INTERVIEW:

SKY-HI(前編)

■今はベタにメッセージを言い過ぎな作品も多いけど、根本の主題を言わないからこそ表現、言わないからこそメッセージって部分が、本来のエンターテインメントだよね。それと同じ構成にしたかったと。アルバムの構成として、非常に無常観的だったり、ペシミスティックな部分から、最終的に肯定に繋がっていく流れもドラマティックだよね。
「そのために時系列を作っていきました。“フリージア〜Prologue〜”でアルバムの伏線が全部張ってあるのは、映画で言えば、オープニングで全体を俯瞰させるような見せ方ですよね。この中でシニカルに『愛の無い時代だ』ってことを語って。そして“Ms.Liberty”“スマイルドロップ”“Count Down”と、喪失や欠落、『届かないこと』を歌ってるんですが、その集約として、喪失の究極として“LUCE”という“死”に辿り着く。そして、そういう喪失から人はどこに向かうのかと言ったら、多分、怒りやフラストレーションだと思うんですよね。それが“AS A SUGER”や“F-3”。そして、そこから“Young, Gifted and Yellow”というノスタルジーに繋がっていって」
 

■ここにノスタルジーを挟んだのは?
「“朝が来るまで”“Seaside Bound”は、喪失する以前の、出会った頃の話だから、これまでの世界観と時間が変化してるんですよね。そのために、過去と今を対比させるノスタルジーを挟むことが必要で。そして、『自分にとって大切な存在が、一秒でも幸せっていう瞬間を作るために、人は生きてるんじゃないか』ってことを表現する“アイリスライト”“カミツレベルベット”で、『Everything’s gonna be alright』という肯定のメッセージを表現し、その先に“フリージア〜Epilogue〜”があるんですけど……」
 
■“フリージア〜Epilogue〜”は、“フリージア〜Prologue〜”とリリックを敢えて重複させてる部分があるよね。だけど、その受け取り方が、アルバムの入口と出口でまったく変わっている。
「そうですね。同じ『愛の無い時代』といっても、いろんな曲を経た後の『愛の無い時代』は、そこに対して諦めるんじゃなくて、そんな時代だからこそ、自分の足で立って、愛を探して歩いていくっていうメッセージになってて」


 
■だから、時間軸の変化による成長譚にもなってるんだよね。でも、その構成はすぐには分からないし、今の説明でも多分足りないぐらい、複雑な作品だとも思うんだけど。
「でも、それぐらいの作品にしていいと思ったんです。そう思った要因のひとつは、“F-3”を作ったときに謎解きをリスナーがリスナー同士でやってくれたこと。USだとgenius.comがあるから、ダブル/トリプル・ミーニングを面白がることが出来ると思うんですけど、日本だとそれをやり過ぎると伝わらないんじゃない?って、諦めに近いものを感じてたんですよね。でも、“F-3”で多重的に意味をそこに込めて、『例えば<アウトとセイフ>という歌詞は、<セーフ>じゃなくて<セイフ>にしたことに意味があるんだよ』ってTwitterで軽く風を起こしたら、そこからみんなが深読みを始めてくれた。それで、意味合いを進化させることとエンターテインは反比例するものじゃないし、それは日本でも可能だってことを確信できたんですよ。それが大きな要因のひとつ。もうひとつは、そういった構成の複雑さを無視して聴かれたとしても、『いいね!』って思ってもらえるだけの音楽ヂカラ/音楽的強度がこのアルバムにはあるっていう確証があるからですね」
 
■複雑さという意味性は評価軸として意図しているけど、それ以前の問題として、純粋に「音楽的な強度」が、作品のクオリティを担保していると。
「そうですね。僕は立ち位置的に偏見を持たれやすいタイプだし、ここまでアルバムを考えて作ってるって思われない偏見も、ぶっちゃけ感じてるんですけど」
 
■便宜上アイドルと表現するけど、「AAAというアイドル・グループの日高のラップ・アルバム」という捉え方をすれば、「アイドルだからそんなに難しいことは出来ないでしょ」っていう偏見を持つ人も、いまだにいると思う。
「だから、インタビューとかで改めてこういう説明をしてもいいと思うし、その説明がアルバムの面白さと気付きの増幅に繋がると思うから、今回は積極的にそういう部分もインタビューで話していこうって。それに、僕のライヴのファンって、昔はAAAのファンかHIP HOPヘッズのどっちかだったりしたんですけど」
 
■別の属性から集まってきたファンが多かったと。
「だけど、それが今は『SKY-HIのファン』って存在がフロアを埋め尽くしてくれてるし、良い意味で黄色い歓声が減ったんですよね」
 
■もちろん、AAAからの流れのファンも多いとは思うけど、そういう人も「AAAの日高」じゃなくて、SKY-HIを観に来るわけだね。
「そう、みんなSKY-HIの曲を待ち望んで、単純にSKY-HIのメッセージや楽曲を楽しみにしてくれる人が増えたなって。だから、そういう人に向けて作品を作ることに、ためらいはなかったですね。そういう部分は、今回のアルバムで“自由”がひとつのテーマになってることにも繋がりますね」
 
■というと?
「僕は、昔から(AAAの日高という属性の)制約がある中でMCバトルに出たり、現場のライヴに出てたんですよね。そういう制約の中でもラップを出来ることに、自由を感じていたんですよ。だけど、周りからはやっぱり不自由そうに見られてた部分はあると思うし、確かに他の人に比べれば不自由な部分もあって。そういうアンビバレントな感情はラッパーとして感じてたことだし、だからラップとして書かなくちゃと思ったし、書きたかった。そういう風に、愛とか自由は自分にとって大きなテーマだし、それを追いかけたアルバムになったと思いますね」
 

 
後編(「カタルシス」全曲解説)につづく。
 

TOUR INFO
SKY-HI TOUR 2016 〜Ms. Libertyを探せ

2月14日(日) @金沢市文化ホール
2月18日(木)@福岡国際会議場メインホール
2月19日(金)@広島JMSアステールプラザ 大ホール
2月28日(日)@仙台電力ホール
3月5日(土)@愛知県芸術劇場 大ホール
3月11日(金)@大阪オリックス劇場
3月13日(日)@TOKYO DOME CITY HALL
 
 

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