INTERVIEW:

ELIONE

「僕がずっと聴いてきて好きだったHIP HOPは一生変わらないと思うし、そこから作り出す自分の音楽も変わらない。だからこそ『違う表現の仕方をする』ことに拘ったし、いろんな表現方法を模索することで、誰かに届くんじゃないかな?って思いながらやってみた。それが楽しかったし、自分の中でもスッキリしましたね」

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 2015年に1stアルバム「Distortion World」をリリースして以来、着実にその実力を世間に広めてきたELIONE(デビュー時はONE a.k.a. ELI-ONE名義で活動)。2016年にリリースされた2ndアルバム「NEONE」ではクラウド・ファンディングを通じての販売など、音楽面以外でもトレンドに敏感な面を見せた一方、流行りだけに囚われない独自の世界観の確立に対してコンシャスな姿勢を貫き続けているアーティストでもある。
 
 前作「NEONE」で外部プロデューサーやSALU/JAZEE MINORらを客演に招き、対外的にもELIONEにとっても“広がり”を感じさせる作風に挑戦し、更に様々なスタイルや歌詞世界に挑戦するモチベーションが生まれたことで最新作「UNCHAINED」が制作されたという。その結果、ラップの技巧面においては既に知る人ぞ知る存在となっていたELIONEだが、今作ではよりアーティストとしてのトータルの飛躍を確実に感じさせる仕上がりとなっている。そういった意識の変遷に至った過程や、SNS上でも明らかにされているSALUやRYKEY、JP THE WAVYといった彼と近しいラッパー仲間たちについてまで、彼に語って頂いた。
 
 
■前作/2ndアルバム「NEONE」がリリースされたのが2年前ですが、改めてあのアルバムを振り返るとどんなアルバムだったと思いますか?
「1stアルバム『Distortion World』(15年)は全部(トラック含め)自分でやったんで、『NEONE』ではいろんなトラック・メイカーの方々と曲を作って。一歩、外に出れたというか、自分だけの世界から外に踏み出すことが出来ました。『NEONE』は“NEO”と“ONE”をくっつけた造語なんですけど、『今までのようにひとりで活動していた自分から進化したい』という気持ちで、自分が尊敬するアーティスト/トラック・メイカーたちと曲を作りたかったんです」
 
■「殻を破りたい」というのが、「NEONE」を作る上での動機として大きかった、と。確かに、「Distortion World」がかなり内省的なアルバムだったので、雰囲気が変わった印象はありました。
「やっぱりサウンドにも世界観があるんで、『違う世界=サウンドで自分がラップする』ということを自分のアルバムでやってみたかったんです。それまでは『自分が良いと思うモノ』だけを見ていたというか、自分側だけを見ていたんですよね。だから内省的にもなったし。外部の人たちとやったことで、自分が今まで扱ったことがないテーマや歌い方に挑戦しようと思えました」
 
■あのアルバムで印象的だったのが、クラウドファンディングを通じてUSBメモリ形式のアルバムや様々な特典を付けて販売していたことで。作品の内容以外の部分でも、様々な試みに挑戦したアルバムでしたよね。
「正直、自分のラップやサウンドは、これまでの日本語ラップの歴史を見ると、同じマーケット — 『こういう人たちが聴いてくれるんだろうな』っていうのが、自分の音楽に関してはそんなにないかな、と思ってて」
 
■ターゲットとなる層、ということですか?
「そうです。僕はもちろんいろんな人たちから影響を受けてるし、好きな日本人ラッパーもいるんですけど、『独自の世界を提案する』ということに関しては、プロモーション面も自分の音楽同様、提示する“世界”の内のひとつだった。それで、クラウドファンディングに挑戦したり、『CDではなくてUSBとして売ってみよう』とか、グッズを付けてみたりして……単純に、1万人が1円で買うのと、100人が100円で買うのって、利益としては一緒じゃないですか。音楽の価値って、CDであるがために価格が2,500円前後になっているだけで、本当は絵とかと一緒で、1億円出したい絵もあれば1円も出したくないような絵もある。そういうようなことが音楽を通して提示できたらな、って」
 
■ONE君の方から価値を設定しないで、それをリスナーに委ねたかった、ということ?
「はい。1万人に聴いてもらう音楽と、『100人に聴いてもらいたい』と最初に意図して作る音楽って、多分作り方が違うと思うんですよ。前者だと、良い意味で『薄める』というか。今となっては、そういう風に作るのもメチャクチャカッコ良いことだと思ってるんですけど、あのアルバムの時点ではまだ1stアルバムの延長線上だったから、僕のことを『良い』と言ってくれたりライヴに来てくれてる人たちにとって価値があるモノをしっかり作ろう、と思ったんです」
 
■大衆が広く受け入れるモノより、既存のリスナーを更に自分の世界に引きずり込みたかった、ということですね。今はそういう考え方じゃないんですか?
「今は、その世界観を薄めても面白く聴かせる技術が身に付いたと思えるようになりました。それは、メロディ然りリリックの書き方然り。より多くの人に『俺の音楽を聴いて!』って胸を張って言えるようになった。クラウドファンディングをやったことで、直接お客さんの声を聞けた、というのが大きいですね。商品を梱包したり郵送するのも全部自分でやったんですけど、そういったやり取りやSNS経由でのリスナーたちの声を聞いたときに、『自分の音楽が“みんな”の音楽になったらいいな』と思うようになったんです」
 
■クラウドファンディングでの試みは興味深かったし、そういった動きを実質ONE君がひとりで仕切っていたと思うので、すごい野心的な動きだと当時、感じたんです。それだけに、今作「UNCHAINED」がこれまで同様の自主リリースではなくManhattan Recordsからのリリースというのが少し意外だったんですよ。あれぐらいのプロモーションをひとりで出来た人だけに、これからもインディペンデントに拘っていくのかな?と思ってたんです。今回のリリースが実現した経緯は?
「僕がまだ地元:静岡にいた頃、ONE YEAR WAR MUSICとManhattan Records/LEXINGTONでSALUの『IN MY SHOES』(12年)と、その後にAKLO『THE PACKAGE』(12年)が出て。元々、DJをやっていた頃にはManhattanのお店に通ってたから好きだったレーベル/レコード屋だったんですけど、そこから最新でメインストリームな日本のHIP HOPがリリースされているのを見たときに、『いつか俺もManhattanと契約したいな』って思ったんですよ。静岡から東京に出て来るときも、僕は当時の仲間たちに『いつかManhattanと契約してリリースする』って言ってたんです。だから、ずっと目標のひとつだったんですよね。僕的には、NYで言うとFAT BEATSみたいな存在が日本だとManhattanだったんです。他のレーベルから出すことにはあまり興味がなかったんですけど、Manhattanで出せるんだったら自分にとっては嬉しいことだな、って。前作にもSALUが参加してくれたし、今作ではRYKEYも参加していますけど、彼らはManhattanからリリースしている/していたので、彼らからもスタッフの人たちを紹介してもらって。制作自体は全部自分で完成させてから、レーベルに相談しに行きました」
 

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