INTERVIEW:

GAGLE

■取材にあたって前作「VG+」を聴き返していたんですけど、いろんな意味で今作と全然違うアルバムですもんね。改めて聴き返してビックリしましたよ(笑)。
HUNGER「正にその通りだし、作るプロセスも全然違った。レコーディングも、『VG+』は兄貴の家で録ったし、それ以前は東京のスタジオで録ったりしてたんですけど、今作は仙台のスタジオ(Studio Northeye)で録ったというのもあって。それは、私生活的な状況も重なって『仙台でスタジオを探した方がいいな』ってなったからなんですけど。で、スタジオに通い始めた結果、自分たちに合うエンジニア(平塚学)を見つけて、その人と4年間かけてずっと信頼関係を作っていきながら今作を作った。だから、ヴォーカルひとつ取ってもこれまでと全然作り方が違う。ずっと仙台で活動してきたのに、仙台のスタジオでレコーディングしたことがなかったんですよね」
DJ Mitsu The Beats「これまでより、時間が出来たらタイミングで気楽にレコーディングできる感じだったよね」
HUNGER「兄貴も忙しいからね」
DJ Mitsu The Beats「ウチも子供が産まれて、気楽にウチでは録音できなくなっちゃったんですよね」
DJ Mu-R「だから、僕とミツさんはレコーディングにほとんど立ち会ってないですね。エンジニアさんとHUNGERさんがふたりで録ってた」
DJ Mitsu The Beats「それも信頼関係がないと出来ないことだし。レコーディングで3パターン声を録って『どれが一番良いか?』ってなったら、多分みんな同じモノを選ぶと思うし、最終的な判断はHUNGERの意見が尊重されるわけだから、そこを突き詰めてもらった方がいいかな、って。その方がプレッシャーなく録れるっていうのもあるよね?僕らがいた方が良い緊張感が生まれるときもあるだろうけど」
HUNGER「まあ、それは良し悪しだと思うね。ただまあ、こういう(GAGLEにとって新しい)感じだから、『あー、リリック出来ちゃった!今すぐ録りたい!』ってスタジオに入って、出来たらすぐふたりにデータを送るというか。そういう意味では、今回は瞬発力が出せたからよかったですね。『VG+』の延長線上で、メッセージ的な方向性で次に行こうとしても、多分、どこかで無理矢理感が出て来るな、と思ってたんです。今回、サウンドという部分にフォーカスできたのは、震災からの流れを考えると、そういったことを直接的に表現するまでもなく集中できる環境が整ってきたということの証明だとも思う。そういう意味でも先に進んでいる、というか」
 
■「VG+」は震災後に初めて出たGAGLEのアルバムでしたもんね。アルバム全体で震災について直接言及していた作品ではなかったですけど、やはり“震災後”のムードやHUNGER君自身のその頃の感情とどう向き合ってメッセージを発するか、という課題があった筈ですし、シンプルに音楽を作るよりも難しかった制作だったと察します。もちろん、震災の影響が今も完全になくなったわけではないと思いますけど。
HUNGER「その通りなんですよ。だから、今作でも底抜けに明るい曲が作れてないというところを考えると、震災後のムードがないわけではないと思いますね。それは作り上げてみて感じたことで。完全にポジティヴな曲は最後の曲“Always”ぐらいしかないですからね。この曲は、『還元したい』っていう想いを忘れたくなかったし、そういう気持ちをGAGLEらしいところで落とし込みたかったんで。でも、それ以外の曲は、端々に(震災を経てのムードや感情が)リリックとして出ているんだな、って。だけど、『震災から6年目を迎えて、今はこういう状況です』っていうリリックではない」
 
■DJ的視点でMu-R君にお伺いしたいのですが、「VANTA BLACK」のサウンドを理解する上で、具体的にサブ・テキストとして挙げられるアーティスト/レーベル/ジャンルなどはどのようなモノになりますか?
DJ Mu-R「そうっすねぇ……」
HUNGER「難しいねー(笑)。いろんな音楽の蓄積だろうからね」
DJ Mu-R「ジャンルで言うと、所謂“ベース・ミュージック”になるのかなあ……ジャンルも特定できないんですよね。モロ、そのジャンルを掘っているかと言われたら、そのジャンルの文化や背景まで掘ってるわけではないから。レコ屋で試聴して『コレ、カッコ良いな』って思ったモノを集めていった感じなんで。でも、ミツさんがすごく反応してたのは……マイナーすぎるかな(笑) — U-More(ドイツ/ベルリンを拠点に活動するイタリア人DJ)とかですよね?『単音の粒立ちがハンパない』って言ってたのは」
DJ Mitsu The Beats「北欧だったり、ヨーロッパ方面の音楽から受けた影響をHIP HOPに流し込んだビート、みたいな感じなんですかね」
DJ Mu-R「『ベルリンのテクノ』って言っちゃうと(範囲的に)ハンパないことになっちゃうんで(笑)。U-Moreはベルリン・サウンドの一部なんですよね。それ以外の地域だとロシアだったり。USでも、アンダーグラウンド・レヴェルでベルリンのシーンを追ってる連中の音楽がカッコ良かったりするし。今でもそういう音楽はレコードで買ってるんですけど、レコード化するにあたってのカッティングの技術力がハンパなく高くて」
DJ Mitsu The Beats「出音が全然違う」
DJ Mu-R「今のHIP HOPの新譜は、レコードでも出るけど盤質や音質があまり良くなくて。僕らが今話しているようなレコードを買うようになった理由のひとつとして、『音が良い』っていうのもあるんですよね。180グラム/45回転の良さというか」
 
