INTERVIEW:

DJ RYOW

「自分の作品ではあるけど、歌ってもらう人ありきのアルバムだと僕は思ってるんで、『絶対このビートで歌ってほしい』みたいなオファーはしないんですよ。客演陣の意見も結構訊いた上で作ったから、そこから良い風に広がりのあるサウンドになったかもしれないです。僕の独断だけでアルバムを作っていったら、もっと『狭い』アルバムになってたかもしれない」

djryow_main
 2000年頭頃から、トラック・メイカー/プロデューサーとしての活動を本格化させたDJ RYOW。自身名義のアルバムをコンスタントにリリースしてきた多作家だが、この度リリースされた「NEW X CLASSIC」が、なんと10枚目のアルバムになるという(彼とTOMOKIYOからなるプロデュース・デュオ:GRAND BEATZ名義のアルバム含む)。そして、トラック・メイカーとして活動開始する以前から名古屋を拠点にクラブDJとして活躍してきたわけだが、その活動歴も今年で20年を迎えたという。
 
 この経歴からも、ヴェテラン・アーティストとなったことは明らかだが、彼が制作楽曲で表現するスタイルは常にアップデートされていて、その変化はこの節目に完成した「NEW X CLASSIC」でも顕著だ。クラブのフロアを意識したビートはもちろんのこと、これまで彼の作品ではあまり聴けなかったような明るめな聴感やオーガニックな感触の曲もある。アルバム・タイトル通り、定まったスタイルに安住することなく「新しいクラシック」を作ろうという気概を感じさせる一枚だ。
 
 
■今作の話に入る前に、前作「216」を振り返って頂けますか?自身の誕生日がタイトルに付けられていたり、RYOW君のパーソナルな視点がそれまで以上に押し出された作品だったと思います。
「リリース日が、ちょうど2016年の2月16日だったんですよ。だから『216』でいいかな、っていう(笑)。生まれ変わる、的な。あのアルバムでは、内容からジャケットに至るまで全てに至るまで出し切れたと思います。だから、作り終わったときは『もう次、アルバム作れることはないだろうな』と思ってたんですよ、ぶっちゃけ。『216』ではリアルにやり切った感があって。だけど、“ビートモクソモネェカラキキナ2016”のリミックスを作ってみたり、いろんなことをやっていく中で今作『NEW X CLASSIC』もちゃんと形に出来た。いつも、発売日を決めたりとかはしなくて、取り敢えずビートを作っていって、『コレはアルバム、イケるでしょ』って曲が10曲ぐらい出来たらレーベルに話を持って行くんですけど、それが前作からちょうど2年経ったぐらいのタイミングで出来たんで、よかったですね」
 
■今、仰っていたように、“ビートモクソモネェカラキキナ2016”はオフィシャル/アンオフィシャル含め、リミックス・ヴァージョンが大量に公開されて、バズが起きましたよね。
「シングルを配信した際にインスト・ヴァージョンも配信してみたんですよね。それで、勝手にリミックスが出来ていったらいいな、って。(リミックスに参加した)岡山のメンツとか岐阜のみんな、大阪の韻踏合組合とかは、たまたまそのタイミングで連絡を取ってたりどこかで会ったりしてた人たちで、リミックスにフィットしそうな人をノリで誘ってみたんです。そうしたら、他にもいろんな人たちがリミックスを出してくれて、勝手に良い現象になったからすごいよかったな、って。トピック的に、リミックスを作りやすい曲だったと思うけど、トコナメさん(TOKONA-X)のワード/声があったからこそ、みんなリミックスを作ったんじゃないかな?って思いますね」
 
■「216」は、RYOW君が立ち上げたレーベル:DREAM TEAM MUSICから最初にリリースされたRYOW君名義のアルバムでしたよね。レーベルを立ち上げたというのも、近年の活動において大きな出来事だったと思います。RYOW君以外の作品でもSOCKSやSTEALERといった旧知のアーティストも所属していますね。
「新しいことをやりたいな、と思って所属レーベル:MS Entertainmentに相談したら会社も前向きになって。地元の若い子 — 若いって言ってもずっと一緒にやってきてた人たちだけど — 具体的な形にはなってなくて、クルーという括りにもしてなかったけど毎週末ずっと一緒にいたメンツたちが、こういう風にベースとなるレーベルがあれば作品を作りやすいんじゃないかな?とも思ったんです。それまでは、イヴェント主催とかはあったけど、こういう風に自分が一番上に立って音楽をやることがなかったんですよね。やっぱり、名古屋だとM.O.S.A.D.やAK-69君がいたり、先輩がいっぱいいるんで」
 
