INTERVIEW:

Zeus N’ LostFace

 

 
■これまでもZeus君とLostFace君は一緒に曲を作ってきましたよね?
LostFace「それこそ、Zeusのソロ・アルバムでもやりましたし」
Zeus「あと、LostFace君のEP『Self Titled』(16年)でも一曲(“でも、やっぱ feat. ZORN & ZEUS”)誘ってもらったし。俺が最初に出したストリート・アルバム『GRAND SLAM』(07年)から後の作品には、多分全部絡んでもらってます。そういった流れの中で、周りの人からは『LostFace君との相性が良いね』という声が一番多かったんですよね」
 
■実際に、「Scramble」がLostFace君との共作名義に至った経緯は?
Zeus「単純に相性が良いし、俺自身もずっと一緒にやりたいと思ってたんです。RYUZOさんの『MESSAGE』(13年)がLostFace君のフル・プロデュースでやってたじゃないですか。アレを聴いて、『俺もLostFace君とだったら良いの作れそうだな』って思って」
LostFace「俺は、単純にZeusのファンなんですよ。彼と関わりがなかったとしても、例えば今の俺が10代だったら彼みたいに“Z”の刺青入れてるんじゃないか、ってぐらい(笑)」
Zeus「それはヤバイっすねー(笑)」
LostFace「結構ファンなんですよ。俺はゴツいラップが昔から好きだったし、彼とは距離感も近いから、彼の音楽を聴くと身に沁みて分かるし。だから、“相性”ということに関してはあまり考えたことはないんですけど、(『相性が良い』と言われると)嬉しいですね」
 
■「Scramble」という今作のタイトルについて教えて頂きたく。
Zeus「『相性が良い』っていう他に共通点があって、ふたりとも“優柔不断”なんですよね。タイトルを決めるのが強烈に苦手っていう(笑)。いろんな案が出たけど『コレ』っていうタイトルが決まらなくて。そこで俺がふと思ったのは、今回の作品に込められたいろんな感情から思い浮かぶいろんなタイトルが全部混ざったようなモノがいいかな、ってことなんですけど、そこで頭に思い浮かんだのが『スクランブル・エッグ』っていうところから『今まで出した案を全部“スクランブル”する』っていう意味合いのタイトルにして。あと、スクランブル交差点のように『交差する』というイメージもあるし、俺らの地元である東京の“スクランブル”なイメージも合うな、と。作品の内容も、ハードに表現してる曲もあれば柔らかく気持ちを表現した曲もあって、いろんな感情の曲があるから、それを全部ひっくるめてごちゃ混ぜにした一個の作品、ということでこのタイトルになりました」
 
■作品の内容に関しては、ふたりでどんな話し合いをして進めていったんですか?
LostFace「全体像については、そんなに話し合ってないかな?」
Zeus「今回、身近で応援してくれる方々の中でも一番アドヴァイスや案をくれたのが(グラフィティ・ライター/デザイナーの)鬼頭さんなんですよ。俺の作品のアートワークは、ほとんど鬼頭さんにやってもらってるんですけど、鬼頭さんはアートワーク以外の部分でもたくさん意見をくれました。『RAW ORE』を出したときは、そういう風にアドヴァイスを出してくれてたのは318君だったんです。彼がエグゼクティヴ・プロデューサーだったんで、レコーディング中に『こうフロウしたらいいんじゃないか?』みたいな率直な意見をしてくれてたんですけど、それは自分が思い描いた曲をレコーディング・ブースに持って行って録音を始めてからの意見じゃないですか。今回は、鬼頭さんからは制作する前の段階で、『今までと同じことをやっても意味がないワケじゃないけど、いろんなことを表現できるっていうことをもっと周りにも知ってもらえればいいし、自分自身にもプラスになると思う』っていう助言を頂いて。フィーチャリング・アーティストの組み合わせとかに関しても、そのアドヴァイスが結構活かされてるんです。だから、そういう面に関してLostFace君と話し合ったことは、一曲一曲の構成だったりとか、ほんの少しだった気がします」
 
■LostFace君の中では、共作を手掛けるにあたって「こういう作品になればいいな」的なイメージはなかった?
LostFace「逆に、俺が『こんな風に』って言わなくても面白いのを作る、っていう風に思っちゃってるんで。だから、俺がアレコレ言ってもなー、っていうのは正直あったかな」
Zeus「LostFace君はこういう性格じゃないですか。だから、俺は『こういう感じ、どうすかね?』って訊いても『いいんじゃないの?』みたいな(笑)」
 
