INTERVIEW:

SKY-HI(前編)

■アルバムからは、「死の匂い」がすごく濃厚に感じられたし、最初はちょっと怖かったんだよね。「SKY-HIは死ぬんじゃないか」って。
「その通り、っていうと死んじゃうみたいだけど(笑)、それはあると思いますね」
 
■歌詞として希死観念が強いっていうわけじゃないんだけど、端々に死の匂いを感じる部分がある。先ほどの話を訊いて、そこにはその「地獄の9ヶ月」が反映してるのかなって。やはり9ヶ月の間、同じ曲を作り直すっていうのは、ずっと自己表現を自己否定し続けるってことだと思うから、それは感覚としては自死にも近いよね。
「鏡に向かって『お前は誰だ』って言い続けると頭がおかしくなるっていうじゃないですか」
 
■アイデンティティが崩壊するらしいね。SKY-HI君のその9ヶ月の行為は、それに近いアプローチだと思う。
「その9ヶ月間には気づいてなかったんだけど、“カミツレベルベット”が出来たときに『あ、“スマイルドロップ”を作ってた9ヶ月って、ずっと死にたいって思ってたんだな』って」
 

 
■その9ヶ月の末に再生したということは、それまでの自分を殺したってことにも通じるよね。
「再生できたからよかったけど、どれだけやっても納得のいく曲が書けなかったら、歌うたいとして、作詞家として死んでたってことですからね。しかも、理想に到達できるっていう保証はどこにもなかったわけだから……」
 
■ゾッとするね。書けてよかったし、「Everything’s gonna be alright」と言えてよかった(笑)。
「『死にたい』って思う気持ちって、多かれ少なかれみんな持っていると思うんだけど、それは自分の中にもあったんだなって。でも、どこで植え付けられた倫理観か分からないけど、『“死にたい”って思っちゃいけない』っていう観念はあるじゃないですか。しかも、そういう悩みに対して、『お前の死にたいって気持ちより、もっと深い悩みの末に死にたいって思う人もいるよ』っていう言い方もされたり。でも、『死にたい』って気持ちを、人と比べて大きいか小さいかを計るなんて実は無意味だし、その気持ち自体に違いはないから、その人の辛さや痛みを計量したり、比較したり、否定するのはすごく乱暴なことだと思う」
 
■自分のであっても、他人のであっても、その感情自体をそのまましっかりと受け止めるということだね。
「そうですね。何回救われても、自分自身、この先も『死にたい』って思うことはまたあるだろうし、何回も繰り返す筈で。生きててイヤだなって思うことは、これからもたくさんあると思う。だから、そういう事柄に対する思いも自分の作品として形にしていこうと思って、今回は書いてみたんです」
 
■そういう気持ちは、アルバムのオープニングとラストを飾る“フリージア”に強く表われているようにも思えたんだけど。
「そうですね。そうやって『死にたい』と思わされてしまうような今を『愛の無い時代』と呼ぶなら、それでも生きてる理由や『生きててよかった』と思える言葉やメッセージを、アルバム通して今回は歌おうと思ったんですよね。そういう、浄化的な意味での『カタルシス』。一方で、生死の話も根本にあるので、死を語るってことで『語る死す』と」
 
■そこからダブル・ミーニングは始まってるんだ。でも、その“カタルシス”は先程も話にあったように、自己救済的、自己浄化的な部分から発生しているんだね。
「もちろんそうですね。自分の感じたカタルシスから発展して、その感情をみんなに届けたいなって」
 

 
■個人的に感じたのは、今回のアルバムは自己肯定が中心のモチーフにあると思う — それは翻ると他者肯定にも繋がるんだけど、それは自らを自らで否定させられてしまうような価値観から離れて、自分で価値を創造しなくちゃいけないということだと思うし、それはすごく大変で面倒なことだよね。
「うん。僕の場合は、その期間が自己否定を続けた9ヶ月だったんですよ。その期間の制作を通して、自分の倫理観や道徳、常識って部分でさえも、もう一回考え直す機会になったんですよね」
 
■今作が「TRICKSTER」と繋がってる部分があるとしたら、そういったアナーキーさなのかなって。「TRICKSTER」はタイトル通り、既存価値を破壊したり紊乱するキャラクターだったわけだけど、今回も、今の話のように常識を疑うようなテーマが多いし、「最終的に自分を自分たらしめるのは、あなたしか出来ない」ってことを言い続けてるアルバムだよね。その意味でも、共通してるのは「価値観を自分でどう捉えるか」ってことだし、それはアナーキーとも言える発想で。それは“破壊的”という意味でのアナーキーさではなく、「自分が自身を信じる」という意味でのアナーキーさなんだけど。
「アルバムを聴き終わった後、ライヴを観終わった後に、リスナーには自分の人生が待ってるわけじゃないですか。僕の場合は、リスナーを音源やライヴに陶酔させて現実逃避させるんじゃなくて、『あのライヴを見たから/あのアルバムを聴いたからこの現実/明日の問題と戦える』っていうようなモノにしたいんです。僕の作品の強さを、リスナーその人の強さに変えて、自己肯定する材料にしてほしい。特に、ライヴ『Ride my Limo』だったり、最近の自分の動きはそういう気持ちがあります。『音楽を聴いてる/ライヴを観てる瞬間は現実を忘れられる』っていう風に現実逃避させるためだけに僕に依存させるのは、少し可哀想にも危険にも感じるから、そうではなくて僕がいること/表現することで、みんなが自身を自己肯定できるっていう風にしたいし、それが今の僕のライヴだったり、僕とリスナーの関係性でありたいんです」
 
■その意味でも、自尊自立のアルバムだと思うんだけど、でも、「自分で判断しなさい」「自分を愛しなさい」みたいな、そういったことをベタに表現しないよね。
「正にそれは意識しましたね。そういう言葉は『強いメッセージ』になると思うけど、それをアルバム一枚ずっと言われたら……」
 
■脂っこいね。
「いくら美味しい肉でも、カットしないでまるごと出されたら食べられないじゃないですか。だから、強烈なメッセージが根本にしっかりあるからこそ、ちゃんと調理して、エンターテインメントにしたかったんです。そうやってエンターテインメントとして、映画とかマンガに対抗できる作品を作らないと、それぐらい強烈なメッセージは伝わらないなって」
 
 

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