COLUMN:

対談:DABO & MACKA-CHIN

「歳をとると新しい経験がどんどん減っていって、新しいアプローチに対してネガティヴな要素や反応も増える。でも、それによって成長するってことも、歳を取ってるから分かるんだよね。だから、チャレンジしたもん勝ちっていうのはいまだに思うし、やらずにはいれなかったんだよね」 -- DABO

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 東京弐拾伍時としてのリリースや、DABO/KREVA/ANARCHYでの“I REP”、そして数々の客演と、その名前を聞く機会はコンスタントにあったものの、ソロのリリースとしては8年振りとなるEP「NANA」を昨年リリースしたDABO。
 
 ベース・サウンド:PART2STYLEのMaL、DJ/プロデューサーとして活動するJUZU a.k.a. MOOCHYと共に、ジャンル分け不能でありながらも、そのエネルギーの核にHIP HOPを感じさせるユニット:ZEN RYDAZを始動させたMACKA-CHIN。
 
 後述もするが、「NANA」は「DABO節」とも言えるアプローチを排した作品であり、ZEN RYDAZはメンバーのディスコグラフィ的にも、結果としての作品に関連性が見出しづらい(それが素晴らしいのだが)、あまりに独立した異形の作品であった。
 
 その意味では、パブリック・イメージとして求められる“得意技”を使わないことで、新たなアプローチを落とし込んだ作品を、DABOとMACKA-CHINのふたりが近いタイミングでリリースしたことに、非常に興味深いシンクロニシティを感じさせられた。
そしてまた一方で、YouTubeにアップされた“LIVE19”や、6月20日に開催される『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND LIVE 19』で、NITRO MICROPHONE UNDERGROUND(以下ニトロ)としても再始動を果たすふたり。
 
 確実に日本語ラップ・シーンに、日本の音楽シーンにニトロとして、そしてソロとしても爪痕を残してきたふたりは、何故「音楽を作り続ける」ことを止めないのか。そして、そのモチヴェーションとは一体何なのか。忌憚なき心の内を語っていただいた。
 
 

 
■まずDABOさんにお伺いしたいんですが、8年振りにソロとして「NANA」をリリースされたキッカケは?
DABO「まず、俺はいまレーベルにも所属してないから、出すも出さないも俺次第だったのがひとつ。それから、もう俺らってちょっと『面倒くさい枠』に入ってるじゃない?」
 
MACKA-CHIN「“枠”って?」
 
DABO「『一回ちゃんと売れたヴェテラン』って、ちょっと腫れ物みたいな、扱いの難しいゾーンに入っちゃうじゃん。いろんなレーベルのA&Rからも話はもらうんだけど、会社的には伸びしろがあって、スターダムに一気に入る可能性がある若手を優先するのは分かるから、どうしても話が上手く進まなくて。それで客演とか東京弐拾伍時、ミックスCD『DEEP COVER – mixed by DJ SAAT』みたいな外部プロジェクトはやってたんだけど、なかなかソロのリリースに辿り着けなかったんだよね。でも、そのままだといい加減、ソロ・リリースしないまま10年経ってしまうから、身銭を切ってEPを出すかってことで、バックDJのDJ SAATと組んで『NANA』の制作に入ったんだよね」
 
MACKA-CHIN「完全に自腹なの?」
 
DABO「だね」
 
 
■「NANA」はDABOさんのトレードマークや必殺技を使わずに、新たなDABOさんの武器で構築された作品だと感じましたが、そういった制作に向かった理由は?
DABO「妻になった女性と付き合い始めて、『もう無駄なものを省こう』っていう気持ちになってきたんだよね。気が付くとクラブで酒呑んでるみたいな、そういうモノはもうリセットして、これからも音楽に携わっていくなら自分はどうすべきなのかを見つめ直して、己を整理しようと思ったんだ」
 
MACKA-CHIN「それはどんな感じで?」
 
DABO「例えば『音楽を作る意味』とか。もう『日本一になりたい』っていう尺度とかモチヴェーションは、俺らの年代では終わってるじゃん。今、第一線のアーティストの居場所を奪い取って『一番になってやる』っていう気持ちはあんまないし、そのレースには興味が持てなくて。俺にしろニトロにしろ、何年間はトップを取ってた自負があるし、ちゃんと売れて、ちゃんと調子もこかせてもらった経験もあるから、そのゲームはもう楽しんだし、その椅子取りゲームは若い子が挑むからこそ美しい。それに、そういうゲームの中で求められてる理想のラッパー像に自分をハメて上手く演じてもきたから、それを降りたなら、そこでの姿とは違う角度でラップをしたいと思ったんだよね。それで、『今までの手癖や得意技をどれだけなくして作れるかな?』っていうのが『NANA』でのチャレンジだったんだ。だから、自分の名前も言わないし」
 
 
■「俺が如何に優れているか」というボースティングもしてませんね。
DABO「そういう慣れた技を使わずに、どこまで出来るかな?のチャレンジだったよね。もちろん手癖は手癖で楽しいから、今後の作品では『NANA』の方向性と手癖を同時に取り入れると思うんだけど、『NANA』やニトロで制作中の新作でも、新しい手法をどれだけ開拓できるかに注力してて」
 
