INTERVIEW:

SHINGO★西成

「もちろん気取ったりエエ服も着たいし、カッコ良い靴も履きたいし、カッコ付けたい俺もおる。そうしたいときはさせてもらうし。でも、普段着のときもそれはそれでエエやんって。だから、その時々のテンションであり、チョイスの幅っていうことなのかな。そして、『決断する』っていうこと。『ブレないでいこう』ってこと。媚びたりするんじゃなくて、自分がそうしたいからするっていう」

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 これまでの彼の動きや楽曲からまったくブレてはいないことだが、3年半振りのアルバム「ここから・・・いまから」の幕開けとなる楽曲が“ひらきなおる”であることからも分かる通り、今回のSHINGO★西成の言葉/リリックもまた豪速球でリスナーの胸に届いてくる強さがある。

 それは今作で言えば、“KILL西成BLUES”で描かれるような彼のホームタウン:西成のハードな現状や、直球で盛り上がりを促す“鬼ボス feat. J-REXXX”や“絶句★ニッポン feat. TAK-Z & KIRA”、怒りと共に「オレも人間失格や!でもラッパー合格や!」というパンチラインも飛び出す“Fuck You, Thank You ほな、さいなら”、そして大きな肯定を形にする“エエやん”や“ここから・・・いまから”……。怒りも悲しみも悦びも楽しみも、様々な感情をまっすぐに言葉でぶつけていく。その意味でも彼のこのアルバムは、改めて全身表現者としてのSHINGO★西成の形を明らかにする。「ここから」という現状報告と、「いまから」という未来に期待させられる作品だ。
 
 
■前作「おかげさまです。」から3年半振りのアルバムになりますね。
「『ここから・・・いまから』というタイトルで、この内容で、この音のクオリティで、この仕上がりで出すのやったらこのタイミングになったというか。だから、『早よせな』っていう気も少しはあったけど、急ぎはせえへんかったし、“リズム”が今のタイミングやったのかなって。その間にいろんな音楽も聴いたし、現場のライヴも大箱から小箱、フェスからジャンルレスなイヴェント、それから高校や中学とかの講演会とか、そういういろんな場所にも出続けてて。そういう中で培ったいろんなことがぎょうさん入ったアルバムになったね」

■この間にはNHK『探検バクモン』の『ニッポン労働ブルース』にて、西成区/あいりん地区をガイダンスする立場として登場されるといった動きもありました。
「でも、敢えて出てると言うつもりはなくて、自然にやらせてもらってるかな、TVとかマスコミ関係は。ちゃんと熱い気持ちで関わってくれるような場合はやるけど、自分が思ってる西成と違うモノを求められる場合もあるし、そういうオファーも多いから、そういうときはお断りしてる。そういうメディアより、西成に来たことがない仲間とか、昔から知ってる人にこそ西成に来てほしいよね。この前やった『西成ウォールアートニッポン(西成WAN)』っていうウォール・アートをバックアップする活動をしてるときにサ上が遊びに来てくれたり、ヒューマン・ビートボクサー/トラック・メイカーのISSEIやCHICO CARLITOも来てくれたり。そういうのが嬉しいよね」

■また、西成の児童施設をドキュメントした映画『さとにきたらええやん』の音楽も手がけられましたが、例えばそういった子どもたちが、ラップやフリースタイルをやったりもするのかな?と思ったのですが。
「西成のコミュニティ、児童施設のコミュニティの子らは、そこにある環境で遊ぶっていうことをしてるから、わざわざ『ラップをやれ』って合図を出さなくても、やってる子はやってるんちゃうかな。みんな、いろんな経験をガキの頃からしてるから、親の顔色を伺うとか、『この兄ちゃんは怖い』とか『あのおばちゃんは褒めてくれる』とか、“街”が子供を育てるようなシステムがあるし、(映画で)舞台となってる『こどもの里』は同じ年代だけで遊んでないから、多分、フリースタイルっていう言葉遊びをしてる子もおると思うよ。土地柄、みんな喋りも達者やしね。俺も突然変異みたいに西成から出てきたんやなくて、そこで培ってきたものが俺の今に繋がってるし、こういう表現をするキッカケに西成っていう場所がなってるのやと思う」

