INTERVIEW:

GAGLE

■この4年間で、ミツ君の制作環境や制作行程に変化はあったんですか?
DJ Mitsu The Beats「変化した部分と言えば、サンプリングする対象が変わったというか。それまではレコードでネタを聴いて、そこから受けた影響で作ったモノが、フレーズ集とか自分で弾いたモノを保存しているファイルとかに変わっていきましたね。より『パーツ重視』というか。それか、普通にMASCHINEとかに入ってるプリセットの音源を使ってみたり。『音が良ければ何でもいい』っていう考えに変わった。それは一番大きな意識革命でしたけど、今作でもサンプリングはもちろんしてるし、核となる部分は変わらないです。『コレはやったらダメでしょ』っていうのがなくなってきた、というか」
 
■HUNGER君のリリック面に話題を移すと、内省的とはちょっと違うんですけど、“外向き”というより自分自身のメンタルと向き合ってるかのようなリリックが多い印象があります。HUNGER君がひとりで黙々とシャドウ・ボクシングしてる感じ、というか。
HUNGER「ソロのラップって、基本的には内省的になりやすいんです。兄貴のトラックも基本的にはマイナー・コードだし、それをモノにしていく過程で、まずは自分と向き合うというのが前提にある。だけど、今作ではいつもより自分自身と向き合ってるかも、という風に思ったし、それは作り終わった後に感じましたね。確かに、シャドウ・ボクシングしてる感じがあるんですよ。結果的に、それが誰かにとってのメッセージになればいいな、とは思ってますし、『シャドウ・ボクシングで終わらないようにしないとな』とも常々考えていて、そこはラップの難しいところではありますね」
 
■でも、そういうリリックでもライヴ・パフォーマンスなどを通して外側に伝えられる瞬間はありますからね。
HUNGER「『その曲をモノに出来るかどうか?』っていうのは、実際にステージに立ってライヴしないと自分たちでも掴めない。そういう意味では、今後どういう風に伝わるかは自分でもまだ分からない。今作に関しては、あまりライヴというのは意識してなくて、作品作りに没頭してたかもしれないですね」
 
■“屍を越えて”とか“若き匠たちへ”のような共感を得やすいという意味でのアンセム的な要素が — 強いて言うなら“Always”がそれに当たるんでしょうけど — 少ないアルバムだと思うんですよね。言葉単位で見ても、これまでのHUNGER君のラップとは違う印象があります。例えば、“?!!Chaos!!?”みたいなリリックは“新境地”じゃないですか?
HUNGER「そうなんですよね(笑)。まあ、『追い込まれてる感』みたいなリリックですよね、“?!!Chaos!!?”は。自分的にも、精神状態がハッキリしてないなぁ、というか(笑)」
 
■え?病んでたんですか?
HUNGER「まあ、病んでないか病んでたかって言ったら、確実に病んでましたよね。ストレートに怒りをリリックにぶつけるというより、いろんなモノをゴチャゴチャにした上でそういう感情を表現する、っていうのが僕のやり方で。怒りというか『追われてる感じ』だったり — それはプレッシャーから来るモノだったりするし……何がきっかけだったかは覚えてないですね。だから、この曲も散文というか、『何を言ってるのか分からないな』とは自分でも思ってて。最初、僕はこの曲は入れない方がいいんじゃないか?って思ってたぐらいで。でも、サウンド的に“?!!Chaos!!?”は『VANTA BLACK』を象徴している音だし、『逆に、よく分からない感情がいろいろぶちまけられてるような曲があった方がいいんじゃないか?』ってMu-Rが言ってくれて。それ以降の曲は、よりしっかりしたメッセージ・ソングではあるし」
DJ Mu-R「アルバムの曲順次第では機能してくる曲だと思ったんですよね」
 
■「『君は君のままでいい』なんて音楽聴かされちゃ、うん、吐きそうさ」なんてフレーズ、これまでのHUNGER君だと言ってないようなことですもんね。
HUNGER「言ってないんですよねぇ……なんで言ってんだろうなぁ?っていうのは自分でも思う(笑)」
DJ Mu-R「でも、要所ではこれまでも言ってた曲はあるんじゃないかな?」
 
■でも、そういった部分に引っかかったことはなかったから、メッセージの主軸ではなかったと思うんですよ。
DJ Mitsu The Beats「サラッと言ってた可能性はあるけど」
DJ Mu-R「ここまで、というのは確かに」
 
