INTERVIEW:

韻踏合組合

「“一網打尽”以上のヴァースは欲しいけど、いわゆる“オラオラ”な感じで行くより違う方向で狙わなアカンのかな、って。“一網打尽”以降、ああいうヒット曲をあと2〜3曲は欲しいと思ってきたけど、まだアレを超えるヒットは出来てないから、『王手』ではそれを全曲で狙いに行ってる、みたいな感じで」 -- ERONE

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 2014年に「NOW」をリリースして以降、16年には「REAL GOLD」、そして今年はニュー・アルバム「王手」をリリースと、コンスタントにアルバムを発表してきた近年の韻踏合組合は、かなり良いサイクルで活動を展開しているように感じられる。
 
 実際、「NOW」では“一網打尽”がシングル・カットされ、リミックス含め、2010年代の日本語ラップを代表するクラシックとなった。そして、ERONEやHIDADDYが『フリースタイルダンジョン』に審査員/チャレンジャーとして出演したり、MCバトル・ブーム以前から続けてきた主催MCバトルなどを通して西日本のフリースタイル/MCバトル・シーンを牽引し、盛り上げてきたことなども、彼らのモチベーションを高める追い風のひとつとなっているだろう。
 
 そして、そんなタイミングでリリースされた「王手」は、そういった近年の彼らの活動やスタンスを集約させたような、実に明快な一枚だと感じた。ライミング、そして集団MCという彼らの武器をフル活用し、トラックも「NOW」のようなヴァラエティに富んだサウンドというより、オーセンティック/ストレートなモノが多く、彼らのライム・スタイルとも相性が良いモノばかりだ。
 
 どうやら、今作「王手」で通算9枚目(!)のアルバムとなるようで、記念すべき10作目に向けて、彼らの動きはますます活発化していきそうだ。
 
 
■前作「REAL GOLD」が昨年春のリリースだったので、約1年半振りの新作リリースとなります。
SATUSSY「ちょっとタイトやけど頑張ってやろうと思ってやり始めたら、意外と最初の数曲はすぐ出来て。『あ、イケる!』って余裕かましてたら全然無理やった(笑)。最後の追い込みがハンパなかったな。だから、もうちょっと早く出したかったというのはあった。厳密に言うと、『王手』のアルバムが9枚目なんすけど、それまでは1年に一枚出すっていう計画で進んでるんですよ。加えて、ワンマン・ライヴもやるっていうのをセットにして。(業界的な)サイクルも早くなってるし、ワンマンも定期的にやるには新しいアルバムが常にあった方がいいだろう、っていう」
ERONE「4ヶ月ぐらいで作ったけど、残りの2ヶ月ぐらいで5〜6曲ぐらい作ったな。最後の2週間ぐらいで3曲とか。でも、NORIKIYOとかの話を訊いてると全然早いペースではない」
SATUSSY「まあ、俺らは人数も多いし。その分、大変なところもあるんやけど、やらんとね」
HIDADDY「俺ら、何年もイヴェント『ENTER』をやってるじゃないですか。で、『ENTER』の(年末)スペシャルとして『SPOTLIGHT』っていうイヴェントも数年前から始めて。で、その『SPOTLIGHT』までに韻踏のロング・セット・ライヴをもっと見せたいということで、ワンマン・ツアー『夏の陣』も始めて。最初は『SPOTLIGHT』がワンマンみたいな感じやったんですけど、『SPOTLIGHT』はフェスっぽくなってきてMCバトルも盛り上がってるし、その上韻踏がロング・セットのライヴをやるってなるとお客がしんどいんで、そこから毎年ワンマン公演をやろう、って話になったんですけど、韻踏が90分以上もライヴをやるなら新しいアルバムを引っ提げていかないと違くね?ってなって。そこから、ちょっとタイトやけど頑張って作っていこう……っていう話になったんですよね?」
ERONE「……その話をしてたんや、今!(笑)」
SATUSSY「詳しくまとめてくれた(笑)」
 
