INTERVIEW:

SALU

「『“殻”を破る』っていう。元々、内向的で性格的にも凝り固まった人間だし、これまでは少数の人間で制作をしてて、デビュー5年目/29歳というところまで来たけど、そこから先に行くためには自分で“殻”を破らなければいけない、ということをいろんな人と会ったりしたことで気付かせてもらえて。で、そう思ったのならこのアルバムでそれをやるしかない、って」

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 前作「Good Morning」で制作環境の「ひとり立ち」に挑戦し、それまで以上に自分の欲求や好みに忠実な音楽性を作り上げたSALU。この意識の転換はSALUにとって相当に重要な転機だったようで、その意識転換が彼のメンタルにも大きく影響を与えていることは、筆者も取材時の彼の語り口やテンションなどの変化から感じることが出来た。

 そして、前作から1年ほどで完成させた「INDIGO」は、その意識転換から更に自信を深めていった結果、更に明るくポップであり、各曲に対してより“自由”な発想でヴォーカルを載せているSALUの姿が、聴いていると頭に浮かんでくる。一方で、これまでの活動から培ってきたラップ・コンシャスな姿勢を覗かせる(図らずも露わになった)部分も少なくないのだが、今作のポイントはそこではないという意味では、これまでの彼の作品とはかなり立ち位置の異なるアルバムとも言える。
 
 
■前作「Good Morning」と今作「INDIGO」の間にはSKY-HIとの共作「Say Hello to My Minions」のリリースがありました。あのアルバムを作った意図や、SALU君が考えるアルバムの立ち位置などについて教えて下さい。
「日高君(SKY-HI)とは2010年頃に出会ったんです。最初はSEEDAさんの楽屋で紹介して頂いて、そのときは『どうも』ぐらいな感じだったんですけど、その後に現場で結構会うようになって、その内に僕がリリースすると日高君が自分のラジオ番組に呼んでくれるようになったんです。そういうことを経て、普通にプライヴェートでご飯とかに行くようになって。『いつか曲やりたいね』っていう話はこの5年ぐらいずっとしてたんですよね。で、2015年末に僕が『Good Morning』を作り終わるぐらいのタイミングで、日高君は『カタルシス』を作り終わっていたから、そのときに誘ってもらったんです。で、『どうせやるんだったら一曲とかじゃなくて、パッと(数曲)やりませんか?』ってなって。その頃の僕は、『Good Morning』を作り終えてメチャクチャ曲を作りたい感じになっていたし、日高君はずっとそんな感じだから、『すぐ出来るっしょ』ってなってスタジオに入った。トラックが上がってきたら、日高君も忙しいのにすぐ書いてくれて、一緒にスタジオに入ってもすぐ曲が出来て、っていう感じに進んでいったんですよ」

■例えばダブル・ネームということでいうと、DRAKEとFUTUREが“ミックステープ”的なアルバムを出しているけど、そういったノリに近かった?
「そういうノリで、『オトナの部活』みたいな(笑)。ふたりとも自分の仕事を終えた深夜にスタジオに入ったりしたし、本流の仕事とは別に面白がって制作する時間だったから、遊びながら作ったっていう感じでした」

■SKY-HIとSALU君は、スタイルは異なるけどふたりとも昨年に“新境地”的なアルバムを出した後だったし、ふたりともHIP HOPとポップスの両軸とどう向き合うか、ということに意識的という意味では共通するスタンスもあると思います。で、そのふたりが共作した「Say Hello to My Minions」は、HIP HOPというアートフォームに対してものすごくコンシャスな姿勢を押し出した作品だったし、故に挑発的なリリックも多い作品でしたよね。
「日高君とか、ビックリするぐらいそんな感じでしたよね」

