COLUMN:

“バトルMC”の“今”を探る(CASE 4:MOL53)

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CASE 4:MOL53 a.k.a. RAWAXXX
所属クルー/レーベル: 戦極CAICA/OLD DRIP JUICE
出身地/地元:宮崎県日南
現在の活動拠点:東京都
ラップ歴:10年
MCバトル歴:約10年
主なMCバトル戦歴:
・2012年
『UMB』福岡予選 優勝
『UMB』グランド・チャンピオンシップ 準優勝
・2013年
『UMB』宮崎予選 優勝
『UMB』グランド・チャンピオンシップ ベスト4
・2015年
『UMB』宮崎予選 優勝
 
 
■「REVIVAL」に収録されている“Prologue”では、自身がラップを始めた頃の話をしているね。
「あんま年齢は覚えてないけど、15歳ぐらいでしたね。HIP HOPは先輩から教えてもらいました。地元に、伝統的にそういうクルーがあったんで。地元の宮崎県・日南は……自然が豊かな場所です(笑)。そのクルーには、結構イカツい人たちがいたっすね、チカーノとかロウライダーとか。そういう人たちもいれば、俺みたいにラップやDJもやってる人がいて。スケーターもブレイク・ダンサーもいて、そういった人たちが50人ぐらい公園に埋まるぐらい集まるんですよ。先輩たちが、俺がガキの頃からそういうことをやってたから、俺らも必然的に『そうなりたい』って憧れで始めたって感じです。だから、HIP HOPを知ったのもラップを始めたのも同時ですね。そのクルーは世代単位で分かれてて、例えば16〜18歳ぐらいの年代の人たちが集まって、取り敢えずパーティを3年間続けるんですよ。同世代を巻き込んでどれだけムーヴメントを起こせるか、みたいな。俺らはクソだったから客も一番少なかったし、誰もラップを聴かないっていう世代になっちゃったから、その伝統は俺らの代で終わっちゃったんですけど」
 
■その伝統は面白いね。じゃあ、フリースタイルもラップ始めた直後にやり始めたわけだ。
「そうですね。ラップ始めて二週間ぐらいで、先輩に言われて地元の小さいバトルに出ました。その頃、クルー内の各世代で作ってた掲示板みたいなのでネット・ライムみたいのをしてて、それがバトルみたいに発展したんですよね。名指しで先輩が俺のことをディスってくるんですよ。それに返してたら、『もっとラップ上手くなりたいなら、ここに何時においでよ』ってメールが来たんで行ったら、電波少女のハシシ君とかがいて。まあ、俺入れて3人しかいなかったけど、サイファーみたいな感じになりました。その後、普通にイヴェントで8人ぐらいしか出てないバトルに出たのが、最初に出たバトルですね」
 
■ちゃんとしたバトルに出たのは?
「2009年の『UMB』福岡予選でした。元々、ラップを始めたときに『コレを観ろ』って渡されてたのが、2005年『UMB』のDVDなんですよね。あのバトルはベスト8まで行きました。取り敢えずベスト8までは行こうと思ってたんですよね。そうすればHYPE UP SOUND(配信サイト)に動画が載るから、それにまず載るっていうのが基本じゃないか、っていうのが俺らの中であって。そこまで勝ち上がれないヤツは、名前も上げられないし、カスとしか扱われないわけですよ(笑)。で、そこでは目標達成したから、満足しましたね」
MC正社員「俺も当時、UMBの地方予選はHYPE UP SOUNDで観てたんですけど、福岡はレヴェル高かったけどそうでもない地域もあったから、映像を観て印象に残る人ってあまりいなかったんですよ。だけど、その中にも印象に残った人が3人だけいて、それが25時の影絵、KOWREEとMOL53だったんです。2009年のMOL53を観たとき、『なんだコイツ!?めちゃくちゃヤベェじゃん!』って思って。だから、彼が言うようにHYPE UP SOUNDで観たことによって、俺も目を付けて自分のレーベルから作品を出したっていう(笑)」
 
■僕が最初にMOL53君の名前を認識したのはいつだったかな……やっぱり2012年『UMB』のグランド・チャンピオンシップで準優勝になったときかな。
「その前年の2011年が、個人的にはクソ分岐点なんですよね。2011年に負けまくって、一回も勝てなかったんです」
 
■自分的に、納得いかないバトルもあった?
「ありましたね。2010〜11年とかは、『なんだよ、身内ノリじゃねえかよ……』みたいに思ったけど、『まあ、いっか』みたいな。そういったことを通り越して、ノリで出続けたら、2012年に大当たりしたからラッキー、みたいな」
 
