INTERVIEW:

THA BLUE HERB

「20年間、ずっと俺たちの音楽を聴き続けてくれてる人は、そんなに多くないと思うんだ。でも、離れてた人たちも時間が経つにつれてだんだん戻って来るという時間軸にもなってきてると思う。20周年というタイミングで派手に動いてるから、どこかで『あー、まだTBHやってたんだな』っていう人たちにも届いてほしい。『まだやってるよ。また戻ってきても全然大丈夫だよ』って」 -- ILL-BOSSTINO

tbh_main
 20年という期間は、人生として考えてもかなりの年数であり、流行り廃りのサイクルが早いHIP HOPという尺度で見ても、少なくとも3〜4つの転換期を挟んでしまうほどの長い年数だ。

 DJ DYEによるグループのオフィシャル・ミックスCD「THA GREAT ADVENTURE」や、4年振りとなる新曲が収められた「愛別EP」は、グループ誕生20周年を迎えたTHA BLUE HERB(以下TBH)にとっての20年間の想いが凝縮された作品たちだ。「THA GREAT ADVENTURE」は、“フェーズ”毎に彼らがどのような“闘い”を繰り広げてきた結果、現在の彼らがあるかを理解することが出来る、どんな自伝的なインタビューよりも饒舌なミックス作品だし、「愛別EP」はそういった“闘い”を通して出会った人々や離れていった人々、そしてそれらの出会い/別れを繰り返した20年を経た彼らの心境/ステートメントも収められている。

 今回は、「THA GREAT ADVENTURE」のミックスを手掛けたDJ DYEにも同席頂き(TBHファンにとっては承知のことかもしれないが、ILL-BOSSTINO/O.N.O/DJ DYEが取材で一同に会する機会はほとんどない)、前述の2作品、そして10月29日に敢行されるグループ初の日比谷野外音楽堂ワンマン公演への意気込みなどについて伺った。
 
 
■2015年にBOSSさんはソロ・アルバム「IN THE NAME OF HIPHOP」をリリースしましたが、あのアルバムから現在までの流れを振り返ると如何ですか?
ILL-BOSSTINO「基本的にはずっとライヴをやってた感じだね。最近はOLEDICKFOGGYとかBRAHMANとか、バンドと一緒に曲を作ることもチャレンジしてたけど、相変わらずそういう感じだった。ライヴをずっと続けて、その間に曲を作る、みたいな」

■O.N.OさんとDYEさんは、「IN THE NAME OF HIPHOP」を聴いてどんなことを感じましたか?
O.N.O「『俺が好きな“MCのHIP HOPアルバム”が出たな』みたいな感覚で聴いてたね。TBHとして聴く感じとはまったく違った。これまでは(TBH以外では)客演だったり他のトラック・メイカーとやったり、単曲でしか(BOSSのラップを)聴けなかったけど、アルバム単位で聴けたし。だから、普通のBOSSファンと同じ感じかな(笑)。あと、自分が今後曲を作る上でのインスピレーションにもなったから、得るモノしかなかったかな」
DJ DYE「ライヴでの持ちネタが増えたというか、『この曲の次にこのソロ曲がハマる』とか、DJ的な聴き方で聴いてましたね」

■O.N.OさんはあのアルバムでBOSSさんがラップした過去の話や心境を、一番近い立場で知っているわけですよね。そういう意味では、一般的なファンとはまた違う感慨があるのかな?と思ったのですが。
O.N.O「いや、意外とそんなこともなくて、みんなと同じだと思うんだよね。俺はTBHのライヴのときは、自分のグループの曲を一番音が良いところで聴ける立場だし、普通にTBHのライヴを観に行く感覚にも近いかな」

■あのアルバムの時点で、「そろそろTBHが20周年を迎える」という節目はどれぐらい意識していたんですか?
ILL-BOSSTINO「あのときはまったく意識してなかったね。割とノリに近かったし。20周年ということを考えだしたのは、『野音でやろうか?』って話になったときかな」

■日比谷野音でライヴするには、まず抽選で当たらないといけないんですよね。かなり当たる確率も低いと聞きますし。
ILL-BOSSTINO「そうだったね。関係各位にも協力してもらって、ずっと応募し続けてやっと当てたね。最後は、TBHR名義の応募が当たったんだよ。20周年が来ることは分かってたけど、何をどうやるかということを本気で考え始めたのは、野音が当たった去年の10月ぐらいからだね」