■なるほど。
「なにしろ、西成は『玄関開けたらフリースタイル』な街やからね(笑)。住んだら分かんねんけど、駅に着くまでにホンマに喉乾くから。ゆっくり歩いてたら、おっちゃんおばちゃんらが『あ、シンゴや、ゆっくり歩いて暇なんかな、いじったろ』って、絶対声かけてくる(笑)。それでフリースタイルな、ラバダブな、現場主義なコミュニケーションが始まるし、俺をスルーして通らせないパンチラインが出てくるからね。いきなり『あ〜、しんど〜』って知ってる人に言われたら、『どうしたん?』って言うしかないし(笑)、そこに掛け合いで答えていくしかないやん。冗談やなく、ホンマに言葉を放り込まれるからね。『シンゴ、なんか歌ってや』ってバンバン来るから。だから、もう街の会話がRUN-DMCの“IT’S TRICKY”みたいなモン(笑)」

■西成から若いラッパーは出てきてますか?
「もっと出てきたらええのにねぇ。でも、俺の隣に住んでた勝もそうやし、レゲエのセレクターも出てきてるし、音楽したい若いヤツが西成に住みだしたりもしてて。でも、ラッパーはそうやな……そんなに出てこうへん。俺みたいなクセの凄いヤツがおるから、スタンダードにラップしたいヤツが出てきづらいのかな……とか、ちょっとネガティヴになったけど(笑)。逆に俺とはまったくタイプの違う、ネクスト・ジェネレーションが出てきたら面白いのにな。個性は宝やと思うし、個性的でおることは生きる証やと感じるし、個性があったら生きていける街やから、西成は」

■そういった街の話を伺ったのは、今作に“KILL西成BLUES”が収録されてたからなんですね。“ILL西成BLUES”(1stアルバム『Sprout』に収録)でも描かれていたように、この曲でも西成の現況をラップとしてドキュメントされていて。当然、西成の負の側面も隠さない内容になっています。そういった曲を改めて作った理由を教えて下さい。
「この曲で『街の膿』を出すというようなもん。“ILL西成BLUES”のときもそうやったけど、ガッとエナジーがあって、情熱があって、音楽に熱や愛があるときにしか出来へん曲やし、“ここから・・・いまから”や“一等賞”のような100%ラヴな曲があるからこそ、“KILL西成BLUES”や“Fuck You, Thank You ほな、さいなら”みたいな曲が出来たんかな。“KILL西成BLUES”で書かれたような現実があるし、子供らがあいりん地区で『ドラッグ撲滅』言うて路地をコールして歩かなあかん現状もある。子供らにそんな活動さすのはどうか、という意見もあるやろうけど、せやけど実際にそれ(ドラッグ)の問題があることを住民は分かってるし、子供らにもそういう活動をさせることになったとしても、『この機会に膿を出そうや』ってみんな思ってる。それに、他所から(危ない街だと)言われて怒ったり悲しんだりするより、西成が変わるべきタイミングは今なんじゃないかな、今動こうじゃないか、って。“KILL西成BLUES”でも言うてる通り、『俺らおらんと西成終わるよ』っていう覚悟と気持ちで俺は歌ってるし、その覚悟がある。愛することも覚悟だし、厳しいことを言って膿を出すのも覚悟。このアルバムは“覚悟”というタイトルでもよかったと思うね」

■『さとにきたらええやん』の予告編にもあった通り、そういった状況があり、同時に子供たちが遊ぶ西成の街や三角公園を遠景で写したとき、その後ろにはあべのハルカスがそびえてるんですね。そのアンバランスにはすごく怖さも感じて。
「たこ焼きに楊枝が刺さったみたいに見えるよね(笑)」

■東京で言えば、山谷とスカイツリーの関係にもそれを感じるんですね。そういったアンバランスが進んでいるからこそ、この曲が必要だったのかなって。
「三角公園で夏と冬にやってるライヴの映像が、今回のアルバムの限定盤には入ってるんやけど、そこにもハルカスは映ってて。それはどう捉えるかにもよるやろうけど、そのコントラストも映像に収まってるね」

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