COLUMN:

BEAT SCIENTISTS 〜HIP HOPのおとづくり〜 feat. DJ PMX(後編)

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前編はコチラ

■「LocoHAMA CRUISING mixed by DJ PMX」までの制作では、機材は実機を使われていましたね。
「そうですね。実機からヴァーチャル・シンセに完全に切り替わったのは『THE ORIGINAL』の制作から。そのタイミングで完全に変わって。その前にも一回ヴァーチャルに変えようと思ったんだけど、MacがまだintelのCPUを積んでいない時期だったんでレイテンシーがひどすぎて、弾いても反映が遅れすぎて使い物にならなかったから止めたんですよね。ただ、オジロの“Hey Girl”(02年)はSteinberg Cubaseで作ってるんですよ」

 
■当時のCubaseは、「SX1」「SL1」などの、現行のCubaseの最初期型ですね。
「新しモノ好きなんで(笑)。だけど、完全にヴァーチャルにするにはPCも周辺機器もまだ使用に耐えられなくて実機に戻ったんですけど、Macがintelを積んだらみんなヴァーチャル環境に移行したり、DJでもSerato Scratch Liveを使うようになって。それで、最初は半信半疑で使い始めたんだけど、全然使用に耐えられるようになってたからもう手放せなくなって、『THE ORIGINAL』の段階で完全にヴァーチャル環境に移行しましたね。もう、ひたすらヴァーチャル・シンセも買いまくって、当時出てたモノはほとんど手に入れたんじゃないかな(笑)。それで『THE ORIGINAL』を作って、それ以降もヴァーチャル環境で制作してたんですけど、『THE ORIGINAL II』(12年)では実機に戻したんですよね。単純に、『そっちの方が面白いかな?』『自分に刺激になるかな?』ってことだったんですけど、MoogのシンセやFender Rhodes、AccessのVirusっていうラック型のシンセ、Korgのシンセを買ったり」

■相当買ってますね。
「やっぱり、新しい何かが欲しいんですよね。それが刺激になるんで」

■プラグイン・シンセと実機の違いはありますか?
「聴感上はプラグインの方が“リアル”に聴こえたり、鳴りが良く聴こえることもあるんですよね。実機はやっぱり実機の音がして、それはそれで良いので、必要に応じてというか」

 
■5月にリリースされた「THE ORIGINAL III」での機材の変化はありましたか?
「DJ MUSTARD以降、ウェスト・コーストHIP HOPのトレンドが革新されたこともあるし、去年ぐらいからMacでもMUSTARDが使ってるFL STUDIO(DAW)がベータ版で使えるようになってるので、今回はそれを導入してみて。パッドも、コードが組みやすいnovation Launchpad ProっていうMIDIコントローラーを導入したことで、キーボードを使うのとは違う音楽的な発見があったり。そういう新しい機材を導入して、新しい方向性を見出した部分はありますね。それに、今のウェスト・コーストやTRAPはフィルターの使い方が面白いんですよね。そういう新しい方法論をどんどん試したい」

■新しい機材や制作アプローチが制作の刺激になる、と。
「流行ってるプラグインは大体買ってると思いますよ。今はreFX NEXUS2とLennarDigital Sylenth1で必要な音色は大体プリセットで探しきれちゃうし、シンセ系の欲しい音作りもそのふたつで出来ちゃうんですけど。ただ、そういう新しい機材を使ってみて、新しいから新鮮でどんどんのめり込んでいく、っていうのはありますね」

 
■それは音楽的な新しさもそうですか?
「でも、さっき話した通り、G・ファンクもいきなり夢中になったわけではないし、MUSTARDのビートも好きになるまではちょっと時間がかかりましたけどね。YG“BITCHES AIN’T SHIT feat. TYGA & NIPSEY HUSSLE”とか、ちょっとシンプルすぎるなって。でも、KID INK“SHOW ME feat. CHRIS BROWN”(14年)みたいにキャッチーな曲が出て、ダメ押しだったのはCHRIS BROWN & TYGA『FAN OF A FAN: THE ALBUM』(15年)。それで『コレはメッチャ良い、このスタイルで自分もやってみよう』って確信が持てたというか」

■PMXさんの感じる“ウェスト・コースト”と“ニュー・ウェスト”の共通点は何ですか?
「意外とないのかな。G・ファンクは生音ではないけど生音を再現する打ち込みの仕方や方向性だとしたら、ニュー・ウェストはもっとエレクトロに近い、完全に打ち込み寄りな構成だと思う。まず、ニュー・ウェストには“ベース”というものがほとんどない」

■いわゆる“ベース・ライン”はあまりないですね。
「ドーンと響く“低音”に音階がついてるっていう感じですよね。音のミックスの仕方も全然違って、キックがとにかくデカいし、スネアやハットにもフィルターがかかってて、音像としてG・ファンクとは全然別モノ。ただ、そういったビートを使って90年代の曲をカヴァーするとめっちゃカッコ良いんですよ。今回、“今夜はブギー・バック”をニュー・ウェストの方向性でカヴァーしたのもそれで。“今夜はブギー・バック”は単純に良い曲だと思うし、昔からカヴァーしたかった曲で、その話は前からHI-Dにもしてて。ただ、原曲もG・ファンクっぽい感触があるから、これまでの方向性でカヴァーすると寄り過ぎちゃうと思って、保留にしてたんですよね。でも、ニュー・ウェスト的な感触でカヴァーすれば新しいアプローチが出来ると思ったんで、今回は方向性的にもタイミング的にもバッチリでした」

■「smooth rap」ではなくて「nice vocal」ヴァージョンのカヴァーというのも興味深くて。
「HI-Dをメインに置いて、Boseの役はGIPPERっていうイメージは元々あったんだけど、ANIをどうしようかと思ったときに、新潟のラッパー:cak73が頑張ってるんで、フックアップも含めて起用して」

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