INTERVIEW:

YUKSTA-ILL

「自分の中でも譲れないモノはあるし、有名になりたいとは思ってきたけど、踏み外したようなやり方で有名になるのは違うと思うから、そこをぶらさずに行けるところまで行って存在感を示したいと思います。なんとも天邪鬼な感じですけど(笑)」

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 近年、HIP HOP内の様々なフィールドで存在感を強めている東海勢 — NEO TOKAI/TOKAI DOPENESSと括られてきた面々の中でも、YUKSTA-ILLはその軽やかなフロウ/デリヴァリー巧者振りの通りのフィジカルさが、音楽/活動ともに顕著な印象がある。彼は地元:三重県鈴鹿市をベースに置き続けながら、NEO TOKAIのスーパー・ユニット:SLUM RCやISSUGI/MASS-HOLEら同い歳の猛者たちとの1982Sなど、ソロ以外の活動を精力的に展開し、地元以外の実力者たちとのコネクションを深めてきた。個人的には、交流があるNEO TOKAI勢の中でも、YUKSTA-ILLは最も饒舌で人当たりが良い印象があり、アンダーグラウンドなスタンスをメインとしているとしても、決して閉鎖的なイメージではない。

 ソロ・アルバムとしては2011年に発表された「questionable thought」以来となる2ndアルバム「NEO TOKAI ON THE LINE」。今作はそんな彼の活動のフィジカルな動きがラップとしてはもちろんのこと、PUNPEE/DJ SEIJI/OLIVE OIL/MASS-HOLE/RAMZAら文字通り日本の“東西南北”に散らばるプロデューサーたちの起用や、幅広いスタイルのビート選びにも表われている。その一方、過去の作品以上にパーソナルな視点が歌詞面では表われている作品でもあり、そこから窺える葛藤や主張も聴き逃すべきではない。

 今回の記事は、YUKSTA-ILLにとっての地元、HIP HOPシーン、そして自身の心境まで、今作で語られている彼の見解や真意を中心に展開するロング・インタビューだ。(YUKSTA-ILLや彼のフッドについて詳しくない方は、過去にUPしたNEO TOKAI/TOKAI DOPENESS勢のインタビューSLUM RCの特集記事を是非ご参照下さい!)

■リスナーの立場からすると、ここ数年のYUKSTA-ILL君はソロ名義の作品は出てなかったとしても、様々な客演やSLUM RC/1982Sといったユニット単位の活動など、常にシーンにその名を残してきてたと思うんだけど、今回のアルバムを聴くと本人とってこの数年はストラグルを感じていた期間だったようだね。
「それは多分、ローカルのストラグルなのかもしれないですね。自分のプライヴェートだったりとか。自分は、昔から“歳相応”みたいなのを掲げながらラップをやってきたんです。『コレぐらいの歳でこうありたい』みたいな。もちろん、若いときなんてバカだから(笑)、『階段飛ばしとかあればいいな』とか思ってましたけど、そういうことはないモノで。今振り返ると、結果としてこういう風にやってこれてよかったとは思ってるんですけど、そういう意味で自分のケツを叩きたかったというか。『ここで心、折れちまうのか?それはない』と思っていたけど、人間、アップダウンはあるんで、そういうことがよぎることもある。ローカルの人って落ち着くのが早いんで、そういう人たちが周りにいっぱいいると、どうしてもそっちに引っ張られたり考えちゃうことが自分にもあって。若い頃、地元:三重のDJの人に『この歳になったら分かるよ。背負うモンが増えるんだ』みたいなことを言われて、そのときは『あー』みたいな感じで聞いてたんですけど、歳を重ねていくと分かってくるし。そういう“風当たり”を感じていた、っていう部分はあります」

■“NEW STEP”での「貫けねぇ自分へ償いの様/夜明け前 似合う薄暗い序章/甘い爪を噛み あの誓約書から時は流れNOW」というラインがあるけど、今作はYUKSTA-ILL君にとって「仕切り直し」という意味合いはある?
「あります。去年、『Minority policy -Operated by KOKIN BEATZ THE ILLEST-』っていうミックスCDを出したんですけど、それはこれまでやってきた客演曲だったりを総括したモノで、そのミックスの最後に入っているのがB-ZIK(YUKSTA-ILLとKOKIN BEATZによるユニット)の9年振りぐらいの新曲なんです。そこでも『原点に戻る/立ち返る』というのは布石的に行なっていて。このタイミングで一周まわって、そういうことを吐き出してリセットするという意味での2ndアルバムでもありますね。この“誓約書”というラインは、1stアルバム『questionable thought』(2011年)のラスト曲が“WRITTEN PLEDGE”っていう曲で、それが“誓約書”って意味なんです。で、その曲で書いたことが守れているかって言われたら守れてないので」

■自分への戒めとして、当時書いたわけだね。
「そうですね。そのとき誓ったモノで守れてるモノってどれだけあるんだろう?と思って。もちろん、守ってるモノもありますけど、曲にまでしたのにツメが甘かったな、って思いがある」

■ストラグルと言えば、7年間働いていた職場を辞めることになった経緯が綴られた“RIPJOB”は、今までありそうでなかったタイプの曲だな、と思って(笑)。曲にまでする程、前の職場はYUK君にとって意味合いが大きいの?
「俺の中でメチャクチャ大きいんですよね。1年半ぐらい前まで働いてたんですけど、リリックにも出て来る“ちねお”っていう上司がいて」

■出て来るね。「誰だよ!」って思ったけど(笑)。
「そう思ってほしくて入れたんですけど、何なら“RIPJOB”の背景なんて、分かるヤツは多分ふたりぐらいしかいない(笑)。7年間、そいつからネチネチ言われ続けてきたんですけど、壮絶なビーフを経て辞めて。会社の社長が音楽に理解のある人だったから、何日か職場を離れても休みをくれたんですけど、年を経るにつれて、俺的にはどんどん羽ばたいていきたいけど、逆に社会/会社から締め付けられていって。社長は理解があったけど、上司の“ちねお”は良く思ってなかったから嫌味を言われ続けていて、『いつか曲にしてやる』って思ってたんですよね」

■職場でのストレスが、ラッパーとしての自分に反映してしまった部分もある?
「最初に話したことと繋がりますけど、そういう“ブルー”な気持ちというのは反映されてるかもしれないですね」

■確かに、“ブルー”な心情というのは今作ではすごく出てるよね。楽しい曲もあるんだけど。
「それも素直な気持ちですからね。今作は、前半がフィジカルで、後半がメンタルって感じなんですよね。『地方ラッパー/B・ボーイの主張』じゃないですけど」

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