INTERVIEW:

BES feat. I-DeA

「今作は、『言いたいことを言う』っていうのがテーマっちゃあテーマですね。俺なりにいろんなことがあったし。肯定するよりも、否定する方に回るのかな?っていう場合もあるな、ということも思ったりして。全否定するワケじゃなくて、『こういう人もたくさんいるんだよ』『コレじゃなきゃメシが食えない人もたくさんいるんだよ』と言った上で、自分自身の職業としてどうなのか?って考えたときに、それを否定するのか肯定するのか、みたいなことを考えてみたり」 -- BES

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 BESが戻って来た。

 1stソロ・アルバム「REBUILD」をリリースして以降、EPやミックスCD、企画盤などを含めると、数多くのヴァースをスピットしてきたBESではあるが、自らの状況や心境を痛々しいまでに生々しくリリックに落とし込んできた彼のラップをフォローし続けていたリスナーには、彼がここ数年、どのような状態だったかは細々と説明するまでもないことだろう。イリーガルなハスリングに奔走し、自身もドラッグに溺れた結果、彼は数年間に渡る獄中生活をその代償として得てしまう。

 彼が自暴自棄なライフスタイルをラップで描写してきたことは、HIP HOPとして考えると最上級のエンターテインメントにも成り得てしまうという皮肉な結果も生んできた。だが、それらのハードなリリックは、BESが持つ天性のラップ・スキルがあってこそ成り立つモノであり、そのスキルさえ保つ/向上させられれば、彼がハスリングやドラッグから足を洗ったとしても唯一無二な価値を持つラッパーとして今後もシーンで生き残ることが出来るだろう。

 今後、BESがどんな人生を送るかは彼次第だろうし、そもそも彼の生き方をジャッジする立場に筆者はない。だが、文字通り本当の意味でのカムバック作となる「THE KISS OF LIFE」は — 本人の現在の覚悟通り、今後はポジティヴなラップ・ライフに邁進していくのだとしたら — ラッパー:BESにとって新たな自伝の序章になる筈だ。

 筆者は昨年の春に彼が出所して以降、今回の取材が初めての対面だったが、「REBUILD」の頃のようなネガティヴ・マインドで弱々しさすら感じられた彼の姿は、そこにはなかった。彼の性格的に、自虐的なトークは程々に出て来るが、落ち着いた口調でここ数年のストラグルについて語ってくれ、今後のラップ・キャリアに対する展望/野心も語ってくれた。また、盟友であり、BESの制作をサポートし続け、今作でもその手腕を発揮したI-DeAも同席し、的確に補足説明をして頂いた。
 
 
■2008年に「REBUILD」をリリースして以降、ミックスCDや関連作を含めるとかなりの数のリリースがあったBES君ですが、多くのリスナーはその間のBES君がどんなコンディションだったのか、リリックなどを通して察知していたと思うし、実際その結果、数年間塀の中に入ったことも既に公になっています。「REBUILD」リリース後の数年間を振り返ると、BES君にとってどんな時期でしたか?
BES「いや、もうひたすらハスリングですよね。儲かる時期もあったけど、儲からない時期もあって。自分でやってた量も、普通の人だったら倒れちゃうぐらいの量だったと思います」

■BES君が抱えていた個人的なストラグルによってそういう方向に走ってしまったのか、ハスリングやイリーガルな方向に行きすぎた結果、そういう方向に走ってしまったのか、どっちだったんでしょうか?
BES「俺は当時、『ラップ一本で食っていこうかな』って思ってたんですよね。『ハスリングばっかしてる場合じゃないな』って思ってたし」

■だからこそ「REBUILD」というタイトルが付いてたわけですもんね。
BES「そうそう。そうなんですけど、そんなに上手く行かず。カネ的には『REBUILD』を出して少し助かりましたけどね。でも、あのアルバムは原盤権も向こう(P-VINE)だし、売れた分の印税も少ししか入ってこなかった。それを考えると、ほとんどもらってなかったですけどね。まあ、俺がちゃんとスタジオ行かなかったりとか、シカトして1〜2ヶ月(レーベルと)連絡取らなかったりとか、穴を開けすぎたのがいけないんですけどね」
I-DeA「『REBUILD』の制作中、俺は一回ブチ切れてたんで(笑)。あの時期は……実際に録ってるときは別によかったんですよ。『REBUILD』のときは良くも悪くも自分のヨレたライフを曲に上手く落とし込んできちゃってたから。『白線を跨ぐ』的なラインも出てきてたし。そういうのがなかったらもっと『テメェ!』みたいな感じになったと思うけど、またそういうヨレた自分を表現するのが上手いから、怒るに怒れなかった(笑)。だから、難しいところだったっすね。海外のアーティストでもそういう人、いるじゃないですか?そういう人たちと同じような感じで見比べてしまうぐらいな感じだった。『ダメ、絶対!』みたいに突き放して更生させても、彼の体を考えたらそれがいいんだけど、果たしてアーティストにとってはどうなのか?とか、そういう色々な葛藤がありました」