■確かに、HIP HOPに限らずドイツ盤のリイシューとかもそういう仕様は音質/盤質に拘ってますもんね。
DJ Mu-R「そうなんですよ。昔のHIP HOP DJだと『33回転のUS盤じゃないと二枚使いなんて出来ないでしょ』って感じだったと思うけど、そういうのも気にしなくなってきた」
DJ Mitsu The Beats「音数は少ないけど、ドラムの配置だったりとか、すごく空間の使い方が上手くて、そういう“音像”や音質にヤラれた、って感じですね」
DJ Mu-R「で、そこから、2000年代初頭のTIMBALAND/THE NEPTUNES/SWIZZ BEATS/DR. DREとかの、当時の音質が良いUSメインストリーム・サウンドをメッチャ聴き直して。当時、その辺りは買ってなかったんで、100円とかで探しまくって。そういったサウンドとテクノ等の音楽に通じる部分もあるんですよね」
DJ Mitsu The Beats「当時のTIMBALANDとかは、当時の自分がやりたかった音楽と違うから毛嫌いしてた部分があったんですけど、そういった考えを取っ払うと、今更ながらめっちゃカッコ良いじゃん!って」
 
■あの頃のメインストリームHIP HOPの最先端が持っていた感触は、他のダンス・ミュージックと繋がるモノも少なくないですからね。それこそ、皆さんが強く影響を受けてきたJ DILLAもそういったスタイルを大胆に取り込んでいましたよね。
DJ Mu-R「それも大きいですね」
DJ Mitsu The Beats「僕も気にしなくなったというのは、『J DILLAみたいなトップ・プロデューサーがデトロイト・テクノとかから普通にサンプリングしちゃうんだ』って思ったのも大きい。年代やジャンルも関係なくサンプリングしているのを聴いて、『そういうことを気にしすぎてたなー』っていう風には思いましたね。だから、今は音質が良ければサンプリングCDとかからも使ったりするし」
HUNGER「『J DILLAが今も生きてて曲を作り続けていたらどんな方向に向かっているんだろう?』みたいに想像すると、僕らが進んでいる道も、まんざらそう遠くないのかもしれないな、って。『興奮しながら新しい音楽を作る』っていうのは、道筋的にはある意味正しいことなのかな?って。『遡ってどういう音楽を作るか』というより、作れるものなら“その先”を作ってみたい」
 
■ミツ君やMu-R君のDJプレイまでチェックしている層にとっては、今作の方向性はそんなに意外じゃないとは思うのですが、いまだに世間に根強くあるGAGLEに対するイメージ — それは“ジャジー”だったり“メロウ”だったり — というモノに対するアンチテーゼ/回答という意味合いはありますか?
HUNGER「いやー、アンサーっていうのは、別にないよね?」
DJ Mitsu The Beats「そういう風に括られるのがイヤだ、っていうのもなくて」
HUNGER「人それぞれの解釈だし、そのサウンドがその人にとって大事なモノだったとしたら、それはそれでいいし」
DJ Mitsu The Beats「いまだに1stアルバム『3 MEN ON WAX』(02年)が一番良いって言う人もいるし」
HUNGER「だけど、僕たちはどんどん先に進んでいきたいし、興奮できる方向に進んでいく、っていう感じで。だから、『そういうんじゃないぜ、俺たちは』っていう想いで作ったわけではないかな。そういうもどかしさみたいな気持ちも、なくはないですけどね。『こういう感じですよね?』みたいに決めつけられちゃうと、『それは違うよ』って思うことはありますけど。でも、GAGLEに対して抱いてくれてるイメージは、それぞれのモノでいいと思います」
DJ Mitsu The Beats「アンチテーゼはないんだけど、むしろ不安はある。『これまでGAGLEが好きだった人たちはどう感じるんだろう?』っていう。不安というか興味というか。“Always”みたいな曲をアルバム後半に入れることになったというのは、そういう理由もあると思いますね。それはやっぱり、これまでのGAGLEファンのために入れたんじゃないかな?って」
HUNGER「一年ぐらいのスパンで出すんだったら、アルバム前半のような作風だけでイケたと思うんだけど、やっぱり4年経っちゃったんで、そういう意味ではこれまでのGAGLEらしいバランスも意識した。だから、“Always”とか“和背負い feat. KGE THE SHADOWMEN & 鎮座DOPENESS”みたいな曲は制作の後半に作りましたね」
 

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