■どちらかというと“裏方”寄りだった、と。
「そうなんですよ。そういうところで、一番上に立ってやることをちょっとやってみたいな、って。(そう思ったのは)多分、ジジイになったからですね(笑)。あと、いろんな人が(頼って)寄ってくれるんです。多分、ラッパー同士だと相談し合わないようなことを僕に相談してくれるんですよね。その上で自分もアドヴァイスすることがよくあったんですけど。だから、それぞれのアーティストが自分でレーベルを作ってリリースするより、それぞれのやりたいことや合ったやり方でひとつのレーベルを作っていけたらな、って。DREAM TEAM MUSICには、他にDJ/プロデューサー/デザイナーのDJ NONKEYやカメラマン、映像チームも所属しています。だから、流通以外のことは出来る体制になってますね」
 
■今作「NEW X CLASSIC」は、RYOW君にとって20周年/10作目という節目にリリースされたアルバムなんですよね?そういった部分から、これまでのアルバムと自分の中での位置付けも異なるアルバムだと思いますか?
「アルバムを作り出したときに、『今作って何作目なんだろう?』って思って数えてみたら10作目だったんですよ。そこから『こういうアルバムにしよう』というアイディアが出て来たんですよね。『NEW X CLASSIC』というタイトルの感じで、『新しいクラシックを作る』とか『新しいアーティストと昔のアーティストを融合させる』というような — 自分がこれまでやってきたことの延長線上ではあるんですけど、コンセプトが固まっていった。『NEW X CLASSIC』の“X”は“10枚目”という意味だったりもするんですけど。そういうことが自分の中で固まっていく過程で『DJは何年やってきたのかな?』って振り返ってみたら、今年が20周年だったんです。そこから『コレは良いタイミングだな』ってなって。制作自体は、そこまで『20周年/10作目』というのは意識してなくて、そこはタイトルだけに留めているんですけど、自然と内容がタイトル/コンセプトに寄ってきたな、って」
 
■HIP HOPプロデューサーが、多数のアーティストを客演に呼んで一枚のアルバムを作るというのは珍しい行為ではないですが、RYOW君のように10枚も作品をリリースした人は、洋邦問わず他に例がないと思います。
「確かに、他に見たことないですよね。それは逆に良い自信になったっすね。多分、良い意味でも悪い意味でも自分の活動内容がずっと変わってない — 良く言えばブレてないから、ですね。作品を出してツアーをして……っていうのが基本としてありつつ、M.O.S.A.D.や”E”qual君、AK君のライヴDJも継続してやらせてもらってるし。ずっと同じことをやりながらも、ちょっとずつ積み上げていけているんだと思いますね」
 
■単純に労力的な意味でもそうですが、クリエイティヴ的にクオリティを維持させて作品を作り続ける難しさという意味でも、簡単なことではないと思います。リリースを重ねていく内に、アルバムの作り方やアルバムとしてまとめ上げる上でのコンセプト作りなどで、初期と比べて変化は出て来ましたか?
「1stアルバム『PROJECT DREAMS』(05年)は、“WHO ARE U?”が出たタイミングに『”E”qualプレゼンツ』という形でアルバムを出せることになって、何も考えずにビートを作っていって、1週間であのアルバムのビートを作ったんですよ。若いときだったというのもあるけど、『何枚ぐらい売れるかな?』とか、そういうことも一切考えずに『出したい!』って初期衝動だけで作ってました。あの頃に比べると、ビートの作り方から曲自体の作り方まで、ガラッと変わりましたね。でも、あの頃と今では作りたいモノに関してはあまり変わってないです。客演のメンツに関しては作品毎に変わってくるんですけど、根本的な部分は変わってない」
 
■「全然新しいモノが出て来ない!」みたいな、才能が枯渇しそうになることはなかったんですか?
「ぶっちゃけ、結構あって。だけど、毎週末のようにDJ営業やAK君/”E”qual君のライヴDJで地方に行かせてもらったり、いろんな人と出会えたり、ライヴやDJを観れるのが良い刺激になってますね。ビート作りに関しても、1stアルバムは全部自分で作ったけど、その後にTOMOKIYOとGRAND BEATZ名義で作るようになって、その後はGROWTHと一緒に作るようになり、今作では新しいプロデュース・チーム:Space Dust Clubとしても制作をしてるんです。そういう風に気が合うメンツと制作をすることで、自分自身を常に“初期化”できるというか。周りの人間には常に恵まれていますね」
 

To Page topTo Page top