COLUMN:

“バトルMC”の“今”を探る(CASE 4:MOL53)

 
■「バトル上がりのMCは音源が弱い」とか「音源をなかなか出さない」とか言われがちだとも思うけど。
「うーん、でもみんな、デモCDとかEPのレヴェルだったら出してきてたと思いますよ。だけど、さっき言ったみたいに、(客が)そこに辿り着いてないんですよ。そういうことを誰が言い出したか分からないし、俺も音源聴いてそういう風に思うヤツもいるけど、今表に出てるモノだけで判断して、知らないだけで決めつけてる部分はあると思う。だから、『バトルMC=音源がダサイ』とかは思わないですけど、確実に言えるのは、現場をこなしてないヤツは単純にダサイと思います」
 
■バトルに出続けることで感じるデメリットはある?
「ありますね。飽きられたり、“手数”を試されますよね。あと、叩かれやすい。出れば出るほど、勝ちにくくなりますね」
 
■そういうときはどうするの?
「いやぁ、パワー・プレイですね。サッカーで言う“マリーシア”(駆け引き/する賢さ)みたいなやり方は、俺もよく使うんですよね。それだけで相手は萎縮しちゃうんで。そういう汚い部分もテクニックのひとつだと思ってるし、ぶっちゃけキレイ事言ってられないし、キレイ事じゃメシは食えないってことを身を以て痛感してきたんで」
 
■まあ、昨今はスポーツ化しすぎて、フェアプレー重視みたいな傾向はあるよね。
「イヤですね(笑)。俺、小藪一豊が超好きだったんですけど、『高校生RAP選手権』で、『バトル終わったら握手/メアド交換』みたいなこと言ってるの観て『ふざけんなよ』って思いましたね(笑)。HIP HOPだって元々はネガティヴな状況から始まってるんだから、わざわざポジティヴにする必要なんかないんですよ。自分の人生をポジティヴなモノにするために、ネガティヴなモノを使うというのはあると思うんですけど。クリーンに見せようっていう動きも大事だとは思うんですけど、逆に『実際、本当にクリーンなの?』とも思うから、ガキたちにそういう部分もちゃんと教えないといけないと思う」
 
■今、MCバトル・シーンはHIP HOP外の人からの注目も高まってきているけど、率直にどう感じてる?
「……茶番だな、って思います(笑)。ただカネ稼ぎたいのかな?って。地方によく足を運ぶんですけど、行く先々のバトルでは客が入ってて、オーガナイザーにとってお金になってます。で、それは元々バトルやってなかったヤツがそうやってやり出してるんで、そのシーンに関しては終わったな、って思ってます」
 
■商業化されてしまった、みたいな?
「ハイ。それでいいのか?って思いますね。シーンが大きくなるのは良いことなんですよ。ただ、その広め方でいいのか?って。無理矢理オーヴァーグラウンドに寄せたんでしょ?って話になってくる。番組でも放送禁止用語にピー音が入ったりするワケじゃないですか。ピー音が入るのは仕方ないじゃないですか、そうしないと放送できないんだから。だけど、実際、放送禁止用語やスラングは出るモンなんだし、それでも(番組を)やってるわけだけど、それでHIP HOPを世間に分からせようっていうのは無理ですよ。そういう状況になったから、俺の中では結論が出て、そういう大衆寄りのマーケットのことは気にしなくていいと思うようになってます。自分の納得できる規模だったら、小さくてもお金になるし。俺の思う“ストリート”っていうのはラップだけじゃないんで。グラフィティ・ライターやスケーター、ショップをやってる人 — そういった人たちと密接に関わってマーケットを作れれば、俺的には『後は付いてこい』って感じです。ニーズに寄せるか、ニーズを寄せるかという風に分けられるんだとしたら、俺は寄せないから寄ってくるまで待つというか、寄せていくような“引力”になるしかないですよね」
 
■バトル・シーンに対してそういう風に思っていても、今でもコンスタントに出ている理由は?
「優勝したいからです。単純に、日本一というタイトルが欲しい。『俺はこんだけ喰らってきたぜ』っていうか。人間関係とか世の中、シーンとかもそうだけど、ネガティヴな意味で喰らわせられることがここ10年多くて、3ヶ月ぐらいラップしなかった時期もあったんですけど、それが報われる結果が、俺の中では優勝しかないんですよ。それだけ苦悩してきたから、苦しんでた時間の分、お金にもしたいし作品も出し続けたい」
 
