INTERVIEW:

KINGPINZ (MASS-HOLE & KILLIN’G)

「KINGPINZが入口になってもいいし、そこから聴いてもらって2MCの音楽でもいいし、こういうオーセンティックなHIP HOPをもっと深く掘り下げてくれたら嬉しいですね。『HIP HOPはバトルだけじゃない』とかは、既にみんなが言ってることだし、そういうところに対するディスっぽい曲はありますけど、単純に聴いてパーティとかに来てくれれば、それだけで分かる部分があると思う。そういうことを感じ取ってほしいですね」 -- MASS-HOLE

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 WDsoundsからラップ・アルバム「PAReDE」などの作品をリリースし、最近ではDOGEAR RECORDSからDJ SCRATCH NICEとの共作インスト・アルバム「B’ronx instrumentals」を発表(昨年末公開の振り返り座談会でも熱っぽく推させて頂いたが、素晴らしいブームバップHIP HOPだ)。その他にも彼と縁深い猛者たちや、近年ではIOやYOUNG JUJUといったKANDYTOWN勢らに多数のトラックを提供してきたラッパー/トラック・メイカーのMASS-HOLE。地元である長野県・松本から毒のあるパンチラインと妥協のない漆黒のビートでヘッズからの信頼を勝ち得てきた男だが、その彼が仕掛ける新たなプロジェクトがKINGPINZだ。

 KINGPINZはMASS-HOLEと、彼と同じく長野を拠点に活動するMC:KILLIN’G(かつては麒麟示という名義で活動していた)からなるラップ・デュオだ。聴く前からある程度想像は付いていたが、デュオとしての1stアルバム「KINGPINZ」は、攻撃性と殺伐さ、揺るぎない彼らのハードコアHIP HOPに対する信念が詰め込まれた、強烈且つ重厚な一枚だ。MASS-HOLEが大部分のトラックを手がけ、DJ SCRATCH NICE/KUT/DUSTY HUSKY(DINARY DELTA FORCE)/DJ GQ/16FLIPといった外部プロデューサーたちも、彼らのスタンスを尊重したビートで加勢。そしてその上に載る、「PAReDE」でも聴かせてくれたMASS-HOLEの挑戦的なパンチラインの数々と、HIP HOPリリシズムを感じさせるKILLIN’Gのヴァースが、ラップ・デュオというスタイルを活かした程良いコントラストを作る。

 90年代〜00年代前半のアンチ商業/拝金主義が全開の(洋邦)アンダーグラウンド・ラップに慣れ親しんできたリスナーにとっては、KINGPINZの音楽は清々しいまでに王道なHIP HOPと感じるだろう。一方、今作でも彼らが“ガキ”と罵る所謂ライト・リスナーやMCバトル/フリースタイルを中心にラップ・シーンを捉えるリスナーにはどう響くのか、筆者には分からない。だが、どちらのリスナーもKINGPINZの音楽に少しでも惹かれたら最後。ジャケットで表現されているような不穏且つダークな空間に拉致され、そこで彼らの手厚い歓迎を受けることだろう。

 今回は、ISSUGI「7INC TREE」のリリース・パーティ出演のため来京していたふたりをキャッチ。KINGPINZの成り立ちやラップ・デュオとして表現している世界観、彼らが先陣に立ち盛り上げている長野・松本のハードコア・ラップ・シーンなどについて訊いた。
 
 
■MASS-HOLE君、KILLIN’G君ともに長野県・松本を拠点に活動してるんですよね?このふたりが繋がったのは、いつ、どんなシチュエーションだったんですか?
MASS-HOLE「長野にいるとあるラッパーが自分の作品をCDで無料配布してたんです。で、その中に一曲、KILLIN’Gが参加してて。たまたまそれを聴いたら面白かったからライヴを観に行ったんです。そうしたら、(出演者の中で)やっぱ一番エッジが効いてて。そこで『一緒にやったら面白いな』って思って話しかけました。次の日にプールに泳ぎに行くって話をしたら、『あ、俺も行きたいっす』って言ってきて一緒に行ったんだけど、G(KILLIN’G)はタトゥーが凄いんで、『いや、逆にヤバイね』って話になった(笑)。それが、俺が『PAReDE』(15年)を出したぐらい?」
KILLIN’G「いや、もっと前じゃないですかね。4年ぐらい前かな?」

