INTERVIEW:

YUKSTA-ILL

■今作は、喜怒哀楽の表現という意味では今までで一番分かりやすい作品かもしれない、と思って。YUK君が何を感じて、それをどう表現したいのかということが、曲単位で明確に出ていると思う。
「昔よりも、曲のコンセプトを明確に伝えやすくなったというか。それは“成長”なのかもしれない。昔も曲毎にコンセプトは設けてたんですけど、昔とは比にならないぐらいに『こういう曲を歌いたい』っていう気持ちが強くて。CD-Rに焼いて音源を配っていた頃から、アルバム一枚作ったら『やりきった……これ以上作れないかも』みたいな気持ちになってたから、歌えば歌うほど作れるトピックが減っていくと思っていたんです。でも、実際はアルバムを作る度に歌いたいことが増えていって。『こういうことが歌いたい』っていうトピックが増えていった結果として、このアルバムになったんだと思います。日常(からトピックを拾うこと)もあるし、心境の変化もあるし、『コレ違うな』って思ってることだったりとかを、素直に一曲一曲切り取って形にしていっているイメージはあるっすね。小さなことでもカッコ良くラップに変換できると思うし。例えば、“WEEK-DEAD-END”とかは“日曜日”についての曲なんですけど、昔は日曜日になるとブルーで『月曜を迎えるのがイヤだ』って思っていたのが、『最近はそう思わなくなったね』って曲で(笑)。それも心境の変化だと思うし、昔だったらこういう曲は書かなかったと思う」

■YUK君は、縦横無尽且つトリッキーなフロウが持ち味で、その部分は今作でも発揮されてるけど、今まで以上によりメッセージに重点を置いている印象も受けた。
「前のアルバムより絶対に聴き取りやすくなってると思うし、そこは意識的ですね。昔、KOJOE君に『おめぇ、“打楽器ラップ”だな』って言われたことがあって、褒めてるのかディスってるのか分からないような感じで(笑)」

■まあ、褒めてるんじゃない?それは(笑)。
「もちろん、褒め言葉としても捉えてたけど、一方で『打楽器のように音として取られて、言葉が届いていない』とも捉えられると思って。自分はちょっと英語が話せるんですけど、なんで日本語でラップを始めたかというと、向こうのヤツらって普通にあっちのラップを口ずさんだりするじゃないですか。ラップはそうあるべきだと思ったから日本語だけでやるようになったんですよ。でも、どんどんやっていく内に、『誰もコレ出来ねぇだろ?』みたいなアプローチをやりたかったから、歌詞カードを見たら全部日本語なのに、聴き取りにくいラップになっていたと思う」

■つまり、スキルの部分に寄っていたと。
「良い悪いの話じゃないんですけど。“STILL T”で『あるべき姿取り戻し』っていう“あるべき姿”というのは、いろんな意味がかかってるんですけど、こういう意味合いだったりもするんです。俺がMCバトルに出てたときぐらいからそうなんですけど、俺は韻を固く踏みたいんですよ。走馬党とかも好きだったし、昔の、“フロウ優先”で聴こえてしまいがちだった時期のラップも韻は固かったと思う。ただ、分かりづらかった。フロウという切り口で語られることが多くて、それが不服とは思ってないんですけど、『ここ、韻固いんだけど分かってるのかな?』みたいに思ってた部分はあって。バトル時代は俗に言う“押韻スタイル”とか言われたりしたし、だったら音源でもその部分がトランスフォームされてないといけないと思ってる。日本語ラップって、一小節に入れられる言葉数が、英語より格段に少ないと思うんですよ。その部分を解消してやろうと思って、一小節内にいっぱい言葉をハメ込められるような、『questionable thought』でやっていたスタイルをやってた。だけど、5年間いろいろやってきた内に、『やっぱり言葉が伝わって口ずさめるようにしたい』って思うようになった。元々、向こうのヤツらみたいに口ずさめるラップを目指していたのに、それが出来ないなら本末転倒になってる気がしたんです」

■今作で参加しているトラック・メイカーは、東西南北、日本各地のビート・メイカーが参加していて、YUK君がこれまでのキャリアで全国の猛者とリンクしてきたことが分かる。一方、地元だったりNEO TOKAIの人たちで固めようと思えば出来たことだとも思うんだけど?
「『questionable thought』を出した後に、全国行けるところに行って、そこでもらってたビートもあるし、経緯はそれぞれいろいろエピソードはありますね。1stアルバムから変わってない気持ちとしては、『色々なビートでラップしたい』というのがあって。俺はどんなトラックでもラップを載せられる自信がある。特定のトラック・メイカーで揃えてアルバムを作るというのはひとつの形で、俺もスゲェ良いと思うんですけど、俺的にはUSのラッパー — JAY-ZでもDMXでも誰でもいいんですけど — アルバムのクレジットを見て『お、こんな人も参加してる』みたいにワクワクしてたんですよね。そういうのもHIP HOPアルバムの楽しい部分だな、と思ってて。あと、自分にはB-ZIKがあって、それはビート:KOKIN BEATZ/ラップ:俺っていうスタンスがあるから、自分のソロはこういう形でありたいというのはありますね。でも、一番提供してもらった曲が多いのがGINMENってヤツなんですけど、彼は俺の地元:鈴鹿に住んでるヤツですね。彼はFACECARZ(ハードコア・バンド)のベースもやっててラップもしてるんです」

■僕がNBAファンだというのもあって、今作の要所で聴けるNBA選手のネーム・ドロップやバスケ関連のワードにどうしても反応してしまったんだけど、YUK君にとってもバスケの存在は大きいみたいだね。“GIFT & CURSE”のイントロでは、アレン・アイヴァーソンの有名な記者会見の声も出て来る。ラッパー/B・ボーイとして、バスケのどんなところにインスパイアされる?
「俺がラップを始めたのはアレン・アイヴァーソンの影響が大きくて、それが20年前なんですけど、20年後となる去年に彼が殿堂入りしたんです。まあ、『殿堂入り記念』っていうのは後付けみたいなモンですけど。殿堂入りのセレモニーのスピーチでラッパーにもシャウトを送ってたりしてて、『こんなヤツ、後にも先にもいねぇだろうな』ってブチ上がりました(笑)。そのタイミングで自分のことも振り返って、『俺はこうだったな』って(今作の制作時に)考えたりしたのはあります。俺は『スラムダンク』の時代からバスケをやってたんで、ラップより早いんですよね。(アメリカでは)HIP HOPとバスケってすごく密接に関わってる。バスケにも“リズム”があるから、ハイライト映像とかHIP HOPを流しながら観るとすごいハマるし。90年代後半にアメリカのペンシルベニア州に住んでたことがあって、正にアイヴァーソンが所属していた76ersがある州だったから、影響受けまくっちゃったんですよね」

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