 
■声やフロウという変えがたい身体的な特徴以外の、『みんながイメージできるDABO』を敢えて外して、それを超えた自分像を構築する、というか。
DABO「それに、これまで書いてきたような、儲かってて、クラブでブイブイ遊んで女にモテモテで、っていうリリックは、正直、リアルな今の自分には当てはまらないよ。今の俺は芸歴は長いけど、売れてる方だとは思わない。だから、『俺がナンバー・ワン』っていうのはまず嘘だと思ってるし、嘘はつきたくないんだ。もちろん『カッコ良い嘘』は若いときのラップではついてたけど、今はどんどん嘘が付けなくなって、正直にしかしたくなくなっていってるんだよね」
 
 
■それは、「無理しない」ということだと思いますが、無理しないのか、出来ないのか、無理することに興味がないのか、どれが近いですか?
DABO「全部だね。無理したらしんどいでしょ。まるっきり無理をしてないとは言わないし、何かしら演じるときはあるけど、それが少ないに越したことはないよね。だから、自分が気持ち良い方向で、気持ち良いやり方で、どれだけ音楽が出来るかっていうことを、今は模索してるね」
 
 
■勝ち逃げというか、栄光の記憶だけを残して音楽を辞めてしまう人もいるし、懐メロとして音楽シーンに残る人もいる。しかし、DABOさんのように新しい技を開発して、それが「今の評価」を受けるというのは、すごく怖いことだとも思うんですね。
DABO「メチャクチャ怖いよ(笑)。手癖だらけのラップをした方がリスナーは安心するし、『よ!待ってました、DABO氏の得意技!』ってなると思う。それが分かりながらも、新しいアプローチで『NANA』を作ったから、リリース前はホントに震えちゃったし、とんでもなく怖かった。歳をとると新しい経験がどんどん減っていって、新しいアプローチに対してネガティヴな要素や反応も増える。でも、それによって成長するってことも、歳を取ってるから分かるんだよね。だからチャレンジしたもん勝ちっていうのはいまだに思うし、やらずにはいれなかったんだよね」
 
 
■「NANA」の“POP-A-RAPPER”も、あのテーマをこれまでのDABO節で書くとしたら、自分を上げて対象を落とすという構成だったかと思います。ただ、今回はもっと批評的というか、自分の観点と立脚点を明確にして、対象への思いを書くという方向性が強いですね。そして、リリックの構造性を高くすることで、高踏的に相手を押さえつけるんじゃなくて、同じ土俵で対等な視点で戦ってるように感じる内容だったことがすごく興味深くて。
MACKA-CHIN「あの曲はリリシズム感じたよね、確かに」
 
DABO「なんというか『俺はこう思った』っていうことを歌詞にしただけなんだけどね。これで『昔売れてた人がなんか言ってるわ』って言う人がいるのも想像が付くし、それも当然だと思う。でも『フリースタイルばっかりじゃつまんなくない?』っていうヤツがいてもいいでしょ、っていう、言論の自由というか。ただ一方で、あの曲はジェラシーでもある。『いいよな、オメーラの時代は民放の番組とかSNSとかあってよ』『CDも盤作んなくて、宅録でここまで出来んだ、うらやまし~』みたいな(笑)。やっぱりそう思うのよ。ニトロがドンとブレイクしたときにもしSNSがあったら、YouTubeがあったら、って」
 
 
■歴史は確実に変わってたでしょうね。
MACKA-CHIN「MVをVHSでダビングして、いろんなとこに持ってかなくて済んだよね(笑)」
 
DABO「だから、ジェラシーの裏返しってことは認めてるし、『俺のほうが凄いぜ』っていう表現にならなかったのは、そういうことなのかな。俺は『フリースタイルダンジョン』とかでブレイクしてるラッパーには、ある部分ではやっぱり負けてると思うし、そこにジェラってる自分も認めてるし、その気持ちは曲にして整理したほうが健康的だと思ったんだよね。でも、俺が目指すべきはそこではないってことも、リリックにしておきたかった」
 
 
■だからこそ、即興では出来ない構造性を提示している、と。
MACKA-CHIN「ラップに対する認識の違いが根本的にあるんじゃないかな。今はラップがバトルの道具だったり、違う方向に重きを置かれてるような気がするけど、比喩表現とか韻の踏み方、フロウの作り方、組み立て方で構成される、総合的なアートとして育ってきてるからね。ラップがバトル・ツールなのか、アートなのかの違いというか」
 
DABO「バトルの人たちのバトル・スキルっていうのは確かに凄いし。バトルじゃないフリースタイルは俺もノリでするけど楽しいよ。でも、俺は考えて練ったリリックを形にしたいし、『あーでもね-こーでもね-』ってブラッシュ・アップしていく作業が好きなんだよね。そして、それによって出来た曲と、それを披露するライヴのクオリティが高いヤツがやっぱり一番だよね、ってことは声を大にして言っていきたい。その流れで言えば、トップは目指してないけど、三木道三とかKREVAみたいに、ヒット曲を持って“村”を超えるってことはいまだに夢を持ってるし、そのためにはやっぱり『カッコ良い曲』を作りたいんだよ。まだ特大ヒットは味わったことがないから、『そのご褒美はくれませんかね、神様』って(笑)」
 
 
■MACKA-CHINさんは「NANA」のアプローチについてはどう感じられましたか?
MACKA-CHIN「DABOがそういう行動をとるのは、想定内だったね。これはニトロの全員に言えることだけど、元々ハングリーだし、こういう作品を出すっていうのは、確かになって。まあ、なんだ……精子は溜まるじゃん(笑)」
 
DABO「だから出していこう!って(笑)」
 
MACKA-CHIN「俺もアウェイこそにチャンスがあると思うし、行動するときには、やっぱりそれを考えるよね。ニトロの他のメンバーのチャレンジも待ってるんだけどさ(笑)」
 

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