INTERVIEW:

BAD HOP

 

 
■その時が来た、と。これまではストリート・アルバムやフリー・ミックステープのリリース、積極的にMVの発表を続けていたり、昨年末は川崎/大阪でフリーのワンマン・ライヴも成功させてましたけど、僕的にはすごい計画的にバズ作りをしていた印象があるんです。“次”を見据えた動き/準備を着々としていたように見えてました。
「それはメッチャ考えてたし、今も考えてますね。2WINでアルバムを出した頃も考えてたけど、より意識的に考えるようになったのは『誰かが仕切らないとBAD HOPのアルバムは一生出来ないな』って気付いたからですね。その頃考えてやろうとしたことは、全部やれてます。この後、BAD HOPのZineを出したいと思ってるし、自分たちの映画を作りたいというのも現時点で考えてて。立てた計画は全部、日にちまで決めてるし、向こう3年ぐらいの計画は全部見えてますね」
 
■そうした計画を立ててるのは、YZERR君なんですか?
「僕以外、いないんですよ。僕以外でそんな計画について言い出したことを聞いたことがないですね。Pablowとかは、音楽面での細かいこととかはいろいろ考えてますけど。あと、曲に関するジャッジも僕がやってるんですよね」
 
■今作もエグゼクティヴ・プロデュースをYZERR君が務めてますしね。そういった計画を細かく立てるのは、自分たちがラージになるためのビジネス的視点で考えているのか、単にYZERR君がそういう性格なのか、どっちなんですか?
「ビジネス的な感じかもしれないですね」
 
■でも、YZERR君のアーティストとしのキャリアが実質的に始まったのは2WINのアルバムの頃からだろうし、それ以前の業界経験から培った知識や経験値はなかったに等しいですよね。「こうやったらこういう風になれる」というイメージは、確信があったとしても根拠はなかったわけで。
「僕、ラップから離れてた時期にそういうことをすごく勉強してたんですよ。ビジネスのセミナーに行ったりとか。ラップ以外のビジネスで、僕が考えてやったことが当たってお金が入るようになったこともあって」
 
■じゃあ、商才が元々あるということだ。
「昔の話ですけど、例えばバイクを安く仕入れてそれを売るみたいなことをずっとやってたんですよね。海外で何百着もシャツを仕入れて、それを売ったりもしてた。だから、小さい頃からそういうことはやってたんです」
 
■そういったビジネス・センスは、ストリートでの経験から得たハスラー・メンタリティのようなモノが影響している?それとも、もっと王道なビジネス・マインドに近い?
「一時期はビジネス・マインドすぎちゃってリリックが書けなくなっちゃいましたね。敢えてだらしなくやることによって、アーティストとしてより良く見えたり良いフロウが出て来るということは、前から大事にしてたんですけど、ビジネスを意識しすぎてた頃はキッチリした人になりすぎちゃって、朝起きたらすぐお金のことを考えたりしてた。それこそマーケティングとかプロモーションのことを延々と勉強してたんで。でも、元々はストリートみたいなところでバイクとか服を売ってたから、ベースのマインドはやっぱりそういうところから来てますね。言い方は悪いですけど、僕たちは音楽を『売ろう』とは思ってないんです。音楽を通して知名度を上げていけば、それに付随する商売がお金になるというのが分かってるんで」
 
■でも、そういった考え方は現在の世界的な音楽シーンの傾向と合致していますよね。USだとCHANCE THE RAPPERは正にそういう考え方/やり方で成功しているわけだし。
「そうですね。だから、フリーで作品を出していたのも、名前を上げることを最優先にしていたからだし」
 
■だから、自分たちの音楽はある種“広告”ということですよね。
「はい。あと、例えばPablowが4回目の『高ラ選』に出たとき、彼は普通の服装で出ようとしてたんですけど、僕が上から下まで服装を変えさせて、洋服代だけで40万円ぐらいかかったんですよ。でも、その40万円は後々、何千万〜何億円になると思った。だから、最初から僕は“音楽目線”じゃなかった(笑)。でも、フリー・ライヴをやったりとかは、HIP HOPの中でそれをやったから話題になっただけなのかな?って思います。J-POPとかだったら、若手が全国を周って武者修行的に無料ライヴをやるとか、みんながやってるようなことだし。そういったことをHIP HOPでやったってだけですね」
 