■感情と結びついたリリックという意味では、結構強い言葉を出してるな、と。これまでのHUNGER君のラップは、自分のフロウなどのテクニックを駆使して、そういう部分は煙に巻こうとしていたというか、そういった感情的な部分に引っ張られすぎないようにしてきていた印象があるんですよ。実は毒があるようなことでもファニーに聴かせたりとか。だから、“?!!Chaos!!?”とかは、シンプルに鬼気迫るHUNGER君のラップ/リリックだと思います。
HUNGER「やっぱり、トラックがこういう感じなんで、録音物としての感情表現においては、これまでより全然広いですね」
 
■サウンドがミニマルな分、自分のラップで感情表現したり、ラップでその“余白”を埋める余地が増えたということですね。ただエモいトラックでエモいラップをするのともまた違う。
HUNGER「そうそう」
 
■先程挙げさせて頂いた“?!!Chaos!!?”のリリックは、要するにキレイ事やクリシェが多用されがちな音楽に対して言及している、っていうことですよね?
HUNGER「そういうことなんですよね。今はやっぱ、クリアに整理されすぎている歌詞が多いと思ってて。それはラップのリリックにおいても。一聴しただけでも分かりやすくてノレる、っていう。別にそれはそれでいいんですけどね。だけど、そういう方向にみんな流されがちかな?とも思うんで。感情表現って、もっと複雑なモノなんじゃないかな?って」
 
■“?!!Chaos!!?”の次の曲“日日Living feat. Mitsuyoshi Nabekawa (ATATA)”でも、音楽家として持ち続けている誇りを感じさせる一方、その誇りがあったとしても世間の評価や結果に続かない現状へのフラストレーションも滲ませていますよね。だけど、最終的にはそういった感情を引っくるめた上で表現を続けていくという意思を感じました。
HUNGER「正にそうで、正直、ラッパーとかはすごい“格差”みたいなのが生まれてきてると思うんですよね。経済的な意味だけじゃなくて、『有名/無名』や『人気がある/ない』みたいな部分が露骨に出て来てると思うし、これからはそれが更に拡大すると思っているんですよ。そうなったときに、自分が素直にやりたいことが続けられなくなる状況も生まれやすくなるし、続けていく上で“障害”が増えてくると思うんですよ。『やりたくても続けられないから辞めちゃう』みたいな人も増えてきてしまう気がして。でも、そういった表現をやるのには理由や想いがある筈だから、僕たちの音楽を通してそう感じてる人たちの力になってくれたらいいと思う。『誰かがダメ』とか、そういうことじゃなくて、今作の僕らのように『それ良いね、日本で他に誰もやってないからGAGLEに反映させたら新しいじゃん!』っていうモチベーションをちゃんと形に出来る状況は、限られた人だけが選べる選択肢じゃない方が、絶対に良い音楽が生まれてくると思うんです」
 
■そういう意味では、GAGLEはまだ恵まれている方とも言えますもんね。
HUNGER「そうだと思うんですよね。恵まれてるとも思うし、自分たちでそういった『やるべきこと』をやりながら続けてる、という自負もある。今作も、このテイストのアルバムを、このサウンド・エンジニアたち — エンジニアも一級の人たちばっかりですよ — そういった人たちと一緒に作れる状況はありがたいですね。そういうところにも返したい気持ちがあるし、返しながら後に続く人たちがいれば、そういう人たちにも『同じようにやれる』って思ってもらえるようになればいいな、と思いますね」
 
■今作を作り上げての手応えや、今作を経て今後向かうであろう「これからのGAGLE像」について、皆さんはどう考えていますか?
HUNGER「どうだろうね?取り敢えず、それを自分たちでもライヴしながら探していく、って感じだよね?」
DJ Mu-R「ツアーが始まるんで、それをやりながら探していく感じですね。それは毎回そうなんですけど」
 
■サウンドの変化を受けて、ライヴにおいてもこれまでとは違うモノになりそうですか?既に近年のライヴで示唆はしていたと思いますけど。
HUNGER「変わるでしょうね」
DJ Mu-R「こないだ、地元のクラブで音を出させてもらったんですけど、“鳴り”に関しては凄い成功してますね。その部分においては確実に変わるし、ちょっと前から試みてるマイクのエフェクトのかけ方とかも加わって、また違うモノになる感じはします。それが受け入れられるのかどうかは、ライヴを重ねていかないと分からないことなんですけど。ライヴをやっていく内に、『(ライヴで)活きる曲』というのも分かってくるんで」
HUNGER「ライヴでの音作りも、他に任せられる人がいないから自分たちで詰めようとしてるし、結果的にそれによって自分たちの音楽に対する感性を上げることが出来るんで。まあ、状況が許されればいろんな人(専属PAなど)と組んでステージをやってみたいけど、それが出来るまでは、自分たちだけで表現できるところで、その限界に挑んでいくというスタイルを変えることはないでしょうね」
 
 

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