COLUMN:

2015年国産HIP HOP振り返り座談会(前編)

談:DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!/Mr. BEATS a.k.a. DJ CELORY/SEX山口/MC正社員(戦極MC BATTLE)/高木“JET”晋一郎/伊藤雄介(Amebreak)
 
 

【2015年の日本語ラップ雑感】

 
伊藤「今年も年末座談会にお集まり頂き、ありがとうございます。皆さんから頂く個人チャートですが、今年はアルバムや曲という作品に加え、印象深かった出来事や事象なども勘案して組み込んだ『個人的トップ10』を作成して頂きました。その意味では“トピック”を挙げて頂いたということになると思います。そして、その参加者の挙げたチャートの中から、重複していたり共通したトピック/事象を、やや強引ですが抜き出してみたので、まずは皆さんとそのキーワード/トピックについてお話できればと思います。その前に、大掴みなところで2015年の雑感から話していければと思うんですが、個人的には、大きなムーヴメントやトレンドという部分では、寂しい一年だったと思いました」

DJ NOBU「そうだね。俺もそういう印象」

DJ CELORY「全体的な流れとして、2014年の延長の上にあるって印象だよね。特別大きな何かが2015年に起こったというよりは、2014年やそれ以前から起こってることが継続したり、増幅した感じというか」

SEX山口「ただ、1月1日に『梔子』をリリースしたという部分も含めて、やっぱり今年のキーパーソンとしてパッと思いつくのはKOHHかなって」

伊藤「なるほど。では、今も話題に上ったKOHHについてまず話していければと思います」
 
 

【若きトップ・ランナーとしてシーンを変革するKOHH】

 

 
伊藤「セク山さんが仰ったように、今年の最重要人物と言えば、昨年同様、やはりKOHHが挙げられると思います。2014年の『MONOCHROME』で、他の若手とは一段違う評価や存在感を確立させて、そこで掴んだ勢いで1月に『梔子』、6月に『YELLOW T△PE 3』、10月に『DIRT』と、リリースだけでも本当に活発で、攻めた一年だったなと。しかも、DJ RYOWのミックスCD『THE MIX TAPE VOLUME #2 -RAP CITY 2015-』では、アトランタ・トラップの重要人物でKOHH自身も影響を受けたと公言しているOG MACOと一緒に“BUCHIAGARI feat. KOHH & OG MACO”を制作していて。また、2015年の正月に、KEITH APE“It G Ma feat. JayAllDay, Loota, Okasian & Kohh”にも参加して、そこで海外からの注目度も大きく上げましたね」

高木「YouTubeのアクセス数が桁違いなのは、海外からのアクセスが多いということもあるでしょうね」

DJ NOBU「注目されるべくして注目されるようなアプローチをしてるよね」

正社員「2014年の座談会で、バトルにもKOHHフォロワーみたいな人が増えてるって話したんですけど、今年はラップだけじゃなくて、ファッション/立ち振舞/タトゥーまで真似してる子がいたり」

伊藤「タトゥーという引き返せない部分まで(笑)」

DJ NOBU「地方に行っても『KOHHのフォロワーだろうな』って子をよく見かけた」

伊藤「その意味でも、日本のHIP HOPの流れを変えている存在だと思うし、日本のHIP HOP史の中で見ても、有数の“ゲーム・チェンジャー”になったと思いますね」

DJ NOBU「SCARS以来じゃない?ここまで影響が強いのって」

伊藤「もっと影響力が大きいと思うんですよね。それこそ90年代中盤に、Zeebra/RINO/TWIGY/Mummy-Dみたいなカリスマたちが与えていた影響力の大きさに匹敵するとさえ、僕は思っています。スタイルの更新という意味では、ここまでの影響力を感じさせるラッパーは、ここ10年登場してきてなかったんじゃないかなって」

DJ NOBU「『DIRT』は単純にクラブでかけやすかったのもあるし、DJによってかける曲が違ってたのも面白かったね。俺は“Dirt Boys feat. Dutch Montana & Loota”とかよくかけたけど、人によっては全然違う曲プレイするから、50 CENTの1stアルバムが出たときを思い出した。あのアルバムも、シングル・カットとか関係なくいろんな曲がクラブでかかってたし」

DJ CELORY「確かに、人によって推す曲が違ったかもね」

高木「その意味でも、『DIRT』はトラップがサウンドの前提にありながらも、ヴァラエティに富んだ作品だったということですね」

SEX山口「トラップにチャレンジするアーティストが増えてきているけど、KOHHはその中でも突出してる感じがあるよね」

伊藤「単に技術力が高いって部分を超えた何かがあるんだよなあ、彼には」

SEX山口「ダンスが上手い、しかもフリースタイルのダンスが上手い人を観てる感覚があるんですよね」

高木「KOHHがHIP HOPリスナーを超えて評価されているのは、その部分かもしれないですよね。『足が超速い』っていうのと一緒で、単純に常人離れしてるから、理屈を超えて凄いと思わされるというか」

DJ NOBU「“TOKYO”も、ほぼ『TOKYO』しか言ってないのに聴けちゃうのも、そういう部分かもね」

伊藤「ただ、KOHHフォロワーが増えてくることによって、日本語ラップ全体がどう変化していくのかには、少し不安がありますね。やっぱり、彼はバックグラウンドからスタイルまで独特で独自だから、彼に影響を受けたラッパーが出てきたとしても、KOHHと同じクオリティのモノが出来るのかは疑問で」

SEX山口「ビート・アプローチも相当なセンスが必要でしょうし」
 
DJ NOBU「USの流行りを消化しきれないままアウトプットしてる人が多いからね、最近」

伊藤「例えばJinmenusagiのアルバム『ジメサギ』はトラップ — 彼はKEITH APEに影響を受けたからエイジアン・トラップって言ってるけど — の影響下にあって、それを上手く日本語ラップとして落とし込んだアルバムだと思います。だけど、KOHHが与えた影響力の大きさから、日本語ラップの枠内では『KOHHフォロワー』みたいに捉えられかねないな、とも思って。KOHH自身に非はまったくないんだけど、KOHHの功罪というか、『KOHH以降』っていう括りが生まれることによって、やりづらくなる人も出て来るだろうなあ、って」

DJ NOBU「Jinmenusagiの技術は凄いよね。アルバム聴いてビックリしたもん。すげえレヴェルでラップしてるなって」

伊藤「Jinmenusagiぐらいラップに対するリテラシーが高くて、スキルのある人間じゃないと、あのスタイルを日本流の形で制作するのは難しいのかなって。それかA-THUGぐらい振り切れてる人か(笑)」

SEX山口「現場で会う諸先輩方で『最近はKOHH聴いてるよ』って言ってた人は多かったですね」

DJ NOBU「へー、面白い」

伊藤「ヴェテラン世代の人たちがKOHHに刺激を受けているのは興味深いですね。USの一部ヴェテランみたいに、『今の若いモンはけしからん!』みたいにならない(笑)」
 
 

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