■アニヴァーサリー・イヤーの最初の動きとしては、DYEさんがミックスした「THA GREAT ADVENTURE」がリリースされました。勝手ながら、TBHは所謂ベスト盤のような作品を出すタイプではないと思っていたので、このようにミックスCDという形でまとめられたというのはすごく腑に落ちました。
ILL-BOSSTINO「『俺らがどういうところから出て来て、どんな生活をして、どう“外”に出て行って、どんな気持ちで日本中を開拓してきて、そこでどんな心境の変化があったのか』ということをミックスで再現してほしい、ってDYEに伝えたんだ。だから、テーマはそういうことになるね」

■DYEさんはこれまでも「JAPADAPTA 2」「ELEKT」などのミックス作品をリリースしてきましたが、自分のグループのオフィシャル・ミックスというのは他アーティストの楽曲をミックスするのとはかなり意味合いが違うと思います。選曲/ミックスする上で意識したことはありますか?
DJ DYE「歴代の曲をまんべんなく入れることですかね。例えば、今、ファンが主に聴いているのが4thアルバム『TOTAL』だとしたら、その前の曲をもう一度聴き直すキッカケになればいいな、と思いました。その上で、各曲のメッセージの流れとか展開を考えて作りましたね」

■ラップ入りのヴァージョンをミックスしたDISC 1、インストをミックスしたDISC 2の2枚組という、ヴォリュームのある構成になりましたね。
ILL-BOSSTINO「ラップだけのミックスでもTBHの20年を追体験できると思うけど、やっぱりO.N.Oの音が作る世界も、それはそれで20年間分の変化/移り変わりがある。12インチとかではインスト・ヴァージョンは入っていたけど、CDアルバムでしか聴いてなかった人はここでインストに触れるワケだし、それもHIP HOP的な楽しみ方だよね。確かにTBHはラップ・グループだし、音はラップ/言葉ありきのバック・トラックという位置付けではあるけど、O.N.Oのトラックにあるテクノやダンス・ミュージックのフレイヴァーもTBHの個性のひとつだから、それをインスト・ミックスとして聴いてみたら、それがより明確に出ると思った。俺の言葉とO.N.Oの音とDYEのミックス、その3つでTBHがあるから、それを見せるためには2枚組が一番キレイかな、と」
O.N.O「DYEは普段からDJプレイをやってるし、インスト曲中心のDJプレイも多いから、そのDJがどんなチョイスをしてミックスしてるのか、というのは楽しみで。だから、俺は商品が出来るまで敢えて聴かないで待つという(笑)」

■DISC 1はBOSSさんがラップしている内容も踏まえた上でミックスしないといけないので、より大変だったのでは?と感じました。一曲通して筋/ストーリーを通した曲が多いので、クイック・ミックスやリリック内容を無視した流れは作りづらいですよね。
ILL-BOSSTINO「大変だったと思うよ」
DJ DYE「『この曲の1stヴァースと3rdヴァースが良い』と思ったら、それ用にエディットしたり、細かい作業は仕込みましたね。『この曲はサビから入った方がいい』とか。メッセージ的には繋がるんだけどBPMが合わない曲もあったから、そういう折り合いを付けるのが大変でしたね」

■あと、各曲が時系列に沿ってミックスされてますしね。
DJ DYE「ざっくりと、ですけどね。最初はそこまで時系列に沿ったミックスにしようとは思ってなかったけど、気が付いたらそういう構成になっていた」

■しかも、20年間となると、1stと4thアルバムでは音楽性だけでなく音質的にもまったく違いますしね。
ILL-BOSSTINO「俺の声も違うしね」

■“RAGING BULL”とか近年の曲を比べると、BOSSさんの声が全然違うというのがミックスを聴くとより伝わります(笑)。
ILL-BOSSTINO「そこも今となっちゃ楽しみのひとつだよね。そういった(違う感触の)曲をミックスできるのが俺たちのカルチャーの面白いトコだしさ」

■近年のライヴでも初期の音源をパフォームしていますけど、音源として聴き返すことはあるんですか?
ILL-BOSSTINO「ほとんどないね。だから、今回は俺自身にとっても良い時間だった。ライヴでよく使ってる曲も入ってるけど、フルで曲を演ることはほとんどないから、ライヴで使ってなかったヴァースを敢えて引っ張り出してきたりもしてるし、そこで新たな発見もあって」

■リスナーとして自分の曲を聴き返して感じたことは?
ILL-BOSSTINO「最近の方が平易な言葉でラップしてるな、と思ったね。よりシンプルになってきてるし、昔の方が力が入ってた。それが無駄だったとは思わないけど、今の俺からしたら要らないところに力が入ってた。それはもちろん、若さ故でもあるし言葉以上の気持ちが強かったというのもあると思う。今は、言葉はそのままの意味の言葉として入れることに力を入れている」

■歌詞作りの面で書き方を変えてきたということはないんですか?
ILL-BOSSTINO「まったくないね。録り方だって意識的に変えたことは何ひとつないよ」

To Page topTo Page top