして、後輩で俺たちのことを『地元の誇りだ』って思ってくれるヤツがいるんなら、そういうヤツらに昔話をするんじゃなくて今の話をしたい。今、活躍してるヤツらからは活躍してる話を聞きたいし、そういうヤツらと夢を共有したい。そういう感じかな。だって、不良だった後輩の方が税理士とか弁護士、社長になってカネ稼いでいやがる!俺にはHIPHOPしかないから!」
 
■そして、ラスト曲“NO LIMIT”での「諦めるような余裕もなく」から続く最後のヴァースは、かなりズッシリ来る部分もあって。
「諦められる/次を探せるヤツはやっぱり強いと思う。普通の仕事をしながらラップしてるヤツなんて沢山いるし、STERUSSのCrime6なんて今や大手塾の室長だから、受験シーズンはラップしてる場合じゃないぐらいとんでもなく大変な状況なのに、それでもラップしてるのを見るとホントにスゲェな、って。自分がそういう状況に置かれたら果たしてラップ出来るかは、正直分からない。だから、よくバトルとかで『他の仕事しながらラップしてて何が悪い』『ラップで食ってるお前には俺の気持ちは分からない』とか言われたりもするけど、なんにも悪くないし、むしろ尊敬してるわ!って。でも、俺だって惰性でここまで来たわけじゃないし、仕事として成り立たせるのは本当に大変なんだってことも言っておきたい。そして、もっと俺を褒めてほしい(笑)」
 
■また承認欲求が。
「ANARCHYが『ラップだけで食えてるヤツが何人いると思う?』って言ってたけど、アレは自慢じゃなくて魂の叫びだからね。『ホントに大変なんだから!』って(笑)」
 
■アルバムを通して、ラップのアプローチだったり方法論は変化させている部分も大きいけど、メッセージ性としては、より自分の足元だったり根本性を明確にした部分も強いアルバムだと思います。だから、「2回目の1stアルバム」という感触もあったんですけど、それを経てのこれからの動きは?
「制作したけど今回は入れられなかった曲もあるんで、それをアルバムのツアー前にはリリースしたいと思ってて。もっと広い部分では『フリースタイルダンジョン』のモンスター組の中から、T-PABLOWがBAD HOPとして武道館でワンマンをやったのは刺激になったし、そういう新しい波が起きてるんなら、そういうリスナーにも、今一度サ上とロ吉がどういうグループなのかを、このアルバムで分かってもらえなければな、って。吉野はSNSでもバッチリ滾ってるし」
 
■回数は減ったとはいえ、時たま上野君はSNSで赤の他人と揉めるし。
「そういう暴力的な意味じゃない、『謎の怖さ』のあるグループだと伝わってると思うんで(笑)、ここではそれだけじゃないってことも伝われば、と」
 
 

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