■これまでで、特に印象に残ってるバトルは?
「負けた試合は全部ですけど、後々メンタルをヤラれたのは、やっぱり2012年『UMB』グランド・チャンピオンシップの決勝戦ですね(対戦相手はR-指定)。クソムカつきましたね。『なんだお前のやり方は?』って思いました。そのとき初めて、『バトルはこんな流れになったのか』って思って。俺は、正統派HIP HOPなラップがカッコ良いと思ってバトルに出ていたし、福岡予選で優勝したときにいろんな人に挨拶したら、みんなに気合いを入れられるわけですよ。『お前、福岡の看板背負うんだから』的な。その前から福岡のHIP HOPシーンが好きで、HIP HOPに忠実でカッコ良いと思ってたんです。俺は、そういう想いを持って出てるMCが『UMB』で勝つMCだと思ってたんですよ。でも、そうじゃなくなったな、っていう風に思ったのが、R-指定とのバトルです。もう、超ムカついて、『銃社会だったら撃たれてるぞ』ぐらい思いましたからね。今でもムカついてますし(笑)」
 
■ということは、決勝での勝敗にも納得いってない?
「いや、そういうことじゃなくて、客の雰囲気とかバトルのやり方とか。俺が真正面で行ってもダメな空気があった。だから、その翌年はクソ適当にやったんだけど、ベスト4まで行って、『まあ、こんなもんか』って思ったから2014年は出なかったんですよね。2012〜13年にバトル出て、『ああ、分かったよ、もうつまんねぇよ』ってなって。『つまんねぇ』っていうのは、大会がというより最近のMCバトルの流れ自体が、ってことですけど。今までやってきた人たちが報われねぇな、って思うぐらい、価値観が変わってきちゃったんですよね」
 
■当然、MCバトルからMOL53君を知った人は多いと思うんだけど、「MOL53=バトルMC」って捉えられることについてはどう思う?
「さっき言ったことが全てですけど、MCバトル自体の価値観が変わっちゃってるから、『K-1から総合格闘技になったんだな』っていう考え方なんです。俺はK-1時代のフリースタイル・バトルで名を上げられたんで、今のMCバトル・シーンでは現役じゃなくてもいいや、って思ってるっすね。だから、そこの区切りは付けたいっていうタイミングです」
 
■つまり、今のバトル・シーンの人たちが思ってるバトルMC像のカテゴリー内では捉えられたくない、ってことでもあるね。
「そうですね。だってアレは“商品”じゃないですか。プロデューサーが付いてるバトルというか。ラッパーが、自分の感性を養うために出るようなバトルではなくなってる。その時点で俺にとっては畑が違うし、『お前らと一緒にされたくない』と思いますね」
 
■MOL53君が思う“バトル性”が残ってるバトルって、今は存在する?
「あー、たまに。『戦極MC BATTLE』の9章(チャンプ:DOTAMA)とかはクソバチバチだったっすね。あのときはクソ震えましたけど、客が付いていってなかったから、『あ、そういうことか』って思ったっすけど」
 
■そうすると、MOL53君にとって昨今で言うバトルMC=HIP HOP MCではないということだよね。
「そうですね。俺もバトルから恩恵は受けてるから、そんな悪く言っちゃいけないんですけど、俺らはただやり続けてきたから結果が付いてきただけって思ってるんです。今は、その“結果”を作ってあげるためにバトルを量産したり、MCたちにバトルのやり方を教え込んだり、バトルの価値観や定義を押し付けたり、TVでやっちゃったりするワケじゃないですか。点数付けるとか。俺からしたら、『いやいやいや!』ってなるっすね。学校なのか、と。カルチャーや技術を教え込むんだったら学校みたいになるのも分かるんですけど、今はそうじゃなくて『勝ち方』や『見せ方』やキャラ作りを教えてる。そうすると、既存の例が出来ちゃってるから、今はR-指定に辿り着いちゃう。R-指定の二番煎じみたいなヤツを追うか、俺らみたいに自分たちで自分のスタイルをゲットしたMCになるかの違いというか。だから、今はバトルMCとHIP HOP MCというモノをあまり混ぜてほしくないですね」
 
■そうしたら、「MCバトル出身」みたいに言われることも……。
「いや、それは全然大丈夫です。売名の過程がそうだったから、それに対して『それは違う』って言い出したら、『じゃあお前これまで何してきたんだよ』ってなる。HIP HOPが本当に好きだったら、レコードだとA面もB面も聴くわけじゃないですか。だけど、今はA面しか流れないし、B面なんてカットされてピー音が入っちゃったりするわけですよ。俺は、バトルがA面で音源がB面だと思ってるんです。表面がバトルで広まってしまったんで、リスナーで本当にラップ/HIP HOPが好きなんだったら、自分で掘ってB面まで行き着いてほしいですね。一回、言われたんですよ。『お前の音楽は買いづらい』って。知らねぇよ、っていう。欲しければ探してでも買え、買えなければそんなヤツに価値ねぇから買わなくていいよ、って。今の子たちは、ロクに探してもねぇクセに質問とかしてくるんで」
 
 

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