COLUMN:

追悼:DJ KENSAW — 2007年のインタビューを公開

djkensaw3
 DJ KENSAWと言えば、早い段階から西海岸やサウスのアーティストたちに注目し、そこから独自の“ドープネス”を抽出する職人としても知られているはずだ。その点については、「20代の頃に、梅田の東通りの『LPコーナー』って店にレコード買いに行ってて、名物のおっちゃんと親しくさせてもらって、東も西も分け隔てなく聴かせてくれた。N.W.Aが出たときもいち早く聴いてたし、TOO SHORTに出会ったのが衝撃的やったな。けど、当時は大阪で買うのは難しくて、横浜のレコ屋に電話して探したりしてた。正直、周りの人にどんなイメージを持たれてるかは分からんのやけど、俺が西海岸のHIP HOPもかけるって知ってる人は、俺のことを深く知ってくれてるんやないかな」と、語ってくれた。

「西海岸モノで作った2本組ミックステープは自信作やった、THA DOGG POUNDの1stも、アレで少しは流行ったんかな。当時、評価低かったし……。これら自主製作のミックスCD以外で、オフィシャルのミックスCDでは俺にいつも良くしてくれてる二木(※音楽ライター、二木崇氏)の紹介やったけど、また機会があればやってみたい。俺もそないにカッコ悪いモンは作ってないはずやで(笑)」
 
 ここで私事を持ち出して恐縮だが、筆者にとっても、件の2本組(「“G” VOL.1/VOL.2」)は特別な思い入れのある作品だった。そこで、筆者が不躾にも「あれは今だからこそ、時代が追いついて再評価されるべき作品だと思います」と伝えると、ニヤリと笑った彼からの「けど、早くないと気持ち良くないやろ?」との返答に思わず沈黙……。「間違いない」とは、こんなケースにこそ使われるべき言葉だ。

 そして、話は東海岸のプロデューサーへと移る。

「45 KINGとか憧れやし、TEDDY RILEYも好きやな。SPOONIE Gやと“THE GODFATHER”もええけど、俺的には“I’M ALL SHOOK UP”」

 90年代中期以降については、「CELLA DWELLASやCHANNEL LIVEも渋かった。“SEX FOR THE SPORT”とか“REPROGRAM”とか、最高やな。CRAIG MACKも好きやった。その後のLYRICIST LOUNGE全盛期の頃も最高やった(当時はまだイヴェント名だった。ダニーの主催で、何度か遊びに行った)。TALIB KWELIは凄い才能やと思うけど、あのインテリ感っていうのはA TRIBE CALLED QUESTとは違って、KANYE WESTやCOMMONの高尚な感じともまた違う。やっぱりTALIBを輩出したRAWKUSってレーベルは、超一流やと思うな」。

 そしてクラブ・プレイ、作品からも仄かに漂う彼一流の“ハードボイルド”とでも言うべき水商売の匂いについては、「ディスコにお姉ちゃんがいっぱい来て、そういう人らを踊らさなあかんって時代からやってるから。けど、クラブが出来て、0時からオープンして朝の5時まで営業するってスタイルが、当時は衝撃的やったな。結局、音楽って一定の速度で進化するけど、循環してると思うから、ディスコも当然、オレが影響を受けたモノとして外されへん」。

 原点と共に、常にフレッシュな音を求める彼の姿勢は、当時から変わらない。曰く、「トライブみたいにHIP HOPとハウス、同時進行でやってるのが好きやったな。アレは『ハウスですよ』ていうよりは、単純に『黒いやろ?』て提示してるだけやったと思うねん。曲で言うと、JUNGLE BROTHERSの“I’LL HOUSE YOU”とか、当時、TODD TERRYがやってたヒップ・ハウスな感じもええんやけど、俺的にはトライブの“LUCK OF LUCIEN”が最高やったな。ニューヨークで二枚買って、一枚はDJ YOKUにあげた。『かけてくれや』って、泣く泣く渡したんを覚えてる(渋過ぎるからハウスの現場でもかけてほしかったし)」。
 
 
 彼はジャンルの枠のみならず、巷で話題に上ることも多い『あの機材』についても寛容なスタンスだ。

「俺は持ってへんけど、SCRATCH LIVEも『万が一大事なレコードが割れたらどうしよ』って理由で使ってる人もおるやろうし、否定しないどころか、優れたモノやと思うな。DJ A.K.から聞いたけど、盤(コントロール・ヴァイナル)が劣化するってのも面白い。ハイテクやのに、そこはアナログやってのもね。俺も大量にCD-Rが増えて大変やし、あったら便利やとは思うよ」

 そして、クラブDJとしての彼は、オーディエンスに対しても門戸を広く解放している。

「皆にもっと俺のDJを聴いてほしいけど、お客さんには強制やなく、純粋に音を楽しんでもらいたい。俺らのイヴェントに来てもらって『HIP HOPは面白い』と思わせたい。そこから取り返しのつかない10年間を、俺らが与えたい」

 筆者の知る限り、ヴェテランDJでここまでの“熱量”を保ち続けているアクトはそう多くはない。
 
 

To Page topTo Page top