INTERVIEW:

サイプレス上野とロベルト吉野

「よくバトルとかで『他の仕事しながらラップしてて何が悪い』『ラップで食ってるお前には俺の気持ちは分からない』とか言われたりもするけど、なんにも悪くないし、むしろ尊敬してるわ!って。でも、俺だって惰性でここまで来たわけじゃないし、仕事として成り立たせるのは本当に大変なんだってことも言っておきたい。そして、もっと俺を褒めてほしい(笑)」

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 活動の活発さや多岐に渡る動きの広さで、シーンの外側にもHIP HOPを代表する存在としてアピールするサイプレス上野とロベルト吉野……という惹句はこのサイトの読者には必要ないかもしれないが、念のため。
 
 特にサ上は、様々なメディアを通して、その存在を見ない日はないのではないかと思う程の八面六臂な活躍を見せているわけだが、昨年のメジャー進出より約1年を経て完成したアルバム「ドリーム銀座」は、これまでのアルバムと同様、彼らの生まれ育った横浜ドリームランド/ドリームハイツに“併設”されていた商店街:ドリーム銀座から名付けられた。
 
 その意味でも、自分たちのホームである横浜を基盤にし、そこへの思いを含めた“YOKOHAMA La La La”といった地元についての曲や、ラッパーとしての挟持を形にした“RUN AND GUN pt.2 feat. BASI,HUNGER”など、「自分たちはどこから来た、何者なのか」を明確にする部分が強く、2枚目のデビュー・アルバムとも思えるような構成だ。
 
 しかし、一方で“青春の決着”など、そういった自分の足元や原点に対する“思い出”や“愛執”に拘泥しないように自らを律するような構成、マクロになった視点からは、サ上とロ吉のスタンスの変化と自分たちの置かれている状況への客観的な視点を感じさせられる。
 
 ……とはいえ、体操はするわ、完全にラップ技術を悪用した“ザ・グレート・カブキ”、SF的世界観の激粗い“PRINCE OF YOKOHAMA 2222”など、「ホント、しょーがねえなぁ……」という部分は健在なサ上とロ吉印な一枚であることには間違いないし、「間違いない作品」なのである。
(※本取材ではロベルト吉野不在)
 
 
■まずはM-1出場と1回戦突破、おめでとうございます。
「ありがとうございます」
 
■そして2回戦敗退、と。
「……分かってたけど話の流れに悪意があるよ!良い経験でしたよ。曲がりなりにも自分たちの考えたネタで一回は勝てたんだから」
 
■どんなネタだったんですか?
「……それは観た人だけの特権ということで(笑)。でも、一回戦の俺らの前がジョイマンとプリンセス金魚で、普通にお笑いのプロの後にネタをやるのは緊張したし、2回戦はもっとプロばっかりだから、『あいつら何しに来てんだよ』って思われてんじゃねえかなって、ちょっと被害妄想も生まれて。でも、やっぱり『喋る』っていう部分で良い勉強になったし、本当に良い経験でしたね。吉野はどうか分かんないけど」
 
■しかし、「ドリーム」収録の“P.E.A.C.E.~憤慨リポート~”での「チャレンジしなよお笑い」というリリックが本当になるとは。
「11年前に自分で張った伏線を回収しましたよ(笑)」
 
■他にも『ハルカウエノセカイ』など、TVのMCも増えているし、サンリオピューロランドでキティちゃんの誕生日を祝ったり、ヒプノシスマイク(男性声優たちによるラップ・ソング・プロジェクト)にもリリックを提供したり。
「Bリーグ・チーム:横浜ビー・コルセアーズの試合中のハーフ・タイム・ショーとかもやってたり。そういう行動の一連を一言で総括すると……“詐欺師”だね(笑)」
 
