INTERVIEW:

GAGLE

「『興奮しながら新しい音楽を作る』っていうのは、道筋的にはある意味正しいことなのかな?って。『遡ってどういう音楽を作るか』というより、作れるものなら“その先”を作ってみたい」 -- HUNGER

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 “ベンタ・ブラック”、または“ヴァンタ・ブラック”などと呼ばれる物質は、光の99%以上を吸収してしまう性質を持ち、それ故に「世界で最も黒い物質」と呼ばれていて、数年前にイギリスの企業が開発した際に話題となったことがある。
 
 2014年にリリースされた「VG+」以来となるGAGLEの新作は、生音やサンプリングをこれまで同様取り入れつつも、無機質で自然界には存在しないような音がビートの核として主張している。そのインスピレーション源については本文をご参照頂きたいが、そういった意味で「VANTA BLACK」というアルバム・タイトルは、彼らが今作で志向している“黒さ”を絶妙に表現している。
 
 だが、無機質なビートだからと言って — というより、無機質なビートだからこそ、GAGLEのラップ/トラックが放つファンクネスが際立って、強烈に響いてくるし、テック感の強いトラックだからこそ、HUNGERがラップに込める感情がこれまでの作品以上に生々しく聴こえるという側面もある。これまで数多くの作品を残してきたGAGLEだが、ここまでアヴァンギャルドなアプローチは、これまでのGAGLEで聴くことは出来なかったと思う。故に、もしかしたら賛否両論を呼ぶ問題作となるかもしれないが、デビューしてから15年以上経つ、最早“ヴェテラン”なグループが、自分たちが築き上げてきたフォーミュラに安住することなく新境地を求めていく貪欲な姿勢、そして、その姿勢を傑作と呼べるレヴェルにまで昇華させたことは称賛に値する。是非、各リスナーが出来うる限りの最高の音響環境やライヴ会場などで、本作のグルーヴに飛び込んでみてほしい。
 
 
■また凄いアルバムが出来ましたね。
DJ Mitsu The Beats「あ、そうですか?」
 
■「あ、そうですか?」って(笑)。でも、以前、現場でミツ君に会ったときは、「今度出るアルバム、ハッキリ言って自信作です」ぐらいのことを言ってましたよ。
DJ Mitsu The Beats「へ〜、そんなこと言ってたんだ、僕。自信家だなー(笑)」
 
■HUNGER君からもそのような“煽り”はあったんで、なんとなく想像は付いてたんですけど、実際に完成版を聴かせて頂いて「なるほど」と。でも、振り返ってみたら前作「VG+」からもう4年も経つようなので、そういう意味ではここまでドラスティックな変化も納得できます。
HUNGER「そうなんですよね。早いよね」
DJ Mitsu The Beats「早かった。やることがありすぎて、あっという間に来た、っていう感じです」
HUNGER「行動という意味での振り返りだったら、自分のソロ・アルバム『SUGOROKU』(16年)があったし、ラップのステージ以外での役割みたいなモノも増えた時期でした。仙台に生涯学習施設っていうのがあるんですね。そこで10代向けにやってる芸術ワークショップみたいのがあって、そこで教えたりとか。今、音楽とか美術って必修科目じゃなくて選択制なんですよね。学校で学ばない人がいて、『それは教育として正しいのか?』という疑問から派生して始まったことで。それと、仙台のバスケ・チーム:89ERSの公式ソング“ALL OUT”をやったりしたのも、良い意味で自然な流れで。地元からそういうことを頼まれるようになってきて — ずっと活動してきてもそういう雰囲気っていうのがなかったから — それは意外っちゃあ意外でした。あと、『ラップスタア誕生!』みたいな番組でジャッジしたり。そういう流れがいろいろあったから、自分の中でも変化に驚くぐらいな期間でしたね」
DJ Mu-R「僕は相変わらずな感じっすね。DJやったり。ライヴは、アルバムを出してなくてもお誘い頂くんで、ライフ・ワーク的にクラブDJやライヴDJをやったり、って感じです。個人的なことだと、結婚したぐらいですかね。それも、これまでとさほど変わらなかったりはするんですけど(笑)」
DJ Mitsu The Beats「ビート・シリーズ『BEATS OF THE MONTH』を月イチぐらいのペースでBandcampで発表したり。『Beat Installments』っていうインスト集も4作出しましたね。僕はとにかく、自分が作ってきたトラックをどんどん“消費”していかないともったいないな、と思い始めた4年間でした。使われなかったり、HUNGERにも引っかからなかったようなトラックがあったとしても、それを世に出しておきたいな、って。あと、徳島のアンテナ・ショップ:TurnTableが渋谷に出来て、店名にちなんで僕が徳島に行って感じた空気とか、実際に録音したものを楽曲に込めて、それをレコード化するっていうプロジェクトをやったり」
HUNGER「あと、兄貴は海外仕事が多いよね」
DJ Mitsu The Beats「中国や韓国にDJで行って。そういうのも増えてますね」
 
■あと、ミツ君は自分のトラックをステム・データ(ProToolsなどのソフトウェアで各トラックが独立した形で開けるデータ)で配信してましたよね。
DJ Mitsu The Beats『CELEBRATION OF JAY』(14年)ってアルバムを出したときに、せっかくだから面白いことをやりたいと思って、全曲のステム・データを公開したんですよね。1万円超えぐらいの価格だったから、買った人はそんないないと思いますけど、欲しい人は買うんだな、って」
HUNGER「アレをやってるのはPAUL NICEか兄貴ぐらいだよね。HAVOCもそんなことやってたかな?」
DJ Mitsu The Beats「PAUL NICEがやってるのを見てやってみようかな、と思ったんです。僕の中ではエデュケーションのつもりで。どういう風に作っているのかが解剖できるわけだし、その素材からサンプリングしてもらってもいいだろうし」
 
■ある種、ネタばらしみたいな行為でもありますけど、それはミツ君的にはOKなんですね。
DJ Mitsu The Beats「気持ち的には、今はそうですね。今でもドラム・パーツ集は配信してるんですけど、実際それを使ってくれてる人は何人もいるみたいで、そうなってほしかったんですよね。プロデューサーの後押しというか。僕が好きなカチッとしたドラム — 僕がオススメするキックとかをみんなが使ってくれたら、僕が理想としてる音楽を押し付けられるというか(笑)」
HUNGER「最初、その話を聞いたとき、僕も『それ、いいの?』って感じだったんですけど、『だって、コレ出して良い音楽が増えればいいじゃん!』って言われて」
DJ Mitsu The Beats「最初は抵抗があったけど、今は逆の気持ちですね」
HUNGER「逆に言うと、自分の音に自信がないと出せないモノですよね」
 

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