INTERVIEW:

KM

■トラック・メイクはいつ頃から始められたんですか?
「元々、遊びではやってたんですね。今ほど本格的ではなかったんですが」
 
■本格的に始める前もTRAPビートですか?
「そのときはインターネット・マナーな物が多かったですね。ジャージー・クラブが流行ったらそれ、トゥワークが来たらトゥワーク、みたいにその都度の流行を追ってみたり。ただ、2013年にMUSEが一旦閉店したときがあったんですよ。そのときには昼間の仕事を辞めてDJ一本に絞ってたから、いきなりDJの仕事がなくなるっていう事態に直面して。仕事はなくなる、妻も子供もいる、しかも妻のお腹にはもうひとり子供がいる……っていう状況で。そのときに、『他の手段を見つけないとマズイ』と思って、本格的にトラック・メイクを始めたんですよね」
 
■それをよく奥様が許してくれましたね。
「仕事がなくなってるのに、旦那は『プロデューサーになる』っつってビート組んでるわけじゃないですか(笑)」
 
■蹴っ飛ばされても文句言えないですよ(笑)。
「でも、そこで妻が『遊んでる暇はないんだから、本気で作りなさい』ってケツを叩いてくれたんですよね。それで、2日に1曲ぐらいは、ネットにリミックスやブートレグをアップし始めたんです」
 
■その話を訊くと、今作収録曲の“夜のパパ feat. 田我流”が余計に沁みますね。
「妻に支えてもらったんで、本当に頭が上がりません(笑)」
 
■TRAPのビートを作り始めたのも、その時期ですか?
「本格的にはそうですね。だから、トラック・メイクを始めてプロデュースをやろうと本気で思ったのは、実は最近なんです。ただ、TRAPという言葉を知ったのは6年ぐらい前だったと思いますね。FLOSSTRADAMUSがBPMを半分にしたトラックで注目されてて、『それがTRAPっていうんだ』って、SNS上でHABANERO POSSEのGUNHEADさんやCHAKI ZULUさんが話題にしてて」
 
■GUCCI MANEやT.IのようなアトランタTRAPの流れではなくて、ダンス・ミュージックの流れ、だったんですね。
「そうですね。元々、エレクトロとダブステップに興味があった時期で、A-TRAKが『DIRTY SOUTH DANCE』というサウスのヒット曲とエレクトロをマッシュアップしたような企画でレコードを作っていたり、CROOKERSとKID CUDIが“DAY N NITE”という曲をヒットさせてたり。ただ、曲がラウドになりすぎて、クラブでかけにくくなってきた時期に、音数を削ぎ落としたTRAPの流れが入ってきた。『これだったら俺にも作れそうだ』と思いました。それで、本格的にトラック・メイクを始める中で、日本語ラップのリミックスやブートをネットにアップし始めて。それはHABANERO POSSEの影響もありますね」
 
■自分で制作したリミックスやブートは、クラブ・プレイでは使っていましたか?
「使ってました。MUSE自体が盛り上がれば何でもアリな箱だし、『踊らせる音楽』というのが自分のベーシックなので。だから、制作に関しても『自分のDJで使えるモノを作る』という感じでしたね。MUSEのような箱は、ナンパしに来たサラリーマンとかも多いんで、『原曲はこうで、ここから派生したサウンドがこうで……』のような“文脈”は、基本的に必要ないんですよね。それよりも、そういうお客さんが単純に踊れるような音楽が必要なので、『踊れる』っていうポイントに絞って、より幅広く音楽を作って、それを実地で試すことが可能でした。同時に、そこで作った音楽をネット上で発表して、そこでより広いリスナーや関係者に注目してもらって」
 
■僕が明確にKM君のサウンドを意識したのは、JOYSTICKKの“LOLLIPOP feat. KOHH (DJ KM REMIX) ”だったんですが、あの楽曲の制作経緯は?
「DJ SOULJAH“aaight feat. KOHH & MARIA (SIMI LAB) (KM REMIX) ”を作ってアップしたら、P-VINEの人が“LOLLIPOP”のアカペラを渡してくれて。それで制作したら、オフィシャル・リミックスにスライドさせてくれて、MVにも僕のリミックスを使ってくれたんです。そこからP-VINEの人がいろんなアーティストを紹介してくれて、幅が広がっていった感じです」
 
■そこでオフィシャルな仕事も増えていきますが、継続してBandcampやSoundCloudなどに、ブート音源やリミックスを上げられますね。
「そのときは、本気で世界を獲ろうと思ってたんで(笑)」
 
■良い意識だと思いますよ。
「アンダーグラウンドでもTRAPやベース・ミュージックが流行ってたし、TREKKIE TRAXとかがバズってたんで、その波に俺も!……と思ってたんですけど、どうしても友達の少なさが災いして(笑)。だから、バズを目指すよりは着実にやっていこう、と」
 
■とは言え、ここ1〜2年の間にはSKY-HIやBAD HOP、YENTOWNなど、現在のシーンの最先端を走るアーティストへのトラック提供が増えていきます。本格的にトラック・メイクを始めてから4〜5年だということを考えると、この注目度と需要はかなり凄いことだと思います。
「その中で制作した楽曲も反響が良くて嬉しかったです。ただ一方で、『フロアに合いそう』『USの流行を追って』『DJがかけやすい』とか、そういうことを意識した作り方だったと思うんですよ。それ自体は悪くないかもしれないけど、そうするとトラック・メイカーとしての個性や(他との)“差”が出にくくなってしまうとも思うんですよね。求められたオーダーに応える/クオリティを担保するって部分では正しかったかもしれないけど、オリジナリティという部分ではちょっと乏しかったのかな?って」
 

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