■じゃあ、2010年代に入ってからの付き合いなんですね。
MASS-HOLE「そうっすね。だから、付き合いは浅いっちゃ浅い」

■MASS-HOLE君は、地元で気になるラッパーが出て来たら、そういう風に現場まで足を運んでライヴをチェックしてるんですか?
MASS-HOLE「結構やりますね。若いヤツのパーティにフラッと行ったりするし。まあ、パーティ自体も好きなんで。でも、大体のライヴはピンと来ないで酒飲んで終わる、みたいなパターンなんですけど、あのときはKILLIN’Gが引っ掛かった」

■KILLIN’G君は歳下なんですか?
KILLIN’G「そうです。俺は1985年産まれなんで」

■じゃあ、1982sのMASS-HOLE君とは3歳下、と。KILLIN’G君は最初、どうやって長野のラップ・ゲームに入っていったんですか?
KILLIN’G「高校のときすかね?地元にBAGDAD INCという集団がいて、そのクルーの主要メンバーと地元が一緒だったんです。で、彼らを高校のときに聴いて『カッケェなー』と思ったのが入口で。それこそ、KINGPINZでやってるようなハードコアなクルーでしたね。D-BLOCKとかを崇拝してたような感じの。彼らと絡むというか、彼らに憧れて追いかけていったんですよね。で、その後に“コマンドー”っていう4人組をやって……」

■また男臭いグループ名(笑)。
MASS-HOLE「ブレない(笑)」
KILLIN’G「始めたときはもっといたんですけど、最終的に4人ぐらい残って。それぞれいろんな事情があり、最終的に今もやってるのは俺しかいない、っていう感じです。22歳ぐらいからはKILLIN’G(麒麟示)って名前でやってますね」

■2015年に自主制作で「re.Do」というアルバムをリリースしていますね。
KILLIN’G「MASSさんと知り合った頃、RAWSUN refugee campっていうクルーに加入したんです。RAWSUNにはKINGPINZのジャケもやってくれたOLD JOEって人がいるんですけど、彼からビートをもらったらヤバくて」
MASS-HOLE「そいつも結構、ビートを作ってて」
KILLIN’G「25曲ぐらいもらったらみんなヤバかったから、『コレで作れちゃうな』と思って。それで、『何か足跡を残したいな』という感じで作ったアルバムです」
MASS-HOLE「そのアルバム用に俺もビートを渡してて、もう一曲ラップでも参加したんです。その後に、俺の『PAReDE』の“ice”って曲にGも参加してもらって、って流れだったよね。その頃から、地元でライヴとかやるときは大体一緒だったし。Gは、BCDMGのMONBEEともちょくちょく曲作ってたよね?」
KILLIN’G「そうですね、MASSさんと知り合う前だから、結構前ですけど。彼は自分の地元にあるクラブの繋がりで知り合いましたね」

■MASS-HOLE君は、過去にもいろんなグループやユニットの一員としても活動してきてたから、“ソロ一筋”というタイプではないですよね。だから、KINGPINZとしての活動も違和感はないのですが、集団ではなく2MCのデュオというのはまた意味合いが違うのかな?と思って。
MASS-HOLE「まあ、単純に彼とは距離が近いというのもあって曲が作りやすいというのもありましたね。リリックでも言ってるんですけど、今回は地元・松本に還元したいという意図があって。もっと盛り上げたいっていう、そういう意識が年々芽生えてきた」

■確かに、INGLORIOUS BASTARDSや1982Sは地域を越えた繋がりのクルーでしたもんね。KINGPINZはもっと地元に根ざしたフッド・ミュージックというか。
MASS-HOLE「そういう感じっすね。Gは、俺が言うのもアレなんですけど、ラップもカッコ良かったからもっと広くアピールして見せたいな、って思ってたし、『じゃあ、一緒にやろうよ』って感じでアルバムを一枚作るために取り敢えず動き出した感じですね」

■KINGPINZという名前の由来は?
MASS-HOLE「“重要参考人”みたいな意味だったり。あと、ボーリングだと一番難しいポイントにあるピンのことを“キングピン”って言うんですよね」
KILLIN’G「スケボーでもそうですもんね。トラック(デッキとウィールを繋ぐパーツ)の一番重要なピンのことを“キングピン(ナット)”って言う」

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