■「Mobb Life」に至るまでの計画/流れは、YZERR君的には概ね上手く行ったと思う?
「“軌道修正”は上手くいったとは思います。まず、『自分たちがダサイ』ということを認めることから始まったというか。実は、去年『BAD HOP 1DAY』を出す前にBAD HOPを解散しようとしてたんですよ」
 
■それは、「自分たちがダサイ」と思ったから?
「はい。僕もラップを辞めようと思ってた。『自分がやってしまったことはHIP HOPに対する冒涜だ』ぐらいに思ってました」
 
■そこまで……?
「BAD HOPというか、僕とPablowの活動含め、ですけど。『僕が一番嫌っていたようなラッパーに、自分自身がなってしまった』って思っちゃって、そこから病んじゃったんですよね。HIP HOPの現場にも行きたくなかったし。中立なスタンスのラッパーってあんま面白くないな、って思ってたんです。バランスを取ろうとして計算高いのが見えちゃうようなラッパーって、ドキッとしないんですよ。BAD HOPはそういうことより、より“素”でやってる感じが伝わってたと思うけど、僕とPablowはHIP HOPな筈なのにHIP HOPをやってなかったな、って。ポップなことをやろうとしても、SKY-HIさんみたいなところまでは行こうとはしないじゃないですか。その一方でヤンチャな部分を残しとくという、そこのバランスを取ろうとしている自分に嫌気が差してしまった。でも、その現実を認めた後に『どうしようか?』って話し合って、『じゃあ、もう一枚作ってみるか』ってなって出来たのが『BAD HOP 1 DAY』だったんです。BAD HOPとして最初にMVを出した“B.H.G”“Stay”とかがあったけど、それらと比べて、その後に出した“Liberty”“New Root”の辺りはちょっと音楽性が変わっていったと思うんです。それが正に、“軌道修正”をしたタイミングなんですよね」
 
■その結果、アンセムとなった“Life Style”のような曲が出来た、と。
「その頃、3ヶ月間だけ本当に追い込みました。どんどんディグっていって、『もっとHIP HOPを好きになろう』という努力をしてましたね」
 
■とことんマジメだなぁ……(笑)。
「いやいや。でも、そういうことに気付けたから今がある。フリー作品やフリー・ライヴをやったことで、『クオリティが追いついてないな』ということに気付けたし。最初から気付いてはいたけど、そういう活動があったからこそ、自分の理想に近づけようとすることが出来た。で、その結果が『Mobb Life』になってます。今回のアルバムはすごく聴きやすいと思うんですよね。初めての人も聴けるし、HIP HOPが好きな人も『分かってるじゃん』って言ってくれるようなモノを作ろうと思った。でも、“BLACK BANDANA”とかは言ってることが少し乱暴だから、女子中学生とかにはちょっとハードかもしれないけど、『そういう子たちも聴くだろうな』とは思ってたし、『そういう要素も含めてHIP HOPなんだよ』ということを教えていかないと、HIP HOPがヤワなモノになってきちゃうと思ったから、そういう曲も敢えて入れたんです」
 
■時には“毒”も必要だということですね。
「だから、盤としてアルバムを出すにあたって、『そういう曲は入れよう』って話し合ってました」
 

 
■だけど、そういったあからさまにハードな曲は、今作だと“BLACK BANDANA”や“口だけ”ぐらいですよね。そういった要素は必要とは思っていたとのことだけど、ミニマムに抑えたのは意識的にそういう曲を減らしていったから?
「意識的、ですね」
 
■悪さ自慢じゃないけど、素行が悪かった頃を振り返るギャングスタ・ラップ/サグ・ラップ的な曲は、書こうと思えばいくらでも書ける筈ですよね。でも、今作は敢えてそれをいち要素に留めている。
「それは多分、聴く人が多くなってきたことで“責任”がデカくなってきたからですね。あと、今は自分たちのメンタルがそこにない。そういうことを歌いたくなくなってきたのかもしれない。不良的な世界とはいまだにギリギリの距離感かもしれないけど、前はヤンキーがラップしてたんだとしたら、今はちゃんとアーティストになったというか。前が『ヤンキー的思考8割/ラップ2割』だったとしたら、今はそれが逆になった。ギャングスタ/ヤンチャ的なメンタリティは常に持ってますけど、そこはメッチャ変わりましたね」
 

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