■でも、「MESSAGE」リリース時に取材させてもらった際、あのアルバムに関してはLostFace君からのアイディア出しや細々としたディレクションまで関わっていたという話でしたが。
LostFace「今回はそんなにしてないですね。Zeusはいつも、俺が予想しているのとは違う角度で来るんですよ。だから、何か予想してた方が変な感じになっちゃう」
Zeus「“Someday feat. YOUNG JUJU& IO”を作るときも、『3人ともこのトラックが気に入ってるんで』って言ったら、『えー?そのトラックでやるの!?』って返事が返ってきたり」
LostFace「ちょっと意外だったんですよね」
Zeus「『RAW ORE』でLostFace君にプロデュースしてもらった“Deep or Cheap”って曲があるんですけど、アレはかなりゴツゴツした曲だったし、BRGKとやった曲もゴツゴツしてたんで。でも、“でも、やっぱ feat. ZORN & ZEUS”は、あの時点では今までになかった柔らかい感じだったけど」
LostFace「それはあのときにちょっと思ってて。自分名義の作品だと俺がトラックを選んだ方がいいな、って思ったし、良い曲が出来ると思ったからZORNとああいう曲を作ってもらおう、ってなって。でも、Zeusがソロでラップする作品に俺があまり口出すのもなぁ、っていうのは正直あって」
 
■じゃあ、トラック選びに関してはどういう風に決めていったんですか?
LostFace「結構渡したよね?」
Zeus「30曲ぐらいは聴かせてもらいました」
LostFace「俺的にも『(選ぶのは)コレかな?』っていうのがあるじゃないですか。でも、そういうトラックは結構選ばれなかったりして、それもまた予想外な感じだった」
 
■“トビダセ feat. SUIKEN and DONY JOINT”はアッパー目な曲だけど、それ以外の曲は結構しっとりした曲調だし、そういったメロウさからは今っぽさも感じられます。
Zeus「何か意図があってこういう感じになったというのは、あまりないですね。自然と、そういったトラックのチョイスになっていった。だけど、それを含めても『自分が言いたい/表現したいこと』はまとまってるかな、と。曲によってリスナー/第三者が受ける印象は違うと思いますけど、比較的、これまでより柔らかくなってるかな、と思います。さっきも言いましたけど、ライフスタイルにも変化があったんで、それがやっぱり関係してるのかな?って思います。友達に“表情”のことも言われたりしますからね(笑)。『目が優しくなった』って」
 
■でも、確かに10年前のZeus君は常に緊張を張らせてる佇まいだったと思います。
Zeus「Instagramで、他人がタグ付けした自分の写真とか見れるじゃないですか。アレを数年前の写真まで遡って見たんですけど、もう、目つきがエグいぐらい違ってて」
LostFace「(笑)」
Zeus「自分が見てもそう思うんで」
LostFace「YouTubeのコメント欄では『顔面凶器みたいな顔してるのに、吐いてる言葉が好き』みたいに書かれてたね(笑)」
Zeus「嬉しいような、切ないような……コメントできませんね(笑)。コレがその写真なんです」
 
■あー、“顔面凶器”ですね(笑)、笑顔ではあるんだけど。その表情の変化はZeus君の私生活面での変化が大きいと思う?
Zeus「それは間違いないですね。ラップで言ってることも私生活の影響が大きいと思います」
 
■「RAW ORE」の頃は、もっと緊張感のあるラップだった気がします。
Zeus「そうですね、『やってやるぞ』的なイキった感じというか。『RAW ORE』の頃は『俺、やってやる』というような前のめりな気持ちが強かったんです。だけど、今作ではそういう前のめりな感じはあまりなくて、地に足が着けた感じというか、『俺はこの曲ではこういうことが言いたい』っていう気持ちがあった上で挑めたかな、って。そこは、自分の普段のライフスタイルがモロに影響してるのは間違いないですね」
 
■LostFace君も、ここ数年Zeus君の変化は感じていた?
LostFace「あー、どうなんすかね?酔っ払ってるときに会うことが多いから(笑)。でも、オトナになるとどんな人でも優しくなるじゃないですか。『みんな大変なんだな』とか、どんどん切に受け止めていくようになる。10代の頃とかって『こんなに辛いのは自分だけだ』って思う時期がみんなあると思うんですけど、歳を取っていくと『辛いのは自分だけじゃない』って分かってきて、他人に優しくなっていく気がするんですよねー」
Zeus「10代の頃と20代前半の頃は、その性根が腐ってましたね。本当に。何やっても上手くいかなかったし、明確なモノが見えなかったので。なのに無理やり歩こうとするから、全部グチャグチャでした。」
 
■自分の活動/生き方に関してフラストレーションがあった?
Zeus「よく、そう言われますけど、フラストレーションはあまりなくて、メチャクチャになっていく自分を、ちょっと離れたところから見つめ直したときに『何やってるんだ俺は』って気持ちと『少し不安定なこの生活が心地良い』って気持ちが交差してて、今思えば、それがすごく楽しかったというか。何て言うんだろ……」
 
■破滅願望、みたいな?
Zeus「……うーん(笑)。でも、メチャクチャな生活に憧れてる感じはやっぱりあった。『世界中のスラム街と比べたら俺らなんて裕福な方なんだし、こんな程度じゃメチャクチャじゃないでしょ』ぐらいの変なスタンスを持っていたかもしれないです。今思えば、ですけど」
 

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