■HIP HOPに限った話じゃないんですが、後世に語り継がれるようなクラシックでも、作ったアーティスト本人にとっては心身ともにベストなコンディションじゃないときに作られた作品も多いですよね。そういう意味では「REBUILD」もそういう作品だったと思うんですけど、そこに対してBES君自身はジレンマを感じたり複雑な心境だったりしますか?
BES「あのアルバムは、作ってるのが恥ずかしかったですね。等身大の自分を書いてたし。SCARS『THE ALBUM』(06年)やSWANKY SWIPE『BUNKS MARMALADE』(06年)とかは、もっとカッコ付けて作ってたんですよね。だけど、『REBUILD』はもっと赤裸々で、自分のバカさ加減をラップしてたから」

■自虐的だった、と。
BES「そうですね、自虐というか自爆、みたいな(笑)」

■赤裸々に書くことで、自分に対する戒めという意味もあった?
BES「そうですね。『もうコレじゃダメだね』みたいな。で、『もうダメだね』じゃ済まなくなっちゃった、みたいな」

■最近リリースされたNORIKIYOの“IT AIN’T NOTHING LIKE HIPHOP”という曲で、「アレはクラシック『REBUILD』『花と雨』/今もMONJUに伸びかけた鼻折られる」というラインがあります。
BES「あの曲、カッコ良いですよねー」

■実際、NORIKIYOが言う通り「REBUILD」は傑作だと思うのですが、当時取材させてもらったとき、すごく気弱な感じだったのが記憶に残ってるんですよね。作り上げた後の高揚感みたいな雰囲気は皆無だった。その頃の感じを考えると、今のBES君はすごく状態が良いな、と思えてしまう。
BES「ありがとうございます」

■あの頃、Amebreakでやっていた『日本語ラップキラッ!』(TOKYO FM)にゲストで出てもらいましたよね。あのとき、トークはやはりヨレヨレだったんですけど、フリースタイルになると凄まじいキレ振りで。
BES「裏話かもしれないですけど、あのとき、(同じコーナーでゲスト出演した)KGE THE SHADOWMEN君とビーフするって佐藤さん(故・佐藤将。当時のP-VINE A&R/後のBLACK SWAN代表)に言われてたんですよ。ビーフというか、バトルをしなければいけない、みたいな」
I-DeA「佐藤さんがけしかけたんだ(笑)」
BES「そうなると、こっちも構えちゃうじゃないですか。で、俺は鬼君と一緒に行って、●●食ったり酒呑んだりして。ラジオ局の喫煙所にいたら、サンドウィッチマンがいて『あ、サンドウィッチマンだ!』って鬼君となったのを覚えてます(笑)」

■佐藤さん、そんなに煽ってたんだ(笑)。実際はガチのバトルではなく、エキシビジョン的なセッション、という感じだったんですけどね。
BES「だから、俺も緊張状態だった。で、『ちょっと軽くディスってみようかな』と思って『出来損ないのクラックみたいなの速攻スクラップ』って言ってみたんですけど、あっちは上がってるような反応しか返ってこなかったから、『もういいや』ってなって(笑)」

■自分がバッドな状態だったりドラッグにハマってるときに、より生々しいラップが出来ちゃうというのは、自分的にはどんな気持ちなんですか?
BES「いやぁ、極端な話、“中”にしょっちゅう入っちゃう人は、入る度に芯が強くなって帰ってきちゃうんですよね。何を言われても動じなくなっちゃう。昔だったら『どうしよう』ってなってたのが、開き直ってしまう」

■逆ギレ的な?
BES「逆ギレというよりも、『聞かれたから言いますけど、自分の思ってることはこういうことなんです』っていうことをラップしてた。でも、今回のアルバムは俺ら的にはもっと自然な感じだったというか、気負わずに出来た。今回はホント短い間に出来ましたよね、I-DeA先生?」
I-DeA「そうっすねー」
BES「昔と比べると“歯抜け”な状態で戻ってきたと思われるかもしれないですけど、違う考え方になってきました。より意味先行になったというか。ちょっと言葉がダサくても意味を通そうかな、って。昔はそういう考えがなかったから、いろんなことを重ねてカッコ良い言葉にしてやってたんですけど」

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