INTERVIEW:

サイプレス上野とロベルト吉野

 

 
■イントロに続く“YOKOHAMA La La La”と、エンディングの“NO LIMIT”にそれが色濃く現われてるから余計にそう感じたのかもしれないけど、“NO LIMIT”には本当に強く“足元性”のような部分が出ていて。
「”NO LIMIT”が今回のアルバムの新録曲の中でほぼ最初に出来た曲なんですよ。それがスタートだったからそういう部分が強くなったのかもしれないし、コレを書いたことによって、自分をどんどん出すためのアルバムになっていったというか」
 
■ただ、”日本語ラップKILLA★”のように、極パーソナルな視点よりもマクロで、同世代だったら理解できるような“共時性”もあると感じて。
「世代論的な部分はあると思いますね。俺の話でもあるんだけど、『みんなも同じ気持ちじゃね?』っていう。フェスとかに出ると、バンドの人たちからはそういう部分を感じたし、そのアプローチが自分にも欲しかった。『大多数と繋がる』という意味でも」
 
■そして、“YOKOHAMA La La La”は、バック・イン・ザ・デイ物というよりも「自分はどこに立ってるのか?」というのを今一度明らかにしているのと同時に、それを“ドリームランド”じゃなくて”横浜市”全域まで広げていて。
「一応、横浜市民なんで、『戸塚区だけじゃなく、みんながイメージする横浜である中区も西区も分かりますよ』っていう(笑)。パブさん(DJ PMX)がプロデュースしてくれたというのも大きいのかな。やっぱりパブさんのトラックが、中心部や横浜全域のことを書く方向に導いてくれた、というか。パブさんのトラックも、ニュー・ウエストなトラックというよりも、いわゆる王道のウェッサイ系で、そこに俺と吉野が乗るっていうのは20年前には考えられなかったし、『今だからやらせてもらえたのかな?』っていう感触がありますね」
 
■パブさんのトラックに乗るのは初めてですね。
「そうっすね。でも、俺のやってたラジオ番組に何度も来てくれたり、すごく可愛がってもらってるんですよね。『ラップスタア誕生!』の2ndシーズンのファイナル・ステージでもゲスト席で一緒に観戦したり。そのときも『呑みながら観てもいいのかな?』って言うから、『いいんじゃないっすか?』って答えたら『じゃあ悪いけどちょっとビール買ってきて。上野の分も買っていいから』ってお金渡されて(笑)」
 
■お駄賃だ(笑)。
「もちろん、『押忍!ごちそうになります!』って(笑)。大先輩なんだけど優しくしてくれるし、今回もすごく乗り気になってくれて、一緒にMVにも出演してくれて。ホントに嬉しいっすね」
 
■一方で“PRINCE OF YOKOHAMA 2222”は、同じ横浜を題材にしながらも、こちらは完全に(頭が)パーなんじゃないかなと思って。
「なに言ってんの!この曲で星新一賞狙ってるから(笑)」
 
■SFショートショートとして(笑)。SFとしての話が破綻しまくってて最高なんだよな。(曲中では)ランドマークタワーには現在はまだ現実化に程遠いワープ装置があるのに、東海道線はリニアっていう微妙な進化だし、戸塚からドリームランドに向かうバス路線の52系統はまだ走ってて。
「『まだバスがあんのかよ』っていう(笑)。バカの考えた未来。二俣川にはまだ免許センターがあるし」
 
■今でさえ自律走行が目前だって言ってんのに、200年経ったら完全に運転免許の概念はないですよ(笑)。そして、まだ横浜駅前の立ち食いそば屋『鈴一』は健在で。
「その割には横浜西口のダイエーはまだあるって設定でリリックを書いてたのに、来年いっぱいで閉店になっちゃって」
 
■世界線の歪みが発生してる(笑)。
「あと余談だけど、オリジナル・ヴァージョンの“PRINCE OF YOKOHAMA”はほぼ10年前の曲(『WONDER WHEEL』収録)で、ここ数年は作曲家印税が半年で数百円ぐらいだったらしいんだけど、『フリースタイルダンジョン』の入場テーマで使ったら数万円入ったらしくて、プロデューサーが喜んでた(笑)」
 
■そして“ヒップホップ体操第三”は、プロレスの入場テーマっぽい導入からブレイク・ビーツ・クラシック“APACHE”的展開に流れ、そしてメインのフレームではなぜか90年代のジャーマン・トランスのようなアプローチに。
「プロレスの入場曲も全日方面で」
 
