COLUMN:

BEAT SCIENTISTS 〜HIP HOPのおとづくり〜 feat. STUTS(前編)

■また、寺尾紗穂やCHIYORIなど、シンガーへの提供も展開されますね。そのように、歌モノのトラックも提供されますが、歌モノとHIP HOPトラックという峻別は、トラックの制作初期段階から分けていますか?
「分けてはいないですね。トラックの基礎の段階では、歌モノもHIP HOPトラックも変わらずに作って、組み上げていく段階で『コレは歌が載った方が映える』『コレはラップ・トラックだな』っていう風に分かれていくことがほとんどです。プラス、アーティストの声が乗ってから更に変えていくので、種になるトラックの段階では峻別していないことが多いです」
 
■その当時の使用機材は?
「YOUNG DRUNKERに提供したときはMPC1000とYAMAHAのAW2816っていうMTRでした」
 
■PCはいつ頃導入したんですか?
「大学1年の冬か、2年生になってすぐくらいです。最初はSteinberg Cubaseを入れてDAWベースで作ろうと思ったんですが、あまり自分の納得いくものが作れなくて。その後、ProToolsを導入してからは、トラックは MPC1000で作って、レコーディングでProToolsやCubaseを使う、という使い方でした。JJJとのレコーディングもそのシステムでやったり。そのときからJJJのラップは素晴らしくて、完全に抜きん出てたラップをしてたので、初めて録音したときは感動した記憶があります」
 
■JJJはその当時、トラックを作っていたんですか?
「作り始めてたと思います。 彼は当時、MPC500で制作してて」
 
■お互いに情報交換などはしていましたか?
「してました。『フィルターをこういう風にかけるとベースが唸るようになるよ』とか、『こうすると音の抜けが変わるよ』とか」
 
■当時、PC環境で納得のいくトラックが作れなかった理由は?
「完全に、MPCへの“慣れ”ですね。何度もMPCじゃない機材に挑戦したんですけど、やっぱりMPCじゃないとダメで、ずっとMPC1000を使ってましたね」
 
■音質的にもMPC独特の音色が良かった、という部分はありますか?
「音質的な部分も少しはありますが、それよりMPC1000のワーク・フローに慣れすぎてて、それじゃないと納得いくものが作れないって、自分で思い込んでた部分もありますね。今は制作環境が違うんですけど、2015〜6年ぐらいまではMPC1000で作ってました」
 
■ただ、高校生のときに買ったMPC1000を使い続けたわけではないですよね?
「叩きすぎて壊れてしまったので、一度買い換えてます」
 
■MPCの上位機種や別のパッド系コントローラーに移行しなかったのは?
「完全に、体の慣れですね(笑)。今はMPC RENAISSANCEを使ってるんですけど、MPCじゃないと満足することが出来ない体になってしまってたんだと思います(笑)」
 
■ハッハッハ。MPCを操ってたと思ってたら、逆に支配されてたという(笑)。
「悲しい話です(笑)」
 
■STUTS君は、ライヴでMPCをリアルタイムで叩いて演奏することも多いですね。そういったアプローチを初めたキッカケは?
「自分はラップをしなかったので、自分の提供したトラックがライヴで流れたり、バックDJとして自分のトラックを流すだけだと、自分の曲としてリスナーに認識されなくて。その部分にモヤモヤしていて、『どうしようかな』と思ってたときに、anticon. のJelや、日本だったらHIFANAさんがMPCを叩きながらライヴをしてるのを観て。それでMPCを使ったライヴを始めました」
 
■その意味でも、もっと自分の存在をアピールするための手段だった、と。
「自分のアイデンティティとして一番上位にあるのは、トラック・メイカー/プロデューサーという『曲を作る人』なんですよね。『自分の曲をいろんな人に聴いてもらいたい』という欲求があって、『現場レヴェルでそれをアピールするには』って考えたときに、MPCでパフォーマンスするという手段を取り入れたんです。だから、MPCを叩いて演奏はするけど、『それだけ』という風には捉えられたくないな、って」
 
■YouTubeにはKO-neyとMPCを叩き合ってる動画も上がってますね。
「KO-neyさんとは大学1年生の冬に渋谷FAMILYで繋がって、MPCを使ってるということもそうだったし、サンプリングでトラック・メイクしてるっていうことで仲良くなって情報交換もいろいろしたり。MPCを叩いて演奏するパフォーマンスするのを始めたのも、近い時期だったと思いますね」
 
■STUTS君も出場された『GOLDFINGER’S KITCHEN』のような大会があったように、MPCを演奏する人も少なくはないですが、MPCプレイヤーたちのコミュニティのようなモノはあるんですか?
「MPCプレイヤーの先輩や友達はいますが、コミュニティとしてはないかもしれません」
 
■STUTS君は特定のコミュニティに直接は所属しないけれども、様々なコミュニティと繋がっている感触はありますね。それは、これまでにリリースされた作品群からも感じるのですが、そういった動きに至る理由は?
「性格的な部分もあると思います。根本的には自由でいたいし、自分の好きなようにやりたいという気持ちが強いです。コミュニティに所属したくない、というわけではないんですが、ひとつの場所留まりたくはなくて、様々な世界と交わることが出来たら、と思っています」
 
 
後編につづく
 
 

To Page topTo Page top