INTERVIEW:

KUTS DA COYOTE

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 “ラブホなうfeat. T.O.P. (THUGMINATI)”が大きな注目を集め、同曲が収録された1stアルバム「ESCAPE TO PARADISE」もストリートを中心に話題を呼んだKUTS DA COYOTE。彼の2年半振りとなるニュー・アルバム「GLOW IN THE DARK」は、Y’Sや十影も所属するFOREFRONT RECORDSに移籍してのリリースということもあり、新たなKUTS DA COYOTE像を提示する作品と言っていいだろう。軽やかな部分も感じさせられた前作と比すると、夜の歌舞伎町を背景にし、暗闇の中で鈍い光を帯びて浮かび上がるKUTSの姿からも感じさせられるように、シンプルさやダウナーさが強い、ダークな色を帯びたサウンド性がまずは耳に残る。しかし、そこに載るKUTSのラップは、そういったダークな部分も現われるが、同時にファッションや女性といったポップなテーマも歌われ、そういったサウンドをKUTS流の「話芸」で彩っていく。そのバランス感が中毒性を呼ぶアルバムだ。
 
 
■前作から2年半というスパンでの新作ですが。
「時間的にはあっという間でしたね。でも、ライヴで自分の曲をもうやり飽きるほどやったんで、そろそろ次の作品を作ろうかなって思ってたときに、FOREFRONTから声をかけてもらって」
 
■レーベル移籍という環境の変化は影響しましたか?
「Y’Sや十影とは年齢も同じだし、センスや感覚も似てて、現場でも一緒になる場合が多かったから、そういった流れで事務所としても俺の感覚を分かってくれるので、すごく制作がしやすかったですね。だけど、俺が使ってたスタジオをY’Sに紹介したら、そこの使用スケジュールをY’Sにかなり押さえられちゃって、俺が使えなくなるっていう(笑)。だから、俺の方が制作に入ったのは早かったんだけど、結果、Y’Sの『SMALL ASIAN THE MIXTAPE』の方が先に出ちゃって(笑)」
 
■では、今作を作る上でのイメージは?
「前作でやってないこと、間逆なことがひとつのテーマでもありましたね。前作の“ラブホなう”がヒットしてくれたことで、それがコンプレックスになる部分もあったんですよ、正直。『あの曲しかない』と思われるのはイヤだし、他の部分も見せられるっていうのを今回は形にしたかった。その意味では、カウンター的にダークな部分が増えたってことがあるかもしれない。同じことをやりたくないっていうのは常に思ってるんで」
 
■確かに、前作はもう少し明るいトーンが基調としてあったけど、今回は全体的に“夜”のようなムードが強くて。
「前回はドライヴで聴いたり、南国に行きたくなるようなことを意識したんだけど、今回は逆ですね。リリックも夜書くことが多かったし、そのムードが反映されたというか。俺自身、福島の田舎で育ったんで、夜にやることがなかったんですよね。だから、こういう夜に聴けるようなアルバムがあったらよかったな、っていう気持ちも込めて、こういうトーンになりました。展開の少ない、じっくり聴けるような構成というか」
 
■某誌のレビューで、今作でテーマとなることが“ファッション”や“地方妻”だったりすることについて、「悪い意味ではなく、意識の高くない内容が中心なのが良い」って書いたんですよね。いわゆるメッセージ性だったり、良い発言のような「意識の高い」部分よりも、もっとフラットにAIR MAXが好きだから“AIR MAX95”を、タトゥーを入れてるから、“INK ART feat. Sophia”と、身近な話題を捻らずに、テーマと内容を直接的に結びつけて書くというのも、このアルバムのひとつのテーマなのかなって。
「カッコ良いことや小難しいことを言ってると、聴き手が勝手に意味を作ってくれるじゃないですか。だから、深そうな言葉を並べて、韻だけ踏んでいく方が実は簡単なんですよ。実際、小難しかったり、こねくり回したような作り方を、25〜6歳のときはやってて、そういう内容で『深い』とか言われたり、自分でもそういうモノを目指したりしてて。でも、そういう流れを変えたのがKREVAとかRHYMESTERみたいな、FGの流れだと思うんですね。彼らのような、『分かりやすいのにカッコ良い』って構成は相当難しいし、書く方としてはそういった方向性が自分のハードルになってますね」
 
■その意味でも、今回のアルバムは展開や構成としては、“話芸”として聴かせる部分が強いのかなって。且つ、こういう話芸な感じは、昔の日本語ラップの影響も感じたり。
「そうですね、日本語ラップめっちゃ聴いてたんで、その影響はあると思います。『これは何言ってるんだろう?』って表現も中にはあるとは思うんですけど、確かに基本的にはシンプルな部分はシンプルに書きましたね。自分の中で分かりやすいと思って書いても、相手には伝わらなかったりすると、もっと分かりやすく書かなきゃダメかって思うし、その結実が“POLO -ZOT on the WAVE REMIX-”みたいな曲だったり」
 
■今回のテーマはどのように立てたんですか?
「まず、『このテーマは誰も書いてないだろうな』とか『誰も使ってない言葉だから使おう』って部分が最初に来ますね。誰かと被る部分があったらそれを排除していくんで、その見極めで制作に時間がかかるって部分はあります。でも、焦ってないから、それが出来るまで、自分の納得がいくテーマが降りるまで、作らなくてもいいやって思ってますね」
Amebreak伊藤「世代的にはミックステープ世代だから、いっぱい曲作るってイメージがあるんだけど」
「そういうのは20代でやっちゃったんで」
 
■では、今焦らないのは?
「妻子持ちだし、昼間は普通に働いてるのも大きいと思いますね。だから、ラップは趣味の延長線上って部分があるので、焦る必要もないかなって。昔は『ラップでこのゲームを支配するぜ』とか思ってたけど、今は正直ないですね。それよりも、まずは自分の気に入ったこと、面白いことをやるっていう方に制作意欲が向いてます」
 
■ただ、“ラブホなう”的な、パブリック・イメージとしての「KUTS DA COYOTEっぽい曲」も求められる場合もあると思うんですが。
「“ラブホなう”的な内容を求める声もあるだろうし、ライヴでは求められるからそれはやりますね、当然。そこはケチる必要がないので。でも、その何番目のドジョウを狙わないのは、焦ってないっていうのが一番大きいかなって。売れたいっていうよりは、好きなことをやりたいし、っていう。“ラブホなう”はウケを狙った曲がたまたま当たったってだけだし、それだけじゃないって部分も出したいなって」
 
■とは言え、“地方妻”みたいな曲があるっていう(笑)。
「まあ、そういうのを求めてる人がいるだろうから、そこもサービスはしておこうかなって(笑)。俺はHIDE(X JAPAN)が好きなんですけど、彼が『ファンは置いていかない』ってことを言ってたんで、その言葉は意識してますね」
 

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