■ジャンボ鶴田とか、ちょっとイナたい方向で。
「そこから“APACHE”に繋げたら結構面白くなったんで、RHYMESTER“B-BOYイズム”的なトラックで、『B-BOYたるものは!』みたいな曲にしたら面白いかな?と思ったんだけど、プロデュースしたYasterizeが『それは俺の分野じゃないです』と(笑)」
 
■サ上とロ吉と共に“1PAC”という正規リリース絶対無理な曲を一緒に作った関係なのに、今回は謙虚だった、と(笑)。リリックの体操を実際に試してみたら「なんだ、応援団の動きじゃねえか」と(笑)。
「横浜高校応援指導部・元部長の俺が指導しますよ(笑)。まあ、言ったらこれも俺のルーツですよね。それに、この動きって大概運動会とかでもやらされるから、みんな出来るんじゃないかな?って」
 
■前作はエモーショナルなメロで泣かせにきたけど、今回は途中から「なんか良い話」で泣かせにくるという。
「前作の“ヒップホップ体操第二”が予想以上に跳ねて」
 
■ヒプノシスマイクのライヴ・イヴェントでも披露したら、観客がみんな体操してましたもんね。しかも、そのイヴェントで“第二”1曲だけやって帰っていくサ上とロ吉の根性にも震えたけど(笑)。
「ハネた理由としては『曲のエモさ』って部分もあったと思うんだけど、今回も同じようなエモい感じにするとあざとく思われそうだから、今回はトラックは踊りやすく、リリックはエモーショナルにして」
 
■体操の内容から「人生に〆切はないから」という、急激な話の転向には震えましたよ。
「それが『ヒップホップ応援団』ですよ」
 
■ただのマンガのタイトルだよ、それ。
「マガジンで30年以上前にやってたマンガ。しかもHIP HOPが全然関係ないヤツ(笑)。で、トラックは愉快でワイワイ出来る感じにしてもらって、後半は単なるダンス・チューンになるんだけど」
 
■アウトロが長いんですよね。
「それは俺が踊りたかったからだし、ライヴでも多分踊る(笑)」
 
■そこから石野卓球プロデュースの“ホラガイHOOK”に繋がるのは最高でした。“ザ・グレート・カブキ”は、人名がそのままタイトルになるという。
「あそこまでフェイマスならもう一般用語でしょ。辞書に載っててもおかしくないよ」
 
■商標とか大丈夫なのかな。
「怒られたら一緒に春日の居酒屋『BIG DADDY酒場 かぶき うぃず ふぁみりぃ』まで詫びに行こうよ(笑)。毒霧とトラース・キックの一発ももらって」
 
■しかし、「何かよくわかんないけどカッケー」って言葉は無敵ですね。理屈じゃないから反論しようがないし(笑)。でも、「頑張ってる自分たちぐらいは信じてあげたい」という、急にJ-POPみたいなことも言い出して。
「フフフ。承認欲求出ちゃって。褒めてほしいよ、そりゃ」
 
■間違いないですね。
「でも『傾(かぶ)く』っていうのは大事ですよ。結局、俺の仕事は“俺業”だし、傾きながら自分をアピールしなきゃダメだってことを曲にしたかったんですよね。最近、GAS BOYSを聴き直してて彼らにもそれを感じたし、その精神を忘れちゃいけないな、って。俺たちはさんピン勢もLBも、RHYMESTERもGAS BOYSも好きだったけど、GAS BOYSってちょっと当時の日本語ラップの中でも異端だったじゃないですか」
 
■バンドだったし。
「ミクスチャーっぽかったし。だから、聴かないヤツらもいたけどドリームの連中はみんな好きだったし、王道じゃないモノを聴いて楽しむっていうのも『傾く』ってことだと思うんですよ」
 
■自分のオリジナルな価値観で選択する、ということですね。
「だから、戸塚でドリームの連中がやってるバー「WHATS’ GOOD」でやってるイヴェント名が『バカ&シロート』(笑)」
 
■引用元がニッチ過ぎて伝わりづらい(笑)。
「でも、俺たちの中ではGAS BOYSはメッチャカッコ良い存在としてこびりついてるし、一回はああいう感じの曲をやりたいってことで、オマージュも込めてこの曲を作りました」
 
■単にバンド的なモノじゃなくて、TRAPとそれを噛み合わせてもいて、その感じも良かったです。
 

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