■故に、1stアルバム「REVIVAL」が出来た、と。
「俺、子供がふたりいて、最近離婚したんですけど、その嫁と出会ったのが、俺がラップを始めた時期なんです。そういったことがラップと同時にスタートして、このアルバムを出すタイミングで離婚しました。『REVIVAL』の完成間近で離婚が成立して、最後に“220”って曲を書いて、それをアルバムの締め括りにして。それで、俺の10年間の決別をしたかった」
 
■だから「REVIVAL」(復活/再生)というタイトルなんだね。
「0歳から15歳までの俺は、ほぼ無に等しい人生というか、ずっと模索してる期間だったんですね。何かしらやってみても長続きしないし、モノも大事に出来ないし、人とも調和できなかった。勉強も出来なかったから高校も行かなかったけど、そんなことがずっと積み重なってもそれをどう表現したらいいか分からなかったんです。だけど、ラップ/HIP HOPに出会ったことによって、そこから自分の人生に“色”が付いた。だからこそ、結果が自分の行動に伴ってないと納得できないんです」
 
■オフィシャルでは1stアルバムだからこそ、思い入れも強そうだよね。
「単純に、ラップ始めてからの10年分を書きたかったですね。言い切れてないこととか、詰め切れてない曲もあるから、そういうことに関してはこういうインタビューで度々喋らせてもらってるんですけど、このスタイルでやることはもうないと思いますね。芯は変わらないけど、俺的にも幅を拡げたいんで。今までは、既にあったモノから生産していったけど、これからは何もないところから生み出さないといけない」
 
■そうすると、このアルバムでリスタートするという意味ではなく、このアルバムが再スタートするための最後の一枚ってことだね。
「そうです。最初のデモCDは『アダムとイヴ』っていうタイトルなんですけど、その次は『NEXT EPISODE』で、その次の『UMBRELLA』で低迷期を迎えて、その次のミックスCD『DISTANCE』で『コレはバッドすぎるから、取り敢えず振り返ろう』ってなって(笑)。その後にストリート・アルバム『KAKATO』を出してこのアルバムなんですけど、全作品のタイトルには今までの自分の道を詰めているんですよね」
 
■バトルに出て来た経験は、楽曲制作にあたって影響を与えてると思う?
「与えてると思います。自分の曲を演るライヴは、リリースした後だと大体の盛り上がりは予想できますけど、何年もやり続けないと認められない。ライヴは何年もかけないと勉強しないといけないけど、バトルでは一日で全部教えてもらえる。反応がすぐ返ってくるワケですよ。その分、瞬発力がクソ上がる。バトルに出ることによって、トピックが出来やすくなるというのはありますね」
 
■フリースタイル/バトルのような即興性が高いモノと、楽曲のようにじっくり作るモノ、どっちが好き?
「どっちも好きですけど、好きの種類が違いますね。サッカーと野球の違いみたいな」
 
■それぐらい違う?
「それぐらい違います。俺の場合、音源は、自分が見てきて記憶してるモノ全部を文字に書き起こすんですよ。フリースタイルは、単純に相手に言われたことに返して会話する、それだけ。その上でどっちがイケてるか/どっちの価値観が正しいのかを決めるのがバトル。だから、全然違うんですよね」
 
■バトルで全国を穫るというのがひとつの目標なのは先ほど話していたけど、それ以外にラッパー/ミュージシャンとしての目標は?
「さっき言ったように、“マーケット”の確立ですね。ニーズを気にしないでラップを続けられるっていう。結局、俺らの周りでもラップを辞めていく人の方が多くて、去年や一昨年までやってて辞めたぐらい『惜しい』人もいる。10年近くラップ続けてきてもピッと辞めちゃうのが今のシーンなワケですよね。仕事や自分の生活、家族とかが付いてくると、そういったことと同時にラップのことを考えられなくなるぐらい、今のシーンは狭いし、そういう風に分けないと稼げないっていうのが多くのラッパーの苦悩ですよね。俺は、今すぐそういった結果が欲しいと思ってるわけじゃないんで、5年ぐらい先を見た上での話です。今すぐ結果が欲しいようなヤツなんかは相手に出来ないですよ。だったら、同じ価値観を持つヤツらとずっと音楽を続けられていて、それにカネが付いてくればいいと思ってるし、そのマーケットは作れないことはないと思うんですよね」
 
 

 

 

 

 
 
INTRO
CASE 1:GOLBY
CASE 2:ACE
CASE 3:TKda黒ぶち
CASE 4:MOL53

 
 

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