INTERVIEW:

B.D. & Mr.Itagaki a.k.a. Ita-cho

「トラックに引きずられすぎると、どんどんラップがズレていくし、音数が少ない分、言葉がすごい目立つから、言葉に“重さ”がないと合わなかったりする。イタガキさんのトラックでラップしてて、『難しくない?』って言われるときとかあるんですけど、自分は感覚的にやってて。イタガキさんのトラックはラップが映えるし面白いな、と思ってるんですよね」 -- B.D.

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 両者のファンにとっては“待望”の一枚だろう。過去にも度々共作曲を発表してきたB.D.とMr.Itagaki a.k.a. Ita-choによる共作「BORDER」が完成した。本作は、一般的なCD作品のような流通/配信はされず、ストリート・ブランド:BackChannelとのコラボで、キャップ/タオルが同梱されたスペシャル・ボックス仕様となっている。
 
 故に、通常のCD作品と比べると価格が高めではあるのだが、彼らの作品を長年チェックしていた人や、SEXORCISTスタイルの“真っ黒”な音楽性を好むリスナーにとってはマストな一枚だ。B.D.のラップとMr.Itagakiのトラックの相性の良さは、これまで発表されてきた楽曲たちからも明らかだし、作品全体をふたりでまとめ上げた今作では、更に高い次元で両者のケミストリーが生まれている。両者同席では本サイト初となる今回のインタビューからも、彼らが作品にかける拘りと信念の確かさが伝わると思う。
 
 
■ふたりの付き合いはいつ頃から始まっているんですか?
B.D.「僕がイタガキさんと話すようになったのは、イタガキさんが宇田川町でレコ屋(BAMBU TRADER)をやってた00年代初頭ぐらいで」
Mr.Itagaki a.k.a. Ita-cho「俺が店を始めたのは、2000年からかな」
B.D.「俺は既にGROW AROUNDで働いてたし、ニトロ周りに自分がお世話になってたから、そこの繋がりで面識が出来て。イタガキさんのお店には、自分が好きなモノも多かったから、よく見に行っては色んな話を聞かせてもらってたって感じなんですよね」
 
■ふたりの共作となる「BORDER」は、BackChannelとのタッグで制作されたスペシャル・ボックス仕様ですね。
B.D.「ふたりの共通の知り合いのブランドがBACK CHANNELだったというのがまず最初にあって。昔から見てもらってるし、音楽と絡めてミックスCD+タオルのボックス企画とかは、イタガキさんが以前やってたのを知ってたんですよね。こっちの動きも理解してくれた上でいろいろ出来るブランドとなると、BackChannelなんじゃないかな、って。元々、『BORDER』のアルバムの話が進んでたんだけど、普通に出しても面白くないから、BackChannelと絡めてやってみよう、と」
 
■限定生産という形態ですし、一般的なCDアルバムとは流通経路も異なりますよね。
B.D.「レコード屋とかでも、洋服を扱ってるところには卸してますね」
Mr.Itagaki「普通のCDとなると、最近の傾向としては、繋がりがあったら(店頭に)積んでくれるけど、(売れ残りが)返ってくる、みたいな感じで。あと、アーティストがやりたい本意の部分は無視して、『取り敢えずこういうの出さないと売れないんじゃないですか?』的な空気が、ある時期から出て来たと思う。そうなると、やりたいことを理解してくれてるBackChannelみたいな人たちとやった方がいい。今、普通にCD出したとしても、全国のCD屋にキレイに行き渡らないと思うし、それだったら独自の流通ルートを持ってて、少なくても全国のショップに確実に並ぶことを考えたら、こういうやり方の方が健全じゃないかな、って」
 
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■付属するキャップ/タオルのデザインなどのコンセプトは、ふたりの意見が反映されているんですか?
Mr.Itagaki「アイテムのデザインについては全部B.D.に任せてて。俺は音の方を全部、責任持ってやる、という役割分担。ヴィジュアルは、ヴィジュアルが立ってる人間が前に出てイジった方がいいし」
B.D.「前から自分のアートワークをやってくれてるKANTOにデザインしてもらいました。ボックスには地図がプリントされてて、ロゴがコンパスになっている。横に書かれてる記号は『陸・海・空・風』を表わしていて、その下に点字で“BORDER”と書かれてる。点字の横には、俺とKANTOが一緒に何かをやるときにいつも使っているロゴが入ってます。で、タオルが航空券のデザインになってたり。『BORDER』は“境界線”って意味だけど、今回のアルバムを作っているときに、イタガキさんに2冊の本を教えてもらったんです。一冊は『BORDER』(原作・狩撫麻礼/作画・たなか亜希夫)っていうマンガで、もう一冊が『権力(パワー)に翻弄されないための48の法則』(著・ロバート・グリーン/ユースト・エルファーズ)っていう本。この2冊を読んだら、アルバムのコンセプトや考え方的に重なる部分が多かったんです」
Mr.Itagaki「“違和感”とは付き合わなくていいかな、ということは俺が常に思っていることで、元からそういう気持ちはあったけど、改めて『それでいいんだ』って確認できたきっかけが、『BORDER』っていうマンガだった。要は、『アチラ側とコチラ側の“境界線”を引く』ってことなんだけど、コチラ側の人間が自分のことを愛してくれてるんだったら、コチラ側の人間のために存在していればいいし、アチラ側のことはどうでもいいでしょ、っていう。アチラ側の音楽を聴いても共感しないだろうし、アチラ側もこっちの音楽を聴きもしないだろうし、っていうぐらい極端な考えを提示してもいいんじゃないか?って。誰かをディスるというより、『お前らそっち側じゃん。だから最初から気にしてないから』っていう。『権力(パワー)に翻弄されないための48の法則』は、DJ PREMIERの腕のタトゥーにも(本からの言葉が)彫られてたり、50 CENTとかラッパーがリリックにしていることも多い本。要は、極端にアメリカっぽい処世術みたいな内容で。素朴な内容から日本人のメンタルでは理解し難いドギツイことも書いてあるんだけど、極論だけど本で書かれていることを徹底して実践すれば迷わないというか。愛や恋じゃなくて、現実のエグい部分を表現するというのは、HIP HOPのいちファクターとしてあると思ってるし、自分もそういうメンタルでやってきてるから、こういうテーマでラップしたら面白いんじゃないかな?って思ってB.D.に薦めたんだ。それらを読んだ上でB.D.が反応して書き出してきたモノが、今回の作品になっている。まあ、B.D.みたいな子持ちの人に薦めるような本じゃないんだけどね(笑)」
B.D.「でも、改めて思い出す部分も多かったし、今の自分に当てはまる部分もすごいあった。『やっぱこうじゃなきゃいけないよな』ってところもあるし」
 
■「枠を越える」とか“ボーダーレス”みたいなことは、アーティストがよく言いがちだと思いますけど、ふたりの場合は敢えて区別していく、というか。
B.D.「そうそう、『ハッキリ線を引こうよ』って」
Mr.Itagaki「音的な意味では、その“ボーダー”を越えてもその枠に沿ってもどっちでもいいんだけど、言葉的な意味ではもっと身近な意味で線引きをするというか。アチラ側の人たちに分からせるというか、『あ、俺、拒絶されてる?』っていう気持ちをちょっとでも持ってくれたら『ざまあみろ』って感じだし、コチラ側の人たちには『良い言葉がいっぱい詰まってますね』『確かに俺、こういう考えをしてた時期、あるよな』みたいなノリで、漠然と思ってることを再確認してもらいたい。だから、『飛び越える』意味での“ボーダー”と、『区別する』意味での“ボーダー”と、二重の意味がある」
 

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