COLUMN:

BEAT SCIENTISTS 〜HIP HOPのおとづくり〜 feat. STUTS(前編)

■では、自分でトラック・メイクを始めたのは?
「中3〜高1の間の春休みぐらいだったと思うんですけど、ラップを自分でやろうと思ったときに、ありモノのインストに自分のラップを載せるっていう発想がなくて、『トラックもオリジナルで作らないといけないんだろうな』って。それで、4トラックのMTRと数千円のドラム・マシーンを買って始めたんですけど、やっぱりそれじゃ上手くいかなくて。それで、ROLAND BOSS SP-303を更に買い、それでは軽くシーケンスが組めたんで、そこからトラック・メイクを始めたんですね。でも、SP-303はサンプリングしてもピッチやトーンを変えることが難しかったので、自分の思い通りの音が作れず、『もっとしっかりトラックを組むにはどうしたらいいのか?』と思ってたときに『blast Presents HIP HOP PRODUCERS 2004』(BLAST誌が出版していた、プロデューサー/DJ向けムック)を読んだら、そこにAKAI MPC1000の記事があって、これだったら自分の貯めてたお小遣いで買えそうだったんで、高1の夏休みに手に入れて」
 
■じゃあ、アナログ・シングルにインストが入ってることを知ってたら、トラック・メイカーにならずにラッパーになってたかもしれない、と(笑)。
「そうかもしれないですね(笑)でも、よく考えたらRIP SLYMEさんのシングルCDにはインストが入ってたから、インストがあることは知ってた筈なんですよ。でも、そこに自作したラップを載せるっていう発想がなかった。それだと自分の曲にならないと感じてたんだと思います」
 
■単なる替え歌的なことになってしまうと思ったのかもしれないし、その時点でも「自分で作ること」がSTUTS君の制作のひとつのテーマとしてあった、というか。
「多分、それに近いことを思ってたのかもしれないです」
 
■そのときから、制作はサンプリング中心ですか?
「そうですね。サンプリング以外の方法は知らなかったから、必然的にそうなりました。それで、レコード屋の店員さんからいろいろ情報を訊いたりして、そこで手に入れたのがDE LA SOULのサンプリングネタだけを集めたレコードだったんです」
 
■当時、STRICTLY BREAKS RECORDSのコンピなど、元ネタだけを集めたレコードも結構出てましたよね。
「そのレコードを買ってよかったのは、DE LA SOULが使うだけあって良いネタが入ってたこともあるんですけど、元ネタと、それを使った曲を比較して聴くことで、どういう風にサンプリングして組み立てていったのかが感覚的に分かったからなんですよね。それは、自分がトラックを作る上ですごく参考になったし、大きな意味がありました。それから、ソウルやジャズとか、ネタになりそうな音源も集めるようになって」
 
■時代的には、サウンドの方向性として打ち込みが強くなっていきましたが、STUTS君はよりサンプリングに傾倒していった、と。
「リスナーとしては、普通にNEPTUNESやTIMBALANDだったり、当時のメインストリームも聴いてたんですが、(前述の)『RAP SESSIONS』を聴いてからは90年代のHIP HOPやサンプリングに傾倒していって、自分が作るのもその方向性になりましたね」
 
■その当時は、どのようにトラックを作ってたんですか?
「その頃は、ネタを単音に切って、それに音階を付けて構成する方向性が多かったと思います。MPCを買ったのは、それがやりたかったっていうのもあったんで。その当時に自分で作った曲は……(と言いながらiPhoneを検索する)」
 
■凄い!今までのトラックが入ってるんだ。
「一応、記念に取ってあるんで(笑)。形にしたモノは入ってます。コレ(聴かせてくれた未発表曲)はSLUM VILLAGE“FAT CAT SONG”のネタにも使われたLARRY YOUNG’S FUEL “TURN OFF THE LIGHTS”をサンプリングしたトラックでしたね」
 
■かなりしっかりと形になっていますね。STUTS君のトラックは、Aメロ〜Bメロのような構造的な展開があるのが特徴だと思うんですが、その構成がこの初期のトラックにも垣間見れるのが、すごく興味深いです。
「それは、初期の頃からそうだったと思います。一番最初に作ったトラックも、4小節ごとに展開をつけていく構成にしていて」
 
■ただ、時代背景も含めて「RAP SESSIONS」に入ってるトラックは「気合いのワン・ループ」のようなシンプルなトラックも多いですね。そういった方向性は目指さなかったんですか?
「確かに、『飽きないワン・ループ』を作ろうとしていた時期もあったのですが、気付いたら展開を作ってしまっていて。作り方として、上ネタを色々乗っけていって後から引いていくパターンも多いので、どうしても展開が増えていく部分がありますね。それから、やっぱり大きいのはATCQやDE LA SOULに影響を受けてるということだと思います」
 
■なるほど。展開性については、僕は勝手にポップスの影響が強いのかな?と感じてたんですが、熱心なポップス・リスナーではなかったというし、トラックのカラフルさはポップスの影響によるものではなかったんですね。
「ポップスは小学校のときにちょっとだけ聴いてたぐらいで、中高生の頃はほとんど遮断してましたからね。確かに、ポップス・リスナーだったと思われがちかもしれませんが、HIP HOPばかり聴いていた完全なヘッズでした」
 

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