COLUMN:

『ラップスタア誕生!』座談会 feat. RYUZO/Kダブシャイン/伊藤雄介(Amebreak)

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 昨年5月〜12月に1stシーズン、そして今年の2月〜6月に2ndシーズンが放送された、AbemaTV制作による次世代のスター・ラッパーを発掘するオーディション番組『ラップスタア誕生!』。
 
 1stシーズンではDAIA、2ndシーズンではLEON a.k.a. 獅子が優勝し、それぞれのシーズンの幕を閉じたが、彼らに加えて様々な俊英が番組を通して登場し、それぞれのエントリーMCたちが形作る、勝ち負けだけでは判断しきれない“思い”が多くの視聴者の胸を打った。
 
 そういったドキュメント性やドラマ性を担保しているのは、この企画の発起人であり主宰者であるRYUZOが、第二次審査まで進んだラッパーたちの地元や生活の中心に足を運び、そこで直接彼らの話を訊くというパートに依る部分も大きいだろう。イケイケな若者もいれば、地元を代表するような不良やイジメ体験を語る者、複雑な家庭環境を語る者、HIP HOPを諦められない者、家庭とアートの両立に悩む者……詳らかになっていくそれぞれのバックグラウンドと生々しい言葉、そして、そういった人生を基に放たれるラップという、立体的な構成がこの番組の特徴でもあり、感情移入させる要因だろう。
 
 今回は、主宰者のRYUZOに加え、審査員長としてジャッジをするKダブシャイン、そして審査員の伊藤雄介(Amebreak)を迎え、この番組の魅力と、エントリーMCの募集期間中である次シーズンへの期待を語ってもらった。
 
 
■まず、『ラップスタア誕生!』プロジェクトが始まった経緯について教えて頂けますか?
RYUZO「(RYUZOが実行委員として関わった)『さんピンCAMP20』をやった2016年ぐらいの時期に、フリースタイル/MCバトルがすごく盛り上がってるのを見て、『“フリースタイルダンジョン”や“高校生RAP選手権”以外の入り口を作れないか?』『フリースタイルを入り口にHIP HOPを知った人にも、それだけではない、その次の段階が見えるような番組があればいいのにな』って思ったんですよね。それで、酔った勢いで藤田社長(AbemaTV/サイバーエージェント)にこの企画を話してみたら面白がってくれて。そこからこのプロジェクトが始まったんですよね」
 
 
■ある種、フリースタイル・ブームに対するカウンターというか。
RYUZO「これはディスではないということをまず言っておきたいんやけど、フリースタイルはフリースタイルで面白い。でも、そこで有名になったラッパーの音源がみんな面白いか?と言われればそうでもないし、『HIP HOPなのか?』と言われれば、全てがそうだとも言えない状況を感じていて。そういう認識があったんで、もっとしっかりと『HIP HOPであること』を提示できる企画をやりたかった。バトルのようなHIP HOPのゲーム性は面白いけど、そこでこぼれ落ちがちな歌詞の深さとかフッド/地元やHIP HOPの持つコミュニティ性のような、HIP HOPが持つ深さや強さを感じる要素を、全て見せられるような企画がやりたかったんですよね」

Kダブシャイン「俺も、実は『イカ天』(註:『三宅裕司のいかすバンド天国』。1989年に放送を開始したバンドのオーディション番組で、大きなブームとなった)のラップ版みたいな企画をやりたいって、いろんなところに話してたんだよね」
 
 
■オリジナル曲をライヴでアピールするオーディション方式ですね。
Kダブシャイン「だけど、時代の傾向なのか、みんな『フリースタイルでそれが出来ないか?』って話になってしまって。ただ、USの傾向を見てても、フリースタイルで名を上げたとしても、なかなかその後のキャリアが形成し辛い状況ってあったじゃない?」

伊藤「90年代のフリースタイルMCだとSUPERNATURALとかJUICEとか、バトルで強烈な印象を残した人で商業的に成功できなかった人は少なくないですね」

Kダブシャイン「そうそう。そこからシフト・チェンジしにくいっていう状況が少しあって。だから、フリースタイルじゃない方向性でやりたかったんだけど、求められたのはバトル/フリースタイルだったんだよね。そこで俺はちょっと諦めちゃってたんだけど、RYUZOがこの形で企画を立ち上げたのを知ったときは、『我が意を得たり』という感じで嬉しかった。だから、俺が審査員に選ばれてなかったら『素晴らしい番組が始まったのに、呼んでもらえなかったのは何故だろう……』って、これまでの人生を反省してたと思う(笑)」

伊藤「キングギドラの曲を引用した番組タイトルにしてるのに、っていう(笑)」

RYUZO「選ばんかったら、一番うるさい人を敵に回すとこだった(笑)」
 
 
■今、お話に出たように、審査はKダブシャイン/ANARCHY/HUNGER(GAGLE)/SEEDA/伊藤雄介の5人の審査員の投票/審査で決定されますが、その審査員の選択はどのように?
RYUZO「バランスは考えましたね。スキル重視のリスナーを唸らせられて、且つ不良も納得させられて、オーセンティックなHIP HOPリスナーも説得できる、っていう。そして、こっちゃんのようなHIP HOPにうるさいオッサンも、っていう(笑)。そういう風に、多くのHIP HOPリスナーを納得させることが出来る人選を考えたら、この面子になった。『もっと若くて、今のシーンの最前線で活躍しているラッパーも審査員に起用しては?』という話もあったんだけど、そういう人らにとっては、やっぱりこれから前線を狙うようなラッパーの審査は(立場的に)しづらいと思う。それよりも、既に一回“チャンピオン・ベルト”を巻いてるような人にやってもらった方が、説得力も確実に生まれると思ったんですよね」

伊藤「あと、世代の問題以前に、『ラッパーが同業者を審査する』ということ自体に抵抗があるラッパーもかなり多いと思うんですよね」

RYUZO「俺やったらイヤやもん(笑)」

伊藤「コッタさんはUSのヴェテラン・ラッパーが若手についてコメントしたり審査するノリを理解しているから、そんなに抵抗はなかったと思うけど、多くのラッパーは『他人を評価するなんておこがましい』という謙遜の気持ちがあったり、これからのラッパーたちの将来を左右しかねないジャッジを下すことに抵抗感があるアーティストも少なくないだろうな、というのはこれまでいろんなラッパーを取材してきて感じていたんですよね。だから、結果的にこのようなバランスの取れたビッグ・ネームたちが審査員を引き受けてくれたのは、嬉しい驚きでした」

Kダブシャイン「でも、“勝ち抜き”の審査だからね。そこはみんな、純粋に作品やパフォーマンスの善し悪しで判断してると思う。しかも、マイクを通してラッパー同士が戦うんじゃなくて、お客の方を向いたライヴ・パフォーマンスで判断が出来るっていうのは、審査のし甲斐があるよ」
 

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