INTERVIEW:

YUKSTA-ILL

■バスケ同様、YUK君のルーツとして大事な要素としてNEO TOKAIという存在があるけど、今作も「NEO TOKAI ON THE LINE」と改めてNEO TOKAIの名前を出している。“STILL T”ではNEO TOKAIへの愛情とライヴァル意識を滲ませているよね。
「まあ、仲間ですよね。ラッパーはセルフ・マネージメントが大事だと思ってて、仲間がいても自分だけでどこまで出来るかが大事だと思ってるんです。だけど、TYRANTにしてもSLUM RCにしても“住所”って感じで、帰るべき場所であり常にある場所。それがあるから、こうして東京に来たり動くことが出来る」

■「名作『CASTE』響く度にHELL/その事実 噛み締める」(“STILL T”)というラインがあって、これはHIRAGEN(TYRANT)のアルバムについての言及だよね。ライヴァルとしてのNEO TOKAI勢は、YUK君にどんな刺激を与えてきた?
「距離感が近いから、同じユニットとして横並びでラップすることもあるし、そういうヤツらがそれぞれ名をちゃんと上げていってると思うから — 一番近い“同業者”って言ったら変かもしれないけど — 『やったれ!』と思う反面、『俺も負けたくねぇ』っていうのは絶対思ってる。昔だったら、その『負けたくねぇ』っていう相手がHIRAGENだった。彼も三重が地元だし、TYRANTをやる前から輝いていたというかセンスがあって、惹かれる何かがあったんです。アイツがいたから俺もこうなれたとも思うので、何かあるっすね。今でも『CASTE』(2010年)は聴くし、色々と思うところはあります。TYRANTという名前を作って始めたのもHIRAGENとATOSONEだと思うし、世界観だったり — “RACOON CITY”(YUKSTA-ILLが所属するRC SLUM RECORDINGSのレーベル名の語源であり、三重県・四日市を意味するスラング)って言い出したのもHIRAGEN。彼らとTYRANTをやるようになって、色々始まっていったんです」

■CAMPANELLAやC.O.S.A.、MCバトルでは呂布カルマなど、YUK君と近しい東海勢が近年、全国区的に注目されているよね。東海のシーンを今、どう見ている?
「みんなカッコ良いと思います。“東海”という括りで言うならば、また脚光を浴び出してると思う。一時期は悲観しているような時期もあったかもしれないですけど、自分的には今キテると思う。全国を見なくても、東海だけでヤバいラッパーが揃っちゃうぐらいいる。中心地:東京や東京のメディアから離れているというのがあるから、そういう意味で歯痒さを俺もみんなも感じてきたと思う。でも、俺的にはSLUM RCとかで何かしら全国のメディアに出るようになって、そのときに『もっと(YUKSTA-ILLの地元である)鈴鹿をシーンのマップに載せたい』という気持ちが強くなりましたね」

■“HOOD BOND”は、正に地元である鈴鹿についてラップしてる曲だよね。
「三重は三重で、すごく特殊なシーンだと思います。東海全般に言えることかもしれないけど、鈴鹿や四日市は特にハードコア・バンド・シーンが根付いていて。四日市の服屋:Snotの店長がやってる『M.A.G SIDE CONNECTION』って10年以上続いてるハードコアのイヴェントとかがあることで、他の地方よりハードコアが盛り上がってると思う。『他の場所だと男臭さマックスだろ』みたいな現場でも意外と女の子がいたりするし。鈴鹿にあるビル(ゑびすビル)で、一階でFACECARZのTOMOKI君がKICKBACKっていう服屋をやってて、2〜3階がライヴ・ハウス兼クラブ、裏にはスタジオやタトゥー・スタジオがある。家から数分ぐらいのところなんですけど、俺はローカルっていろんな場所が分散してるより、ひとつの地域内にまとまっていた方が絶対にいいと思ってるんですよね。そこを目指して行けるから。鈴鹿/四日市エリアはそういう感じなんですよね」

■「気付きゃNEOが付いたTOKAIチャンプ 2度もRUN AWAY 制す言葉のみで見事乱打戦」(“HOOD BOND”)というラインの通り、YUK君は初期UMBなどでは常連のバトルMCだったけど、“GIFT & CURSE”では近年の商業化/エンターテインメント化が進んだMCバトル・シーンや、そこを中心に回る現在のシーンへの思いを「切ない」と表現しているよね。
「複雑(な心境)ですね。今ってHIP HOPじゃなくてラップだし、ラップじゃなくてフリースタイルだし、フリースタイルじゃなくてバトルだと思うんです。そこがなんか……違うんだよなあ、っていうか」

■ラップやHIP HOPにとってのプライオリティが変わってしまったということに思うところがある、と。
「順序が違うし、そうなると言葉が安くなっちゃうと思うんですよね。フリースタイルのような『瞬間の美学』は凄いと思うし、俺も今でもフリースタイルをやるし好きだから、この曲でフリースタイルを否定してるワケではない。だけど、その側面が前に出過ぎちゃうと、いざ曲を作るってなったときに、フリースタイルがメインでそういうモノだと思われちゃうなら、『曲を出す意味、あるの?』って感覚になっちゃう。俺がバトルに出てたときは、自分の名を売って音源やライヴに目を向けさせるためにやってたし、今バトルに出てる子もそれが目的なら出るべきだと思うけど、アイドル化しちゃっているというか。呂布カルマからも色々話を聞くし、バトルに出ることで音源のセールスが上がる人もいるかもしれないけど、それって結局、人気投票みたいになっちゃってるというか」

■音楽のクオリティにフォーカスが当たっているというより、その人のタレント性にフォーカスが当たってる、と。
「そうですね。俺はそこには入りたくないな、って。バトルに出てた当時、バトルMCを目指していたワケじゃなかったから、ある程度のところで引き際を決めて出ていたんです。だけど、ライヴや音源でしっかり名を上げたらまた出たいとは思ってたんですよね。でも、どんどん俺的にバトル・シーンがカッコ悪いというか、俺が好きじゃない感じになってしまった。(自分のスタイル/考えとフィットする)バトルの現場があれば出ることも考えると思うし、可能性はゼロではないですけど、今は……限りなくゼロに近いです(笑)」

■自分の周辺からバトルまで、YUK君の様々な感情が一枚に入ったアルバムとなったわけだけど、この作品を経て今後はどう動いていきたい?
「まずはいろんな人に聴いてもらいたいし、やっぱりライヴしたいっすね。ベースは変わらないから、そこからガンガン東京やいろんなところに行きたい。『questionable thought』を出したときにATOSONEに言われたのが、『ここからどういう道に進むのかはお前次第だよ』ってことで。アーティストとしてどういうスタイルになっていくのか、っていう。自分の中でも譲れないモノはあるし、有名になりたいとは思ってきたけど、踏み外したようなやり方で有名になるのは違うと思うから、そこをぶらさずに行けるところまで行って存在感を示したいと思います。なんとも天邪鬼な感じですけど(笑)」

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