■9枚目のアルバムともなると、アルバム制作もお手の物なのではないか?とも思えちゃいますが。「寝てても作れるわ!」ぐらいな(笑)。今作の制作で意識したことは?
遊戯「出来たらいいんですけどねぇ、寝てても(笑)」
SATUSSY「今まではアルバムの中にソロ曲があったりCHIEF ROKKA/HEAD BANGERZとしての曲があったり、イレギュラーな編成の曲もあったから、韻踏全員でやるポッセ・カットって意外と少なくて。で、『REAL GOLD』から『全曲を全員で演る』っていう方向にして、今回もそう。今作は『ライヴで出来る曲だけにしよう』って話してて、色/振れ幅としては2〜3個ぐらいにして。どっちかというと『広く』しがちだったけど、今後いっぱい作品を作っていくから『狭くていいんじゃないか?』って」
 
■なるほど。確かに「王手」はテーマや全体の雰囲気が特定の方向に絞られている印象があったんですけど、それは今後、定期的に作品を出していくという前提があるからなんですね。
ERONE「トラック・メイカーをNAOtheLAIZAとDJ PANASONICのふたりに絞ったことによって、制作スピードが増したというのもある。10曲ぐらい、いろんなトラックを聴いて、その中から更に2〜3方向ぐらいに音の種類を絞っていった。『今回やるのはこの辺じゃないか?』って。だから、『こんな感じでいこう』みたいなのは最初から決めてた上で作り始めてる。今までは、例えば『ラヴ・ソング入れよう』とか『オラオラ系、欲しいな』って(作っていく内に)なってきたけど、『基本、このノリで』みたいなのは最初からあった」
 
■中休みみたいな曲、ないですもんね。スキットぐらいですよ(笑)。
HIDADDY「今回、このアルバムを作ってる期間に『ゲット・ダウン』(NetflixのHIP HOPドラマ)を観てたんですけど、組合長(SATUSSY)は“ゲット・ダウン・ブラザーズ”のキャラクターで言うと“ブックス”(主人公)なんですよ。だから、(ドラマ同様)曲によっては俺が書いてないヤツもあるんです」
遊戯「いや……書いてこないんですよ」
ERONE「(爆笑)ここは大文字にしといて下さい」
遊戯「さっきからHIDADDYは標準語喋ってたり調子乗ってる感じやけど、リリックを書いてこないから!」
ERONE「書いてこないってことはないけど、遅いんですよね。結果、書いてこない(笑)」
SATUSSY「DJ RYOW君の“ビートモクソモネェカラキキナ”のビート・ジャックをやらせてもらったときもそうやったりするんですけど、例えば遊戯が書いてきたサビを俺のヴァースで歌ったりとか、ヒダやんが思いついたラインをERONEが歌ってたり。ラッパーって基本、『自分のヴァースは自分で書く』っていう考えがあると思うけど、そこを更に進化させて『良いヤツを使ってハメていく』みたいな感じでした」
遊戯「最終的には、その方がいいと思うんですよね。まとまりというか」
ERONE「例えば16小節を4人で廻す場合、8小節 x 2を2本とか4小節ずつとか、いろいろあるけど、そうした場合、ひとりが書いたモノを分けて歌った方が、掛け合いとかを作る時間が少なくて済む」
HIDADDY「アルバムの中で最初に出来たのは“ポップコーン”なんですけど、この曲はSATUSSYが全部書いたんですよ。SATUSSYが全部書き上げるまで、それぞれが書いてきたヴァースを何回も録って」
ERONE「16小節ぐらいのヴァースを書いてきて、ボツになったりして、雰囲気とか変えたりして」
HIDADDY「だけど、俺とか遊戯とかのボツになったヴァースの中から良かったライムを引用したりして、それをSATUSSYがまとめて、みたいな」
遊戯「その分、全体をみんなで考えた感じはあるっすね。タイトルとか」
HIDADDY「遊戯は一応、“タイトル・マスター”って言われてるんですよ」
遊戯「そうなんですよ」
SATUSSY「“一網打尽”とか“REAL GOLD”も遊戯発案やし、“ポップコーン”もそうやな」
遊戯「だから、売れたい曲でタイトルに困ったら、全員俺に言ってもらえれば(笑)」
 
■だけど、今作は“フリースタイルMCバトル”とか……曲名っていうか……(笑)。
遊戯「直球。まあ、その方が分かりやすいんですよね」
 
■“マスターピース”とか、そのまんますぎる(笑)。でも、確かに分かりやすいです。
HIDADDY「上ちょ(サイプレス上野)の“YouTube見てます”的な」
SATUSSY「ジブさん(Zeebra)にも昨日、『ラッパ我リヤの“金”とか、そういう系だね〜』って言われた(笑)。今回、アルバム・タイトルも『王手』やしね」
 

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