■「Say Hello to My Minions」を経てSKY-HIが「OLIVE」をリリースして、SALU君が今作「INDIGO」という、両者とも前作より明るい印象のアルバムを完成したことを考えると、あのアルバムはふたりにとって重要な“通過点”だったのかな?という風にも感じて。
「こないだ、日高君の武道館公演を観に行ったときに思ったんですけど、『OLIVE』=“I LOVE”という言葉がかかってるけど、僕も『INDIGO』=“藍(愛)”っていう意味が入ってるんです。『同じことやってるじゃん』って、観てて思ったんですよね。それは偶然だし、僕と日高君では立場が違うけど、そういうことを取っ払って『Say Hello to My Minions』と自分と日高君って考えたら、多分ふたりとも同じような気持ちであの作品に打ち込んだんだろうな、って。『めっちゃ挑発的なリリックにしよう』とか、そういう話をふたりでしたことはなくて、ただお互いが持ち寄ったモノとプロデューサーが出してきたトラックがああいう感じだったから、なるべくしてああいう内容になった。日高君はどうだったか分からないですけど、僕はあの時点では次作の内容については何も考えてなかったです。『Good Morning』の延長線上で制作していたところから自分自身が変わってきた結果、『INDIGO』で出たモノがより明るくなったという感じですね」

■HIP HOP的な初期衝動性や“毒”のようなモノに対する表現欲求を「Say Hello to My Minons」で消化できたからこそ「INDIGO」のようなアルバムが出来た、という解釈が、リスナー側からすると出来てしまうと思うんです。
「あるんじゃないですかね?例えば、今作だと“LIFE STYLE feat. 漢 a.k.a. GAMI, D.O”とか“夜に失くす feat. ゆるふわギャング”とか、僕はほとんどラップしてないですし。ラッパーとしての“我”のようなモノは、『Say Hello to My Minions』を作ったことで減ったのかもしれない。今作は、本当に明るいモノを作ろうと思ったし、『自分の殻を破る』という、今までやってこなかった“幅”を意識して作ったアルバムなんです。そういう意味では、『Say Hello to My Minions』でやっていたような『ラップを分からせたい!』みたいな感じだと出来なかったアルバムだったと思います」

■「Good Morning」では、まだ技巧としてどんなラップをハメ込んでいくか、ということに意識的だったと思うけど、今作は……。
「ないですよね」

■ないというか、そういった部分の代わりに音楽的にいろいろなことをやる、ということに視野が向いている印象があります。
「そうですね。だから、自分がラップする代わりに漢さんたちやゆるふわギャング、FRAME a.k.d. FAKE-IDにラップしてもらってる。僕が一緒に演りたくてリスペクトしている人たちにラップしてもらおうと思ったんですよね」
 

 
■今作リリース前に、今作未収録曲“YEDI”のMVを公開しましたよね。全編英語リリックだったのも話題を呼びましたが。
「多分、『Say Hello to My Minions』を作った後だったと思うんですけど、家でひとり口ずさみながら録音してたら出来た曲なんですよ。『全部英語にしよう』とか思って作ったわけではなくて、ただ気持ち良くフロウしてたら英語が出て来て、『あ、コレ全部英語でイケそう』みたいな感じで、リリックを書かないで1ライン単位で録り続けて出来た曲だから、超遊びっていうか。ずっと英語の曲はやりたかったんです。2012年にデビューしたときにSEEDAさんと対談したことがあって、そこで『英語の曲やらないの?』って訊かれて『いつかやりたいです』って話をしてて。だけど、なかなかそういうタイミングもなかったし、自分の英語力を考えると大変だし……って思ってたんですけど、“YEDI“は遊び感覚でスッと出来た。そうしたら、『コレ、ちょっと(世の中に)出したいな』って気持ちが出て来たんです。出来た曲を車の中で友達に聴かせる、みたいなノリで『世界中のいろんな人に聴いてほしい』って思ったんですよね。『英語の発音が……』みたいになるのは目に見えてたし、いろいろ言われるのは分かってたけど、そんな意見は気にしないで『とにかく出したい』っていう。『この曲によって世界で活動するキッカケになればいい』とかすらもなかった(笑)。僕、英語でフリースタイルが出来るラッパーになりたいんですよ。小さい頃からそういう環境にいた人じゃないと、努力か環境を変えるかしないと出来るようにはならないとは思うんですけど。別に上手くなくてもいいんです。ただ、英語のフリースタイルを海外の人たちと一緒に出来るぐらいのラッパーになりたいっていう、自己満足的な挑戦」

■世界規模での活動云々ではなく、コミュニケーション・ツールとして英語のラップで世界中のラッパーと“会話”をしたい、ということですね。
「逆に、世界レヴェルで日本人が挑戦するんだったら、日本語で超ヤバイことをやるしかないと思うんですよ。KOHH君とかもそうだと思うし。全曲英語で作ったアルバムでアメリカで勝負するとか、もう古いと思うし」

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