INTERVIEW:

KM

■そういった、ある種の“エゴ”の部分がソロ・アルバム制作に繋がっていった、と。その意味でも、今回のアルバムは決してド派手なTRAPアルバムではないし、丁寧な構成と、トーン自体は高くはないけれども、じっくり聴かせるメロディアスなサウンド性が印象に残りました。それに、例えば“夜のパパ feat. 田我流”“Night Owl feat. KLOOZ”“Romance feat. Weny Dacillo, Hideyoshi”は、TRAPという構造では同じなのかもしれないけど、展開や感触はまったく違いますね。そういうサウンド的な広がりがすごく印象的だな、と。
「芯にHIP HOPはあるけれども、そこから抜け出すように色々なジャンルの要素が入っているサウンドに興味があったんですよね。『そういった流れを自分流に作るとなるとどうなるかな?』っていうチャレンジが、今回のアルバムの形に繋がったと思いますね」
 

 
■例えば“Romance”は、TRAPというビート感を外せば、普通にポップスやバラードとして認識できる曲だと思うんです。
「TRAPって、『ベースとキックとスネアとハイハット』っていう、ダンス・ミュージックの基礎で成り立ってるんですよね。だから、その部分をまずしっかりさせて、そこに味付けをすれば、いろんな音楽に広がっていけるんですよ。“Distance feat. Weny Dacillo, Taeyoung Boy, Lui Hua”なんかは、いわば、若いときに聴いてたDRAGON ASHが“Grateful Days”で歌ったようなことと、音色はアンダーグラウンドなエレクトロニカを融合した感じです。内容的には、毎日生きてて感じる不安とか、夢を追うことに対するプレッシャーとか、そういう感情を表現したかった。だから、この曲はイントロよりアウトロの方が暗いんです。若い頃に柵なく音楽を聴いてた感じを、今の自分の音楽知識と組み合わせたらどうなるのかな?って。アルバム全体として、そういう想いはありますね」
 
■ヒット・ソングである“Grateful Days”が例に挙がるのは興味深いですね。
「USのトップ・チャートをそのままなぞったり、いわゆる“○○ Type Beats”を買ってるのと一緒のようなことはしたくなくて。それよりも、日本人が求めるような感触 — 日本人としてのアプローチをやってみたかったんです。USで求められるTRAPと、日本で求められるTRAPは少し違うと思うし、その間を埋めたかったんです」
 
■それはラップの構成が、非常に「日本語ラップ的」だということにも繋がると思います。
「それは、客演に田我流さんを迎えた理由とも繋がるんですが、いわゆるTRAPリスナー以外にこの作品を届けたかったんですよね。ラップやリリックの面において考えると、田我流さんやPUNPEEさんのような、『日本語ラップの良さを進化させるライン』がシーンにはあると思うんですね。そういうアーティストとTRAPビートを組み合わせて提示したい、という気持ちがあって。だから、日本語ラップの良さを残しながらも当たり前に最先端を走ってる、つまり『最先端の日本語ラップ』を作りたかったんです」
 
■リリックではダーティなワードがほとんど登場しませんね。TRAPに関しては、そういった言葉が頻出しがちな傾向があるので、そこで引いてしまうリスナーもいると思いますが、そういったワードによる拒否感は、この作品にはほぼ感じませんでした。
「『ヴァイオレンスを肯定したり、ドラッグを称揚するような内容、それから女性蔑視だったり誰かを傷つけるような内容は止めて欲しい』って、ラッパーにはオーダーしたんですよ。僕はそういった世界にはまったく関わりがないし — 漢方薬中毒ではあるんですが(笑)– 自分名義で作品を出すからには、自分が共感できたり責任が取れる範囲の内容にしたかったんですよね。それから、コンプレックスもあると思います。僕はそういったハードなバックグラウンドがないけれども、『そういった人ではHIP HOPが作れないか?』と言ったら、そうではないと思うんですよね。それを作品として証明したかった。だから、日常のことを普通の目線で書いた音楽が作品の世界観の中心にあるHIP HOPを作りたかったんですよね」
 
■田我流を迎えた“夜のパパ”は、そういった部分が一番強い楽曲だと思うんですが、あの内容はオーダーですか?
「あれは田我流さんのアイデアですね。最初はもっと大きなテーマだったんですが、田我流さんが、『KM君のことを歌いたい』って言ってくれて、それで僕の話を内容に落としこんでもらったんですよね」
 
■これがオーセンティックなビートだと、ちょっとお涙頂戴にみたいな過剰にエモな内容になりそうですが、TRAPビートによって、温度感としても日常とクラブ、つまりKM君の生活を反映した内容になっていますね。その前の曲(“Ego Trip”)に登場するJIROW WONDAも、田我流の前を飾るのに遜色のないラップを聴かせていて。
「JIROW WONDAには、『ラスト前の曲で、しかもラスト曲は田我流だから』って」
 
■圧をかけたんだ(笑)。
「彼には、ラップに関しても結構ディレクションしましたね。彼とは『ラップスタア誕生!』(AbemaTV)で彼が僕の作ったビートを使ってラップしてくれた前から、リミックスのオーダーをもらって繋がってたりもして」
 
■そういう流れだったんですね。今作は、ミックスやマスタリングもご自身で手がけられているそうですね。
「そっちの方が早いから、というのもありますし、僕のキックやスネアって、配置が教科書通りに(定位が)真ん中にないんですよ。EDMやフューチャー・ビーツだと、音のワイド感が出るような手法をとってる曲が結構あって、そこからの影響もあり、スネアやキックの位置がズレてるトラックが多いんですね。エンジニアさんによってはそれは直されるかもしれないし、自分でエンジニアリングをすれば、自分の理想通りの音が出せるかな?と」
 
■だから、スピーカーで鳴らすのとヘッドフォンで聴くので、感触が結構違いますね。
「SoundCloud世代っていうのもあると思います。やっぱりヘッドフォンで作るので。あと、“Don’t Know Why feat. Taeyoung Boy”は、日本語ラップ史上、一番キックが大きい曲になってるんじゃないかな、と(笑)。Taeyoung Boyには申し訳ないけど、ヴォーカルにまでキックをサイドチェインして凹ませてます(※キックを最優先させたミックスをしている)。それもSoundCloudとかで流行っているサウンド感を意識しているし、SoundCloud文化を引き継いでやってるという意識もありますね」
 
■今回のアルバムは“Night Owl feat. KLOOZ”など3曲に参加したKLOOZ君がキーマンとなっているようですね。
「ヴォーカル・ディレクションだったりラッパーとのコネクションだったり、いろんな部分で助けてもらって。彼とは『FORTUNE GRAND PRODUCTION』というプロダクション・ユニットを立ち上げて、これからはそれでも動いていこうと思ってます」
 
■その意味でも、動きは幅広くなっていきそうですね。
「名義に関してはKM以外も含めて、トラック提供や発表はこれからも増えていくので、それも楽しみにしてほしいですね。それから、KviBabaっていう大阪のアーティストのEPをプロデュースします。個人的にも期待してるアーティストなので、良い作品に出来ればな、と。もっと自分のエゴを出した作品も考えているので、注目してもらえたら嬉しいです」
 
 

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