■フットワークの軽さが犯罪レベルに(笑)。でも、迷走してる感じがしないのは上野君らしいな、と。
「そう思ってもらえればありがたい。転がる石ですよ」
 
■6~7年前は、そういう「様々な動き」に対して、結構ストレスを感じてた部分もあったと思いますが。
「確かに、『日本語ラップキラッ!』とか『RAPSTREAM』(どちらともAmebreak制作の番組)の司会をしてたときの方がプレッシャーというか、自分の立ち位置に悩んでたと思う。当時は、『何で俺がシーンを紹介するような立場にいるのかな?』とか、そういう部分にストレスを感じてもいて。でも、今は『楽しんでやれてる』ってのが大きい。ももクロのニュー・イヤー・カウントダウン・イヴェントに出させてもらったりしても、それを楽しめてるからストレスは感じてなくて。それに、ももクロとの繋がりもレーベル・メイトだったり、加山雄三さんの“蒼い星くず feat. ももいろクローバーZ × サイプレス上野とロベルト吉野 × Dorian”を作るときに一緒にコラボしたのが縁っていう、音楽の流れの中にあるから、そこに対して変な気負いだったり負い目みたいなことは感じなくて」
 
■その意味では、ももクロと同じレーベル・メイト、つまりメジャー・アーティストになって1年経ちました。
「でも、『メジャー云々』ってことはそこまで考えてなかったかな。メジャーだから出来る仕事だったり動き方は増えたけど — 今でも回数は減ったけど『建設的』みたいな自主イヴェントだったりMCバトル『ENTA DA STAGE』を運営したりも含めて — 結局現場にいるから、ラッパー同士の繋がりはメジャー以前/以降でも全然変わらない。現場の人間にまったく会わないような環境だったら、自分の置かれてる立場が不安になってたかもしれないけど、そうではないから。逆に『戦極MC BATTLE』とかに出て、『メジャーのヤツが来やがった』みたいなことを言われると、『え?そんなことを気にしてんの?』って思う」
 
■確かに、「メジャーに行ってどうの」という話をするんだったら、今回の“ザ・グレート・カブキ”でのリリックの被せ、特に「頭が湧いてんだ/大涌谷」という、「メジャーに行った方が頭が悪くなってるんじゃないか?」というラップを聴いてほしい。
「フハハハ。間違いない」
 
■アレはマジで呆れました。
「ホントに酷いと思うけど、吉野とSEX山口さんが褒めてくれたから、もうOKですよ(笑)」
 
■メジャー1stアルバムで、例えば、ここでベタベタに愛だの恋だのっていう、今までサ上とロ吉がやってこなかったことを形にしたら、それは流石にセルアウトだと感じたかもしれないけど、まったくそういう傾向がなかったし、アホなリリックに関してはその精度がより増してしまった、というか。
「例えばTRAPのラップにある被せだったり、いろんな手法やテクニックを駆使することでラップの可能性を広げたばっかりに、それがクレイジーな部分にも広がってしまった、というか(笑)。TRAP的な被せって、被せる言葉は“大喜利”だと思ってるんだけど、やっぱり『湧く』といったら『大涌谷』だろうと、神奈川県民の血が騒いでしまった(笑)」
 

 
■ただ、一方で“メリゴ feat. SKY-HI”という、非常にキャッチーで、実際にアニメ『グラゼニ』のオープニング曲にも採用された曲を生み出したのはメジャー的なアプローチだとも感じて。
「『メジャーだから』ってことはそこまで強く考えてはなかったけど、結果、いろんなフェスとかライヴに対応できる曲になったし、同時に『戦極』のようなバトル現場でもちゃんと盛り上がってくれたり。そういう男女共に盛り上がれるパーティ・チューンが生まれたのは嬉しかった。欲を言えば、もっとチャート・アクションが欲しかったけど(笑)」
 
■手札が広がったと思うし、ディスコティックなキャッチーさというのは新基軸だったと思います。だから、今回のアルバムもそういった路線が強くなるかと思ったけど、“メリゴ”でポップさを担保しつつ、全体の構成としては結構渋い曲も多くて。リリックとしても自分の足元を提示するような曲が多いですね。
「『もう一回原点に立ち返る』じゃないけど、『自分は何者なんだ?』っていう部分を確認したいという気持ちはあったっすね。それはHIP HOPにおいても、っていう部分を含めて」
 

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